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18-000 18オノコロトマジナウノアヤ
「オノコロ」の由来とまじないの言葉の綾
18-001 アメハレテ ノドカニミユキ
世が平和でのどかなある日、アマテルカミが
アソビマス タカマハヨロノ
御幸された。アマテルカミは「この清らかな景色は我が国の
【タカマハヨロノ クニカタチ】 ここでいう「タカマ」は、清浄な場所。ミカサフミのタカマナルアヤに「カミマツル ハモタカマ スカノトコロハ コレニクラヘン」(神を祭っている地上も清いところなのでタカマと同じだ)とある。アマテルカミは、大きな岩がいくつも点在している神聖な景観を、あたかも二尊が多くの島を拓いて創った国「オノコロ」のようにイメージしたのではないか。それでこの場所を「タカマ」と呼んだのだろう。本文045にも「ウムクニスヘテ オノコロゾ」とあるように「オノコロ」はいくつもの島(クニ)からできているので、「コレオノコロ」はアマテルカミが座った岩だけを指すのではない。
18-003 クニカタチ コレオノコロト
島々のようだ。ここはあたかもオノコロだ」と
18-004 ニコヱミテ ナカノイワホニ
にこにこしながら、その中の一つの岩の上に
18-005 オワシマス ソバニトミアリ
座られた。そばに臣も侍っていた。
18-006 アメミマコ ミマエニモフデ
アマテルカミの孫のニニキネが前に進み出て
18-007 ツツシミテ ソノオノコロノ
謹んでそのオノコロの名前の
18-008 ユエオコフ キミノヲシヱハ
由来を聞いた。アマテルカミの教えは次のようであった。
フタカミノ ウキハシニタチ
「二尊は民との間に懸け橋をかけて、その上に立ち
【フタカミノ ウキハシニタチ…】 ここからの話は、そのまま訳せば記紀の国生み神話と同じようになる。本書はホツマツタヱを歴史書という視点で訳してきた。ここもそのスタンスで訳してあるので、意訳となっている。記紀からは歴史的事実を探り出すことはできないが、このように訳すことによってホツマツタヱではそれができるのではないかと思っている。「再生」としたのは、本文062にあるように、それまで続いていた国がオモダル・カシコネの時、飢饉などで秩序がなくなって乱れてしまっていたから。
18-010 コノシタニ クニナカラント
ここに国を再生させようと
トホコモテ サクルミホコノ
トの教えと矛をもって力を尽くされた。矛の
【サクルミホコノ シタタリ】 神話では海をかき回した矛から、海水が落ちたことになっているが、ここは刑罰により血も流したということと解釈した。
シタダリガ コリナルシマオ
滴りも伴ったが、民の心を一つにしてまとまった島々を
【コリナルシマオ】 「シマ」は3綾本文049にある「ヤマトアキツス、アワチシマ、イヨアワフタナ、オキミツコ、ツクシ、キビノコ、サドウシマ」等を指すので「島々」とした。
18-013 オノコロト クタリテトモニ
オノコロと名付けた。その国で、二人は
18-014 トツギシテ ミハシラマワリ
結婚した。宮の御柱を回って
18-015 アワウタオ ヨミテオノコロ
アワ歌を歌い、オノコロを治められ、
ヨロモノオ ウミシハムカシ
諸々のことを教えたり物を作らせたりしたのは昔のことである。
【ヨロモノオ ウミシハムカシ】 「ヨロモノ」とは本文066にある鋤や鍬、馬や牛の使い分けなどのこと。親の代のことも「ムカシ」と言った。
アメツチノ アホウビイマタ
天地が『清く軽い天の初め』も『濁って重い地の初め』も未だ混沌としている時
【アホウビ】 19綾本文042の「アホオアメ」と「ウビオクニタマ」から考えると、「アホ」は「天」になる前の状態、「ウビ」は大地となる前の状態と考えられる。また、14綾本文038の「ヲハキヨクカロク」と「メハナカニコリ、ミツハニワカレ」と合わせて考えると、「アホ」は(天になる前の)「清くて軽いもの」、「ウビ」は(大地になる前の)「濁って重いもの」といえる。14綾本文036の「アワウビノメグレル」の「アワ」は「天と地」で、それがまだ「ウビ」(どろどろと濁った状態)で巡っているということ。
アメミヲヤ アテオムスビテ
アメミヲヤが天を創ろうとして
【アテオムスビテ】 「ア」は「天」、「テ」は手段、方法と解釈し、「アテ」を「天を創造する手段」、「ムスビテ」は「結実させること」と解釈した。「天を創造する手段によって天を創ることを結実させる」となるが、まわりくどい訳になるのでここでは「天を創ろうと」とした。
18-019 フクウツホ キハナクメクリ
『ウツホ』を吹き出した。それが限りなく巡って
ウヰトウヌ アウヌムスビテ
ウヰとウヌとができた。『清く軽い天の初め』にウヌが働き
【ウヰトウヌ】  抽象的な概念で、言葉として表すことが難しい。ここで使われているホツマ文字「ウ」は始原神であるアウワの神を表す時に使われる字で、ここでの「ウヰ」や「ウヌ」は天の力を意味するものとして考えてみた。その観点で訳を探っているうちに、「清くて軽いもの」に働きかけるエネルギーまたは力のようなものと思えてきた。「ウヰ」はその対となる「濁って重いもの」に働きかけるエネルギーまたは力のようなものと考えてみた。
