ホツマツタヱ 全行現代語対訳

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11-046

揺れ動く浜の名前をカスガマロが聞いたところ、そこは名もない浜であった。

11-047

フツヌシも、「名前が欲しいものだ」と言えば、

11-048

カスガマロが即興の歌で答えた。

11-049

「お名前こそ常々うかがっていたフツヌシ命の、心づくしの

【ナコソ】 ここでの「ナコソ」は「お名前こそ伺っていた」と強調した言い方。この後に出てくる「ナコソシルベユ」の「ナコソ」は、「叔父のフツヌシという名前こそ」、「シルベ」は「標」、すなわちこの浜を表す名前、「ユ」は上代の自発の助動詞。フツヌシは自分の名前ではなく「ナコソ」の部分を浜の名前としたと解釈した。

11-050

酒迎えで、貝のハマグリが

11-051

合さるように、伯父上と出会えました。甥の我も御覧のように

11-052

歳波を越え出会えたこの浜は、叔父上の名こそ浜の標となりましょう。

11-053

親しく盃を交わし合う仲になれたのがこの浜だから」。

11-054

そこでナコソ(勿来)と名が決まり、酒を酌み交わす肴に

11-055

桜の実をつまんだ。秋に帰る日もまた再び

11-056

酒を酌み交わし、堅塩をなめて

11-057

海苔を肴にした。二人連れだって

11-058

ヒタカミのタカ若宮に入るとき、七代タカミムスビが門まで

11-059

出て迎えた。勅使のカスガマロは敷かれた筵の上に

11-060

立った。ヲシホミミは九重の

【キミココノヱノ　シトネオリ】 「シトネ」敷物。ヲシホミミが９枚重ねの敷物を６枚に減らしたのは、アマテルカミへの敬意。

11-061

敷物を降りて六重にし、アマテルカミの詔を聞いた。

11-062

詔は次の通りである。「汝オシヒトよ、

11-063

吾の代わりに行う、常々の務めは

【ヨサシ】 「寄さす」から、統治などの委任、任命。(広辞苑)

11-064

世を正すことである。いつの時も春夏秋冬

11-065

民に優しくせよ。このヤサカニの

11-066

勾玉を、神から授かった崇高な力として

【アガクシヒル】 三行前に自分のことを「ワガ」と言っているし、このホツマ文字の「ア」は天や神を表すので、神とした。

11-067

用いれば、心を正しく

【ナカゴ】 心。

11-068

保つことができる。八咫の鏡は

11-069

左の臣に預けよ。諸人の善悪を

【タテニフレ】 「タ」は左。左手に振れ、すなわち左の臣に預けよということ。この後に書かれている「ツ」は右。

11-070

よく見極めよ。また八重垣の剣は

11-071

右の臣に預け、無法者がいれば

【アラカミ】 アマテルカミはこのような者も「カミ」と呼んだ。40綾本文333にも君が「ムカシイワク　ヒトハカミ　カミハヒトナリ」という場面もある。

11-072

しっかり退治し、情けを持って従わせよ。

11-073

吾が手ずから授けた三種の神宝を

11-074

受けたまえ。そしてなおも心がけよ。

11-075

三種の神宝を見るときは、吾を

11-076

見るのだと思うがよい。結婚するチチ姫と

11-077

二人ともに常に睦まじくして、

11-078

宮人としての気品を保つよう心掛けよ。吾は二尊の

11-079

教えを引き継いできた。吾が子がこれから永く

11-080

君として努めていけば、わが家系は代々栄え、

11-081

まさに天地と同じように末永く続くだろう。

11-082

フツヌシとタケミカツチは常に

11-083

君に侍って政を守れ。

11-084

マユミの布の八豊幡と

【マユミヌノ】 檀。真弓とも書く。和紙はコウゾを原料として作られるが、古代は檀が使われた。ここでは「ヌノ」となっているが、今日言われる和紙と同様のものと思われる。

11-085

葉桑の弓と羽々矢を添えて

【ハクワ】 葉桑としたが、「ハ」の意味不詳。

11-086

授けよう。これですべてである」。使者のカスガマロは詔を伝え終えると筵を

11-087

降りた。ある日、ワカヒコ(カスガマロ)が

11-088

カウトノに上ったとき、そこに咲いている黄金色の

11-089

花を見て、何の花かと尋ねた。タカギが次のように答え、

11-090

「アマテルカミが御幼少のとき、宮を守っていたカラスが

11-091

黄金を吐きました。ついにこの山の榧の木も

【キカヤ】 「カヤ」は榧の木であろう。榧の雄花は黄色。楕円形の、派手な花ではないが、満開の時はこのように感じてもおかしくないほどであると言う。

11-092

黄金の花が咲いたようになりました。イサコ姫が産んだ皇子も

【イサコウミコ】 イサコ(イサナミ)が産んだ子、アマテルカミ。

11-093

同じように光り輝きました。今また昔の景色と変わらず

【ナガメタガワス　コカネサク】 アマテルカミに続いて、ヒタカミに来て君になったヲシホミミが、アマテルカミと同じように立派で誇りであるという比喩的表現と考えた。