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14-000 14ヨツギノルノトコトノアヤ
世継ぎを祈る祝詞の綾
アメツチモ ウチトモスガニ
天も地も、宮の内も外も清々しく
【アメツチモ ウチトモスガニ トホルトキ】 どのような時か。この後に鬼やらいや「カカンノンデン」があり、祝い歌などを歌っているので、単にアマテルカミの話を聞くための行事とは思えない。「鬼やらい」は今では節分の行事だが、もともとは大晦日に宮中における悪鬼・疫病を追い払う追儺という行事だったとされる。それらをよりどころとして、年を越す時、すなわち大晦日と解釈した。
14-002 トホルトキ ヤモヨロミチノ
年を越す時、大勢の
ミコトヒコ ミウチニハベリ
皇子と臣が宮に参上して
【ミコトヒコ】 「ヒコ」は男子の名前に付くものだが、ここでは状況から単なる男ではなく「臣」とした。
ミチオキク モロヨロタミモ
アマテルカミの教えを聞き、また大勢の民も
【モロヨロ】 「モ」が100、「ロ」が10000、「ヨロ」が10000、「モロヨロ」で百億。誇張にしても大げさだが、大勢を強調しているのであろう。2行前の「八百万三千」も「たくさん」としたが、「三千」という端数に何か意味があるのだろうか。
ヲシラスニ ムレキクトキニ
宮の庭に群がって聞いた。その時に
【ヲシラス】 庭に玉砂利が敷かれていたのであろう。現代でも能舞台と客席の間の玉砂利を敷いてある場所を白州という。
クシマトハ ヒノシマオモル
クシマドは日の門の警備をし
【ヒノシマ】 「シマ」は門。「ヒ」(日)と「ツキ」(月)については、二通りの解釈が考えられる。一つは、日の門を正門、月の門を裏門とする。もう一つは、アメミオヤの左目が日で、右目が月ということをもとに、正門の左右の通用門とする。筆者は後者と考えた。
イワマトハ ツキノシマモル
イワマドは月の門の警備をした。
【ツキノシマ】 「ヒノシマ」参照。
イクシマト タルシマヨモノ
イクシマとタルシマは宮の回りの
【イクシマト タルシマ】 21綾にモグラのような表現で宮を守る役として出てくる。
14-009 ミカキモリ イカスリウチノ
御垣守として、宮の中を守る
14-010 ヲニヤラヒ カカンノンデン
鬼やらいをした。篝火も祝詞も太鼓も
14-011 ソロフトキ ヒタリハタニノ
準備ができて、左の臣のタニノ
サクラウチ ミヨノサクラノ
サクラウチが「御世の桜の
【ミヨノサクラノ ナラシウタ】 24綾本文232~239にコノハナサクヤ姫が、「昔曾祖父のサクラウシ(サクラウチ)が桜の花を奉げ、人々のイセの道がうまくいっているかいないかを判断した」と述べていることから、「イセの道の習わし」を歌ったのではないか。
14-013 ナラシウタ ミギハヲヲヤマ
ならし歌」を歌い、右の臣のヲヲヤマ
カクスミノ トキシクカグノ
カクスミは「ときじく香久の
【トキジクカグノ イワヒウタ】 香久の木の芳香がいつまでも続く世、すなわち太平の世を寿ぐ歌。
14-015 イワヒウタ ココトムスビガ
祝い歌」を歌った。ココトムスビが
14-016 カカンナス カスガワカヒコ
篝火を焚いた。カスガワカヒコは
14-017 ミハシラオ ヨツギミクラニ
御柱を世継ぎ御座に
14-018 ミテムスビ アメノミヲヤオ
据えて結び、アメミヲヤを
14-019 マネキコフ ヲヲモノヌシガ
招くために祈った。ヲヲモノヌシが
14-020 ノンナシテ ヨロギミホヒコ
祝詞をあげて、ヨロギミホヒコが
ユフハナニ ヤイロニギテノ
