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北は「ネ」（寝）といいます。例えば、人が来たとして
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日の位置で表すと、日(人)と会わないのが「北」、
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日(人)と出会うのが「東」で、日(人)が、物事を
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よく皆見ることができるのが「南」。日(人）が落ち着くのが「西」です。
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帰るのは来た方の「北」です。ネから来た(北)ので
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ネに帰るのです。木は春に若葉が芽生え、
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夏は青葉になり、秋には紅葉となり
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冬は落葉となります。この移り変わりも同じように「キツサネ」なのです。
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落葉が返る「ネ」(根)は北、木の芽が「キ」ざすのは東。
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「サ」（南）は葉が茂り、「ツ」(西)は葉を錦に染め尽くします。
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「ヲ」はキミがクニを治めることなので
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キツヲサネ（東西中南北）は、国のすべてとキミのことになります。
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木(キ)は東に芽を兆し、花も葉も南に茂り、
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木の実は西にできます。木の身を分けてできる
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木の実なので、キミとは男神と女神のことを意味します」。
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その後、ワカ姫がイサワの宮に
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仕えている時、キシヰの稲田が
【キシヰ】和歌山地方か。
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穂虫の被害にあい、人々は嘆いて
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その様子を告げにイサワの
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アマテルカミの宮を訪ねたが、アマテルカミは天の真名井に
【アマノマナヰ】京都府真名井。「アマ」はアマカミにかかわる場所・人などに冠する語。
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行幸された後であった。民の嘆きを聞いた
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后のムカツ姫は急いでキシヰに
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行き、祓いを始めた。田の東に立って
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ワカ姫がオシ草で扇ぎ、
【オシクサ】植物図鑑で調べても、「オシクサ」は見つけられなかった。本文118からの「ソノオシクサハ ヌバタマノ ハナハホノボノ」より、オシ草の種が「ヌバタマ」だと言っていると解釈できる。すると「ヒオウギ」（檜扇）という草花の黒い種が「ヌバタマ（射干玉）と言われることから、「オシクサ」は「ヒオウギ」と同じと考える。また檜扇の花は朱色なので「ハナハホノボノ」と表現したのではないか。また、明解古語辞典(三省堂)に「烏扇は檜扇の異名」とあり、「カラスバノ アカキハヒノデ ヒアフギノ」の文からも「オシクサ」は「ヒオウギ」「カラスバ」と同じものと考えた。
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歌を読み、祓いをすると、
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虫が去るというので、ムカツ姫が先に
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この歌を詠い、三十人の侍女をその両側に
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立たせて、みなにも一斉に
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穂虫を払う
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まじないのワカ歌を歌わせた。
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「籾や、穀物の種の大麦、小麦、隠元豆
【タネハタネのワカ歌】「タネ」は籾、「ハタネ」は畑の種(穀類)、「ウム(ギ)」は大麦、「ス(ム)ギ」は小麦、「サカメ」は隠元豆、「マメ」は大豆、「スメ」は小豆。「ソ」は水稲、「ロ」はヒエやアワなどの畑にできる穀物。「ハメソ」の「ソ」は禁止を表す「な・・・そ」の「な」を欠く形。
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大豆、小豆、それら作物の葉も食(ﾊ)んではいけない、
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虫はみんな鎮まれよ」
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繰り返して三百六十回歌って
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騒ぐと、虫は飛び去って
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西の海にことごとく去っていった。
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虫の害を払ったので、稲は以前のように生き生きと
【ヱオハライ】「ヱ」は「ヲヱ」の「ヱ」。穢れや厄災のこと。
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甦った。稲がたくさん実り、
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真っ暗な夜のような毎日であったが、糧を得ることができた
【ヌバタマ】ヒオウギの丸い種で黒色。黒・暗いを表す言葉。
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民は喜び、お礼に
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キシヰの国の人々は天日の前宮と
【アヒノマエミヤ】「天日の前」はアマテルカミの后をいう。「アヒノマエミヤ」は后の宮。
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タマツ宮を造ったので、ムカツ姫とワカ姫はそれぞれの宮に滞在した。
【タマツミヤ】和歌山県和歌山市和歌浦の玉津島神社か。
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ムカツ姫は天日の前宮をクニカケ宮とした。
【クニカケミヤ】ムカツ姫は「后の宮」ではなく「二つの国を懸ける(つなげる)宮」と名付けたのではないか。和歌山市に日前国懸 (ひのくまくにかかす) 神宮がある
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ワカ姫の歌の心を留めている
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タマツ宮は、枯れた稲を
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甦らせることができる。そこでワカ姫のワカ歌に因み
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国の名もワカの国とした。タマツ宮の勅使として来ていた
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アチヒコを一目見て好きになってしまった
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ワカ姫はワカ歌を詠んだ。
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その歌を書き記し、思い兼ねて
【ウタミソメ】歌を短冊のようなものに書いたのであろう。