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19-000 19(上)ノリノリヒトヌキマノアヤ
馬の乗り方、ヒトヌキマの綾
19-001 フタカミノ ミヨノヨワヒモ
二尊が御世を治めて、御歳も
19-002 ヤスラカニ オウミノタガニ
安らかに重ねられたので、近江のタガ宮に
19-003 ヰマサント ミコワカヒトニ
住もうと思われ、皇子のワカヒトに
19-004 アマテラス ヒツギオユズリ
皇位を譲る時に
19-005 マストキニ ヒタリノトミハ
話された。「左の臣は
19-006 オモイカネ ミギサクラウチ
オモイカネ、右の臣はサクラウチ。
カナサキハ ヒオウツシマス
カナサキは譲位の儀式を執り行う
【ヒオウツシマス ヱヲヤトミ】 「ヒオウツシマス」は、8綾本文373の「スヱテウツシヒ」と40綾本文292の「ウツシヒノオミ」、30綾本文060の「ヒノヲミウタウミヤコドリ」を解釈の手掛かりとした。前二つは「御霊」を遷す場面、三つ目は皇位継承の場面。ここでは皇位を二尊からアマテルカミに遷す場面で、皇位にある「御霊」を遷すことと考えた。「ヱ」はヱト(兄弟)の「ヱ」、もしくは「上」の意の「ヱ」、「ヲヤ」は親。この場合は、これらの儀式を取り仕切る役と考える。
ヱヲヤトミ カダハウケモチ
ヱヲヤ臣、神田はウケモチ
【カダハウケモチ】 カダは、25綾の本文「シガノカミタハ マダミテズ」などとあわせて考えると、後の平安時代に公用にあてるためにつくられた不輸租田となるものとして「神田(カミタ)」とした。ウケモチは食糧を司る臣。
ヲバシリハ ムマヤヲサメゾ
ヲバシリはムマヤヲサメとする。
【ムマヤヲサメ】 厩を取り仕切る臣。
19-010 キミトミト ココロヒトツニ
君と臣と心を一つにして
19-011 ツカサドレ トキニヲバシリ
政を司るようにせよ」。そこでヲバシリが
19-012 ヒタカミノ ミヤニモフデテ
ヒタカミの宮を訪ねて
19-013 ミチコエバ トヨケノカミノ
乗馬の極意を尋ねると、トヨケは
ヲシヱニハ ノリハヂミチオ
次のように教えた。「馬の乗り方は並み足で歩かせることを
【ヂミチ】 現代でも「手堅く着実に物事を進めること(広辞苑)として使われるが、馬を並み足で進ませるという意味もある。むしろこれが語源か。「ヂミチ乗り」は乗馬の基本。
19-015 ツネトナス マコニタツナオ
基本とします。馬子に手綱を
19-016 ヒカセオキ ムマノミキヨリ
持たせておいて、馬の右より
フミノホリ シクヤスクラノ
鐙に足をかけて乗ります。馬の背に乗せた鞍からの
【ヤスクラ】 「ヤス」は「乗りやすくする」という意味と考え「乗りやすくする鞍」とした。
アフミナワ マチニヰキアゲ
鐙の縄を、足にゆとりを持たせるため五寸(キ)上げる
【マチニヰキアゲ】  「マチ」は広辞苑では「衣類の幅の不足した部分に別に補い添える布。袴の内股の部分に足した布。」とある。ここでの「マチ」とは長さや幅にゆとりを持たせる意であろう。
19-019 ココロミテ モモトハルビノ
ようにして、腿と腹帯の間に
19-020 ユルミアイ コシスエノリテ
緩みを持たせます。次に腰を据えて乗り
19-021 ヤワヤワト ムマノアシドリ
ゆっくり歩かせます。馬の足取りと
19-022 イキスアヒ アハスカナメノ
自分の呼吸を合わせることが肝要で、
19-023 ノリノリゾ ツネニココロオ
これが馬の乗り方の基本です。また、常に心得て
19-024 ウベキナリ ムマハウマレテ
おくべきことは、馬は生まれた時は
19-025 モノシラズ アダハシルトキ
何も知りません。むやみに走らせると
19-026 ノリオツゾ カネテヲシヱバ
落馬します。あらかじめ教えておけば
カナフモノ マタイヅノリハ
思い通りにさせることができます。また、厳(イズ)乗りは
【イヅノリ】 馬を早く走らせる乗り方と考え、「厳乗り」か「逸乗り」と言えそうで、馬を走らせて早く遠くまで行くことが、他に手段のないこの時代には最も大切だったと考えられる。
ハセルトキ シトナメクラオ
走る時、下鞍を
【シトナメクラ】 「シトナメ」と「クラ」。「シトナメ」の正確な意味はよくわからないが、鞍の下に敷くものであろう。馬具の資料からすると「下鞍」と言われるもの。「シト」は「シトネ」(敷物)、「ナメ」は滑らかにするということか。
19-029 シキオビテ ハルビユルメズ
敷いて、腹帯を緩まないようにします。
ヒヂヨケノ タレカワウバト
泥よけの垂れ皮が大きな羽のように
【ヒヂヨケ】 馬の腹の部分に下げられている馬具の一つ。現代の馬具名では「泥障」と書いて「あおり」と呼ぶ。この文の内容がそのまま伝えられているようである。
19-031 ナルユエハ ハセユクミチニ
広がる訳は、走ってゆく道で
19-032 ナカクボノ コミゾニユキテ
中が窪んだ小さな溝に行きあたったとき
19-033 アフミニテ ソノタレカワオ
鐙でその垂れ皮を
19-034 ウチアオツ ウチアオタレテ
打って煽ると、垂れ皮は打ち煽られて
カセフクミ ハネトナルトキ
風を含み鳥の羽のようになるので、その時
【カセフクミ ハネトナルトキ】 馬が風に乗る鳥のように飛び越す気持ちになったことを形容しているのだろう。
19-036 トビコサス タトヒトブトモ
飛び越させるためです。例え飛び越そうとしても
19-037 ノルヒトノ ユクリナケレバ
乗る人の心の備えがなければ
19-038 アエトバズ クツワニツケル
うまく跳べません。主の心を轡に伝える
ヒキツナオ ヒトヌキノマト
手綱さばきを『ヒトヌキの間』と
【ヒキツナ】 綱を引くこと、すなわち「手綱さばき」と解釈した。
19-040 ナツクナリ ユエハアメツチ
呼びます。その訳は次の通りです。天地が
19-041 ワカサルニ アメノミヲヤノ
混沌としていたときに、アメミヲヤは
19-042 アホオアメ ウビオクニタマ
清くて軽いものを天とし、濁って重いものを大地として、
19-043 ウツロノリ シナトノタツナ
ウツロイを馬とし、轡に手綱をかけて
19-044 ノリメクリ ヨロモノウメル
大地を乗り巡りました。また、この世の多くのものを生みだした
19-045 フタカミモ ノリメクリテゾ
二尊も、馬に乗りトの教えを説いて国々を巡って
19-046 クニヲサム ウツロクツワヤ
国を治めたのです。このように馬の轡と
19-047 クニタマオ ヒトヌキノヲト
大地は一繋がりの紐と
19-048 ココロヱバ タトヒハスレド
心得れば、例え失敗しても