木綿で作った花に八色の幣を添えて、
【ユフ】 木綿(ユウ)。楮の皮の繊維を裂いて糸としたもの。幣に用いられた。
カミススム ヒトコトヌシガ
四十九神と共に進んだ。ヒトコトヌシが
【カミススム】 このあとに「ヨソコノハナ(49の花)」とあるので、それと関連付けて49神とした。
14-023 デンナシテ カダキヤスヒコ
太鼓をたたき、カダキヤスヒコが
ヌサグシデ ヨソコノハナニ
幣串で四十九の花に
【ヨソコノハナニ コノミナル】 49神を表す「49の花」に、世継ぎが生まれる象徴としての木の実を表すものをつけたかその所作をしたのか。
14-025 コノミナル アグリオヱント
木の実を付けた。世継ぎが生まれるように天の恵みを願って
14-026 モロヲガム トキニアマテル
みなは拝んだ。そこで、アマテル
14-027 ヲヲンカミ ヨツギノアヤニ
ヲヲンカミは「世継ぎの綾」の話を
ヲラントス ヨロノヨワイノ
聞かせることにした。「一万歳の
【ヲラントス】 「ヲル」を「織る」と読むと「世継ぎの綾」をまとめる、編纂するということになるが、ここでは皆に話しているので、いろいろな内容を話にまとめることと考えた。
【ヨロノヨワヒ】 10000歳や1000歳の人がいるわけがないが、アマテルカミの話の中の言葉としてそのまま訳した。10000歳は、高齢を意味していると考える。
ミコトヒコ ヤヤチヨタモツ
御子や臣も、千歳ほどの
【ヤヤチヨタモツ】 「ヨロノヨワヒ」に対して1000歳は若者を意味するのであろう。
14-030 タミモミナ クニトコタチノ
民もみんなクニトコタチの
14-031 コスエナリ ソノモトフツク
子孫である。その元はすべからく
アメミヲヤ アメツチヒトモ
アメミヲヤに始まる。天や大地や人が
【アメツチヒトモ ワカサルニ】  ホツマツタヱでは物事の成り立ちを説明するとき、天地開闢から説き起こしている。すべてのものがまだ生まれていないとき。
14-033 ワカサルニ ウイノヒトイキ
まだわかれていない時、アメミヲヤの元初の一息が
14-034 ウゴクトキ ヒガシノボリテ
動き始め、その息が東から昇り
ニシクダリ ウツホニメグリ
西に下ってウツホを巡り
【ウツホ】 場としては存在するが、何もない状態。端的に言えば「空気」。現代では、私たちの周りの空間には何もないようだが空気が存在していることは子どもでも知っている。宇宙規模で見れば、空気は地球の表面にわずかあるだけだが、この時代には、このような空間が宇宙全体に広がっているような感覚だったのであろう。
14-036 アワウビノ メグレルナカノ
天と地が混然として回っている中に
ミハシラニ サケテメヲナル
御柱が立ち上がった。そしてメとヲが分かれた。
【ミハシラ】 天の御柱。渾然とした中からこの世のあらゆるものが出現するその核となるようなものとして創出されたのであろう。ミカサフミでは透き通っており、中は管になっていると書かれている。この綾の本文017に、御柱を立てる場面がある。地上で建てた御柱が天の御柱とつながり神が降臨する依代となると考えられたのであろう。
14-038 ヲハキヨク カルクメグリテ
ヲは清く軽く、回りながら
14-039 アマトナリ メハナカニコリ
天となった。メは中心に向かって固まっていき
クニトナル ミツハニワカレ
泥地となって、水と土に分かれた。
【クニトナル】 この続きに「ミツハニワカレ(水と土に分かれた)」とあるので「クニ(クニタマの略)」は大地の泥地の状態をいうと考える。「クニタマ」については18綾本文022参照。