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11-000 11ミクサユツリミウケノアヤ
三種の神宝を譲り受ける綾
11-001 フソヰスズ モモヱソヒホニ
二十五スズ、百枝十一穂、
11-002 ヒタカミノ ミクラノアトニ
ヒタカミのアマテルカミの居られた宮の後に
11-003 マタミヤコ ウツシテナヅク
ヲシホミミはまた都を移して、
11-004 タカノコフ ツボワカミヤノ
タカノコフと名付けた。そのツボ若宮の
トノシマモ タカヤイラカモ
宮殿の門も、高屋の甍も
【トノシマモ タカヤイラカモ】 「トノ」は宮殿。「シマ」は「締り」の意と考え「門」とした。「トノシマ」は敷地へ入る門ではなく、宮殿の出入り口となる門と解釈した。「タカヤ」は門とは別の高殿とも取れるが、21綾本文116に「カトノタカヤ」とあるので、「タカヤ」は門の二層の屋根の間に作られた部屋をいうものと思われる。21綾本文118ではこの門を「カラフシマ」と呼んでいる。
11-006 フツクナリ ウラノヨキヒニ
ことごとく完成し、占いによって吉日を選び
ワタマシノ キミハアマテル
宮に渡御された。この君はアマテルカミの
【ワタマシ】 貴人の転居を言う敬称。
11-008 ヨツギミコ ハハハヒノマエ
世継ぎ皇子である。その母はヒノマエ
11-009 ムカツヒメ イムナホノゴノ
ムカツ姫、諱をホノゴという。
11-010 ウブミヤハ フヂオカミミノ
産宮は藤岡山の山裾の
11-011 オシホヰニ アレマスミコノ
忍穂井のそばに造られた。お生まれになった皇子は、
チニムセフ ムツキシメシテ
しばしば乳にむせんで、産着を濡らした。
【チニムセフ…ヲシホミミトゾ】 なぜ乳にむせんで、産着を濡らすとオシヒト・ヲシホミミなのかわかりにくいが、「ヲス(「飲む、食う」の尊敬語と「着る」の尊敬語)」という言葉がかかっているのだろうか。
11-013 オシヒトノ ヲシホミミトゾ
諱オシヒト、ヲシホミミと
キコシメシ タガワカミヤニ
名乗られ、近江のタガの若宮で
【タガワカミヤ】 「タガ」は近江のタガ(イサナギ・イサナミの宮)、本文004の「タカ」はヒタカミの「タカ」。
ヒタシマス ヒタルノトキニ
育てられた。ムカツ姫が亡くなって、
【ヒタルノトキニ】 主語がないため、誰が亡くなったのかわかりにくいが、私は母親のムカツ姫と考える。
11-016 オモイカネ ワカヒメトモニ
オモイカネとワカ姫が共に
モリソタツ ヨロマロヒトリ
守り育て、ヨロマロが一人
【ヨロマロ】 タカミムスビ(タカギ)の息子で、ヲシホミミの御学友。
11-018 ソバニアリ キミハヨワクテ
そばについていた。君は体が弱くて
11-019 ミソギマレ オバサリマセハ
禊ぎは稀にしかしなかった。伯母のワカ姫が亡くなった時、
11-020 カウノトノ マツリトルユエ
ヲシホミミは政を執るために
ヨロマロオ ヒタカミノカミ
ヨロマロをヒタカミの守とした。
【ヨロマロオ ヒタカミノカミ】 ヨロマロが本来なるはずのタカミムスビ(ヒタカミの君)とならず、ヒタカミの守となったのは、ヲシホミミがヒタカミの君となったから。
11-022 キミハコゾ ツボオシタヒテ
君は前年、父アマテルカミのいたヒタカミを慕って
11-023 ミユキナル タガノミヤコオ
御幸され、近江のタガの若宮を
11-024 ヒキウツシ カウノタクハタ
ヒタカミに遷していた。タカミムスビの娘のタクハタ
11-025 チチヒメト ソフノツボネモ
チチ姫を后とし、十二人の局も
ソナワレハ ミウチノイワヒ
決まり、宮中の婚礼の祝いの準備も
【ミウチ】 ミヤウチのことで宮中。ここはヒタカミの宮。5行あとの「ミウチ」はアマテルカミの宮のこと。
11-027 トトノヒテ カミニミツゲノ
整った。アマテルカミに報告する
カンツカイ カルキミノコノ
特使としてカルキミの子の
【カンツカイ】 アマテルカミへの使者。アマテルカミから使わされる使者は勅使で、サヲシカ、ヲシカドなどという。
11-029 シマツウシ ノボルホツマノ
シマツウシが向かうホツマの
ヲハシリノ サカニユキアフ
ヲバシリの坂で行きあった
【ヲハシリ】 ヒタカミ(東北地方)からアマテルカミのいる伊勢へ行く途中の場所。24綾本文383にヲシホミミは「イヅヲハシリノ ホラアナニ ミツカライリテ ハコネカミ」とあるので、場所は箱根から伊豆にかけての辺りであろう。
11-031 ヲシカドハ ミウチニハベル
勅使は、アマテルカミに仕えている
カスガマロ カタマオスエテ
カスガマロであった。カスガマロはカタマを置いて
【カスガマロ】 藤原氏の祖。諱ワカヒコ。アマノコヤネ。今後多くの綾で左の臣として活躍する。
【カタマ】 目の細かい竹籠。竹を堅く編んだ籠。
11-033 マツノカゲ シマツハコマオ
松の陰で休んでいた。シマツウシは馬から
11-034 ノリハナチ コトホギヲヱテ
降り、祝賀のあいさつを終えて
11-035 ニシヒガシ ユキガヒサカノ
西と東に去って行った。このことから、そこが「行き交い坂」と
11-036 ナニノコル アキカエルトキ
いわれた。秋に帰る時
11-037 マタアエハ ユキキノオカノ
また会ったので、そこは「行き来の岡」という
11-038 ナコソヱル カネテホツマト
名が付いた。あらかじめ、ホツマと
11-039 ヒタカミノ サカイニデマツ
ヒタカミの境に出向いて待っていた
フツヌシガ サカムカヒシテ
フツヌシが、境迎えして
【サカムカヒシテ】 「サカ」は境と酒の掛け言葉で、国境に出迎えて酒宴をすること。
11-041 ウヰマミヱ ヲヂトヲヰトノ
甥のカスガマロと初めて出会った。伯父と甥が
11-042 サカツキノ ササノナカメハ
酒杯を交わしたのは眺めのよい
11-043 イワノウヱ フリハヨロシキ
岩の上で、辺りに見えるのはとても美しい
ハマヒサシ ナミウチカギリ
浜庇であった。波が打ち寄せる度に
【ハマヒサシ】 広辞苑に「浜辺に波が打ち寄せて砂をえぐったように見える部分」とある。
イワアラフ ミルメアフカヰ
岩を洗い、ミルメやハマグリの貝殻が
【ミルメアフカヰ】 「ミルメ」は海藻ミルの別名。ここでは漢字を当てれば「見る目」とでもなろうか、「御覧のように(歳を重ねた)」と自分を波に洗われる「ミルメ」になぞらえたのであろう。「アフカヰ」(大貝)はすぐ後で「カヰノハマグリ」とあるので蛤のことであろう。