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03-000 3ヒヒメミヲウムトノノアヤ
一姫・三皇子を産む殿の綾
03-001 モロカミノ タカマニマツリ
諸臣がタカマで政の
03-002 ハカルノチ ツハモノヌシガ
会議をした後で、ツワモノヌシが
03-003 フタカミノ ヒヒメミヲウム
「二尊(イサナギ・イサナミ)が一人の姫と三人の皇子を産んだ
トノイツツ トエハカナサキ
殿が五つあるのはなぜか」と聞くと、カナサキが
【トノイツツ】 この時代、御子を産むときは産屋を建てた。後述されるが、一人は流産したので殿は五つとなる。
03-005 コトフルニ ムカシフタカミ
答えた。「昔、二尊が
ツクバニテ ミメグリトエバ
筑波にいたとき、イサナギ尊がイサナミ尊に子をもうけられる体調かと聞かれました。
【ミメグリトエバ】 イサナギが「ヤヒロノトノニ タツハシラを巡ろう」と言った、直截に言えば「御子をもうけよう」と言ったというようにも取れる。ここでは「ミメグリ」を、「生理の巡り」とし、イサナギがイサナミに妊娠の適期かどうかをたずねたとした。
03-007 メカミニハ ナリナリタラヌ
そしてイサナミ尊の体の足りない
03-008 メモトアリ ヲカミノナリテ
所と、イサナギ尊の体の
03-009 アマルモノ アワセテミコオ
余っているところを合わせて御子を
03-010 ウマントテ ミトノマクバヒ
生むために交わりを
03-011 ナシテコオ ハラミテウメル
されて、イサナミ尊は御子を身籠られました。生まれた御子の
ナハヒルコ シカレドチチハ
名はヒルコ姫といいます。しかしながら父は
【ヒルコ】 アマテルカミの姉。ワカ姫、シタテル姫ともいう。
スズヨソホ ハハハミソヒホ
四十歳、母は三十一歳で、
【スズ】 真榊で数える年数。28綾本文009に詳しく書かれている。
アメノフシ ヤトレバアタル
(二年後には)天の節目が宿るので災いが起き、
【アメノフシ】 厄年。現代でも男は42歳、女は33歳を大厄と言って、畏れ慎む風習が残っている。
03-015 チチノヲヱ ヲノコハハハノ
女の子は父の厄災を受け、男の子の時は母親が
03-016 クマトナル ミトセイツクニ
心の病になります。慈しみ育てるのが3年に
タラザレド イワクスフネニ
満たなかったけれど、イワクス船に
【イワクスフネ】 日本書紀の解釈では楠で造った頑丈な船。
03-018 ノセスツル ヲキナヒロタト
乗せて捨てました。われが姫を拾い
03-019 ニシトノニ ヒタセバノチニ
西殿でお育てしました。その後、
03-020 フタハシラ ウキハシニヱル
二尊がキミになって継いだ
オノコロノ ヤヒロノトノニ
国は安定し、大きな殿を建てました。
【オノコロ】 自ずから凝ること。2綾本文078にも「オノコロニ」とあり、「徐々に安定させる」と訳した。ここでは「ようやく安定させた国」とする。
03-022 タツハシラ メグリウマント
その殿の柱を巡って世継ぎ子を産もうと
コトアゲニ メハヒダリヨリ
言挙げをするために、イサナミ尊は左より、
【コトアゲ】 言葉に出して言い立てること。この場合は世継ぎを産むために二人が声を掛け合う儀式と考えた。
03-024 ヲハミギニ ワカレメグリテ
イサナギ尊は右より分かれて巡りました。
アフトキニ メハアナニエヤ
出会ったところで、イサナミ尊は『ほんとうにまあ、
【アナニエヤヱヲトコ】 「アナニエヤ」は「本当にまあ」位の意。エもヤも感動の助詞。「ヱヲトコ」は「素敵な男」
03-026 ヱヲトコト ヲハワナウレシ
素敵な男』と詠い、イサナギ尊は『ああ嬉しい
03-027 ヱオトメト ウタヒハラメド
素敵な乙女』と詠いました。そして身籠られましたが、
03-028 ツキミテズ ヱナヤブレウム
月が満たないうちに、生まれてしまいました。
ヒヨルコノ アワトナガルル
その子は流産だったのです。
【ヒヨルコ】 名前ではなく、流産した子のこと。
03-030 コレモマタ コノカズナラズ
この子もまた、世継ぎ子とはならなかったので
アシフネニ ナガスアハチヤ
芦船に乗せて、わが身の恥として流しました。
【ナガスアハチヤ】 「アハチ」は「吾恥」と地名の「あわじ」。本文050「アワチシマ」と058「アハチ」と合わせると「アハヂ」は「淡路島」と考えられる。ヒヨルコはその辺りで流された。
03-032 アルカタチ アメニツグレバ
事の子細をトヨケ尊に告げると、トヨケ尊が
フトマニオ アチハエイハク
フトマニでよくよく占って言われました。
【アチハエイハク】 「アチハエ」は味わう。吟味すること。
ヰヨノウタ コトオムスハズ
『五・四の歌は、良い結果になりません。
【ヰヨノウタ】 五・四の歌とは、アナニエヤ(五)、エオトコ(四)のような音数の歌のこと。普通の歌は五・七で歌われる。
03-035 コトアゲモ メハサキタテズ
言挙げも、女は先に声を立てないものです。
トツギトハ メノニハナブリ
世継ぎを産もうとする時は、例えば、メスのセキレイが
【トツキ】 「ト継ぎ」、トの教えを継ぐ子を産むこと。すなわち世継ぎを産むこと。このようにして授かったのがアマテル。
03-037 ヲユレナク ヲトリナキサル
先に尾を揺らして鳴くと、オスは鳴き去りますが
マタアルヒ ヲトリヨソオフ
また、オスが尾を揺らして鳴くときは
【マタアルヒ】 「ある日」ということではなく、直前のことと対比した場面に話を移すつなぎの言葉だろう。
03-039 メガシリテ アヒマシハレバ
メスは様子を悟って交わります。
03-040 アメヨリゾ トリニツゲシム
これは天の神が鳥に教えさせた
03-041 トツギノリ サラニカエリテ
世継ぎを産むための則なのです』。再び帰って
03-042 フタカミハ アラタニメグリ
二尊は、改めて柱を巡り、
03-043 ヲハヒダリ メハミギメグリ
イサナギ尊は左より、イサナミ尊は右より巡りました。
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