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37-000 37トリアワセタチハナノアヤ
鶏合わせ、橘の綾
37-001 タマキミヤ フソナホハツキ
タマキ宮の二十七年八月
37-002 ナカヲミト イクサウツワオ
七日ヲミトに、君が武具を
37-003 ミテクラニ ウラトエバヨシ
供え物として納めようと占うと「よし」と出たので、
37-004 ユミヤタチ モロノヤシロニ
弓矢や太刀を多くの社に
37-005 ヲサメシム カンヘサタメテ
納めさせた。神部という役を定め
37-006 ヨリヨリニ ウツワニマツル
折々に武具を奉納品として祭る
37-007 ハシメナリ フソヤホカンナ
慣わしの始めとなった。二十八年十月
37-008 ヰカマカル アニヤマトヒコ
五日に兄のヤマトヒコが亡くなった。
37-009 ネヅキフカ オモムロオクル
十一月二日に遺骸を
37-010 ツキサカニ ハヘルヒトラオ
ツキサカに葬った。ヤマトヒコに仕えていた者を
37-011 イキナガラ ウヅメバサケビ
生きたまま一緒に埋めたので、その者達は泣き叫んだが
37-012 ツイニカル イヌトリハムオ
ついに息絶えてしまった。その遺体を犬が掘りだして食べたと
37-013 キコシメシ アワレニオボス
君が聞かれて哀れに思われ
37-014 ミコトノリ イキオメグマテ
詔を下した。「生きている者を大切にしないで
37-015 カラスルハ イタマシヒカナ
死なすのは余りにも痛ましい。
37-016 フルノリモ ヨカラヌミチハ
昔からの慣わしであっても、よくない事は
37-017 ヤムベシゾ ミソホハツムカ
やめるべきである」。三十年一月六日に
37-018 ミコトノリ ミコヰソキネト
君が言われた。「ヰソキネと
37-019 タリヒコト ノソムトコロオ
タリヒコよ、望んでいることを
37-020 モフスベシ ヰソギネイワク
申せ」。ヰソキネが言った。
37-021 ユミヤヱン タリヒコイワク
「弓と矢を望みます」。タリヒコが言った。
37-022 クライヱン キミフタミコノ
「君の御位を望みます」。君は二人の皇子の
37-023 ノゾムママ ユミヤタマワル
望むままに、弓と矢を
37-024 アニノミヤ オトハクライオ
兄に授け、弟には「君の御位を
37-025 ツグベシト ミソフホフツキ
継ぐべし」と言われた。三十二年七月
37-026 ムカマカル キサキヒハズノ
六日、亡くなった后ヒハズ姫の
37-027 ミオクリハ モロトミメシテ
葬送について、諸臣を集めて
37-028 ミコトノリ サキノオヒカレ
相談された。「先の殉死は
37-029 ヨカラネバ コノオコナヒハ
よくないことなので、この度は
37-030 イカニセン ノミノスクネガ
どのようにしたらよいものだろうか」。するとノミノスクネが
37-031 モフサクハ イケルオウツム
申し上げた。「生きている者を埋める
37-032 タメシトハ アニヨカランヤ
というしきたりなど、どうしてよいものでしょうか。
37-033 ハカラント イツモノハシベ
我によい考えがあります」。ノミノスクネは出雲の土師部を
37-034 モモメシテ ハニデコオヨビ
大勢連れてきて、土で土人形や
37-035 クサクサノ カタチツクリテ
さまざまの物の形を作って
37-036 タテマツル イマヨリノチハ
君に差し上げた。「今後は
37-037 ハシモノオ イケルニカエテ
土師部が作ったものを生きている者に替えて
37-038 ミササキニ ウエテタメシト
御陵に供え、それを今後の慣わしと
37-039 ナスベシヤ キミヨロコビテ
してはいかがでしょうか」。君も喜ばれ
37-040 ミコトノリ ナンヂガハカリ
「汝の慮りに
ワガココロ ヨシトハニワノ
吾は大変満足している」と仰せられ、御陵のまわりに
【ハニワ】 御陵の回りをかこむ土の輪。
タテモノオ ノチノタメシト
飾り物を立てることを今後の慣わしとするように
【タテモノ】 今日言われる埴輪。
37-043 サタマリテ ノミノスクネオ
決められた。そしてノミノスクネを
アツクホメ カタシトコロオ
大いに褒め称え、飾り物作りの場所を
【カタシトコロ】 広辞苑では「鍛し(カタシ)」として「鉄などを鍛えること」とある。火を使って製造するということで、土で飾り物(ハニワ)を造ることも「カタシ」であると考える。
37-045 タマワリテ ハシノツカサゾ
授けて土師の司とした。
37-046 ミソミトシ ミワノタタネコ
三十三年、三輪のタタネコが
37-047 ヤマシロガ タチニイタレバ
ヤマシロの館に行ったとき
37-048 サラズトフ ムスメヒトリオ
サラズが聞いた。「我の一人娘が
37-049 ミヤニコフ タレニヤリテモ
三家から望まれました。誰の所に行かせても
37-050 フハウラム コレサシタマヘ
他の二家から恨まれます。どうすべきか教えてください。
コタエイフ アスカモカミノ
タタネコが答えた。「明日賀茂神の
【カモカミ】 賀茂神は上賀茂と下賀茂とあるが、ここでは下賀茂神社。下賀茂神社はウガヤフキアワセズとタマヨリ姫が祭られ、「夫婦の神」と言われた。
37-052 ミマエニテ コレサダメント
前で、どうするか決めましょう」。
37-053 トモニユク ミヲヤノカミニ
翌日、二人で賀茂神社へ行き、ミヲヤ神に
37-054 ニギテナシ タテマツルワカ
幣を奉げた。その時奉納したワカ歌は
37-055 アメツチノ ミヨノサカエオ
「この世の全てを治められる皇の御代の繁栄を