18-021 アマツクリ ウヌアマジリテ
天を創った。ウヌは「清く軽い天の初め」と一体となり、
ウハムスビ ウビオクニタマ
ウヰが働いて、『濁って重いもの』がクニタマとなった。
【ウハムスビ ウビオクニタマ】 「ウハ」のホツマ文字「ウ」は本文020の「ウ」との違いはあるが「ウヰ」の略とした。「アホ」が「ウヌ」と働きあって天となり、「ウビ」が残る。残った「ウビ」が「クニタマ」となるには「ウヰ」の働きが必要と解釈した。
【クニタマ】 「地球」を表す言葉のように読み取れるが、この時代の人がすでに、自分が立っている大地が「地球」という球体であるという概念を持っていたのだろうか。しかし、記紀の記述からも球体を意識していたとは読み取れない。ヨーロッパでは紀元前6世紀ごろから「地球球体説」が始まったそうだが、中国では17世紀に入るまで「地球平面説」だったということである。ここでは、どちらと断定することは難しいが、「クニ」は大地を意味する使い方もあり、「タマ」は魂や霊も意味するので、火山が噴火し、やがて固まったり、泥土の土地が乾いて固まったりすることを経験として知り、そのような泥土状の大地がやがて人々の生を育む大地となることを畏敬の念をもって表した言葉のように思われる。
カテムスビ ムネホヱラミテ
次に日輪を創ろうとして、ホを選んで
【ムネホエラミテ ヒトマロメ】 14綾本文043の「ヲセノムナモトヒトマロメ」と同じことを言っている。
ヒトマロメ アカミヤニスヱ
丸めて日輪として、赤宮に据えた。
【アカミヤ】 太陽の軌道。
18-025 シテムスビ ミナモトヱラミ
また月を創ろうとして、ミツを選んで
ツキノワト シラミヤニスヱ
月の輪として白宮に据えた。
【シラミヤ】 月の軌道。
18-027 ウヌノテノ ウツロヰオムマ
アメミヲヤはウヌの働きで創りだされたウツロイ(雷の神)を馬とし、
18-028 ウヰノテノ シナドハクツハ
ウヰの働きで創りだされたシナド(風の神)を轡にして
ヒカリムチ オテニクニタマ
光の鞭で大地を創ろうとクニタマを
【オテニクニタマ】 「オテ」を「オテムスビ」の省略、「オ」をオノコロの「オ」と考え、「オテムスビ」をまだ泥土の状態のものを固まった状態にすることとして、「大地を創ろうとして」と意訳した。
18-030 ノリメクル オトハホオコホ
乗り巡られた。その音はホオコホと鳴った。
ウビコニヱ ニアカルヤマゾ
泥土の塊が煮え立って噴き上がり山になった。
【ニアカルヤマゾ】 火山の噴火のことか。
18-032 ノテムスビ ノカゼニカワク
次に野を創ろうとして、野風を吹かせ泥土は乾いた。
クコワニニ ヒツメノアトハ
固まった大地についた蹄の跡は
【クコワニ】 難解だが、文脈から「ク」は「クニタマ」の略、「コ」は凝ること、「ワニ」は埴として訳した。埴は粘土を意味するが、ここでは固まった土、「大地」と訳した。
ノラトミチ シノタマヤマニ
野原と道とになった。月から山に
【シノタマ】 シの玉、すなわち月。
18-035 シタタリガ ナガレウミナル
水滴が滴り落ちて、流れて海になった。
カノミタマ コワニヨロコビ
アメミヲヤは大地が固まったことを喜び、
【カノミタマ コワニヨロコビ】 「カノミタマ」は「シノタマ」の対としての「日輪」とも読めるが、4綾本文045に「アメノミヲヤノ マナコヨリ モルルヒツキト アモトカミ」とあるので、アメミヲヤから降りる「日の霊力」と考えられる。また、これに続く文脈からも、「カ」は「明るい・光」、「ミタマ」は「御霊」と読み、アメミヲヤと解釈できる。この後、アメミヲヤは大地の上に人間の世界を作り出すのである。
ウハノテオ ワトアニワケテ
ウヰの働きですべての物をワ(地)とア(天)の元素に分けて
【ウハノテオ】 ここから先は突然「アイウエオ」などと出てきてビックリするが、次のように考えて訳を試みた。「ウハ」は本文022の「ウハムスビ」の「ウハ」と同じように、地上に働きかける力と解釈した。ホツマ文字の「ウ」に違いがあるので、別の解釈もあるかもしれない。「テ」は方法、手段。
【ワトアニワケテ アイウエオ】 「ア」はウツホ、「イ」はカゼ、「ウ」はホ、(この三つは「ア(天)」に属するもの)、「エ」はミヅ、「オ」はハニ(この二つは「ワ(地)」に属するもの)という、全ての元となる「元素」の概念。(元素というと、化学の「元素」と紛らわしいが、私の訳ではこのような限定的な概念で使っている) ホツマ文字の「ア、イ、ウ、エ、オ」という形は、文字が作られたときにこの概念にあわせて考案されたものであろう。
18-038 アイウエオ ウツホカゼホト
『ア、イ、ウ、エ、オ』とした。それはウツホ、カゼ、
18-039 ミヅハニノ マジワリナレル
ホ、ミヅ、ハニで、そのすべてをあわせ持って
18-040 ミナカヌシ ヤオモニウメル
ミナカヌシとして生まれ変わった。ミナカヌシが大地の至る所に産んだ人は
18-041 ヒトハホシ ホシハタネナス
あたかも夜空の星のようであった。人は子孫を作った。