先頭の番号が青い行は、クリックすると解釈ノートが見られます。
対訳ページの使い方の詳細はこちらのページをご覧ください。
01-043 キタハネゾ モシヒトキタリ
北は「ネ」(寝)といいます。例えば、人が来たとして
01-044 コトワケン アワネハキタヨ
日の位置で表すと、日(人)と会わないのが「北」、
01-045 アフハヒデ ミナミニコトオ
日(人)と出会うのが「東」で、日(人)が、物事を
01-046 ワキマエテ オチツクハニシ
よく皆見ることができるのが「南」。日(人)が落ち着くのが「西」です。
01-047 カエルキタ ネヨリキタリテ
帰るのは来た方の「北」です。ネから来た(北)ので
01-048 ネニカエル キハハルワカバ
ネに帰るのです。木は春に若葉が芽生え、
01-049 ナツアオバ アキニヱモミヂ
夏は青葉になり、秋には紅葉となり
01-050 フユオチバ コレモオナジク
冬は落葉となります。この移り変わりも同じように「キツサネ」なのです。
01-051 ネハキタニ キザスヒガシヤ
落葉が返る「ネ」(根)は北、木の芽が「キ」ざすのは東。
01-052 サニサカヱ ツハニシツクル
「サ」(南)は葉が茂り、「ツ」(西)は葉を錦に染め尽くします。
01-053 ヲハキミノ クニヲサムレバ
「ヲ」はキミがクニを治めることなので
01-054 キツヲサネ ヨモトナカナリ
キツヲサネ(東西中南北)は、国のすべてとキミのことになります。
01-055 キハヒガシ ハナハモミナミ
木(キ)は東に芽を兆し、花も葉も南に茂り、
01-056 コノミニシ ミオワケオフル
木の実は西にできます。木の身を分けてできる
01-057 キノミユヱ キミハヲメカミ
木の実なので、キミとは男神と女神のことを意味します」。
01-058 シカルノチ イサワノミヤニ
その後、ワカ姫がイサワの宮に
ハベルトキ キシヰノイナダ
仕えている時、キシヰの稲田が
【キシヰ】和歌山地方か。
01-060 ホヲムシニ イタムオナゲキ
穂虫の被害にあい、人々は嘆いて
01-061 アルカタチ ツグルイサワノ
その様子を告げにイサワの
ヲヲンカミ アマノマナヰニ
アマテルカミの宮を訪ねたが、アマテルカミは天の真名井に
【アマノマナヰ】京都府真名井。「アマ」はアマカミにかかわる場所・人などに冠する語。
01-063 ミユキアト タミノナゲキニ
行幸された後であった。民の嘆きを聞いた
01-064 ムカツヒメ イソギキシヰニ
后のムカツ姫は急いでキシヰに
01-065 ユキヒラキ タノキニタチテ
行き、祓いを始めた。田の東に立って
オシクサニ アフグワカヒメ
ワカ姫がオシ草で扇ぎ、
【オシクサ】植物図鑑で調べても、「オシクサ」は見つけられなかった。本文118からの「ソノオシクサハ ヌバタマノ ハナハホノボノ」より、オシ草の種が「ヌバタマ」だと言っていると解釈できる。すると「ヒオウギ」(檜扇)という草花の黒い種が「ヌバタマ(射干玉)と言われることから、「オシクサ」は「ヒオウギ」と同じと考える。また檜扇の花は朱色なので「ハナハホノボノ」と表現したのではないか。また、明解古語辞典(三省堂)に「烏扇は檜扇の異名」とあり、「カラスバノ アカキハヒノデ ヒアフギノ」の文からも「オシクサ」は「ヒオウギ」「カラスバ」と同じものと考えた。
01-067 ウタヨミテ ハラヒタマエバ
歌を読み、祓いをすると、
01-068 ムシサルオ ムカツヒメヨリ
虫が去るというので、ムカツ姫が先に
01-069 コノウタオ ミソメオマテニ
この歌を詠い、三十人の侍女をその両側に
01-070 タタヅマセ オノオノトモニ
立たせて、みなにも一斉に
01-071 ウタハシム イナムシハラフ
穂虫を払う
01-072 ワカノマジナイ      
まじないのワカ歌を歌わせた。
タネハタネ ウムスギサカメ
「籾や、穀物の種の大麦、小麦、隠元豆
【タネハタネのワカ歌】「タネ」は籾、「ハタネ」は畑の種(穀類)、「ウム(ギ)」は大麦、「ス(ム)ギ」は小麦、「サカメ」は隠元豆、「マメ」は大豆、「スメ」は小豆。「ソ」は水稲、「ロ」はヒエやアワなどの畑にできる穀物。「ハメソ」の「ソ」は禁止を表す「な・・・そ」の「な」を欠く形。
01-074 マメスメラノソロハモハメソ
大豆、小豆、それら作物の葉も食(ハ)んではいけない、
01-075 ムシモミナシム      
虫はみんな鎮まれよ」
01-076 クリカエシ ミモムソウタヒ
繰り返して三百六十回歌って
01-077 ドヨマセバ ムシトビサリテ
騒ぐと、虫は飛び去って
01-078 ニシノウミ ザラリムシサリ
西の海にことごとく去っていった。
ヱオハラヒ ヤハリワカヤギ
虫の害を払ったので、稲は以前のように生き生きと
【ヱオハライ】「ヱ」は「ヲヱ」の「ヱ」。穢れや厄災のこと。
01-080 ヨミカエル ソロニミノリテ
甦った。稲がたくさん実り、
ヌバタマノ ヨノカテオウル
真っ暗な夜のような毎日であったが、糧を得ることができた
【ヌバタマ】ヒオウギの丸い種で黒色。黒・暗いを表す言葉。
01-082 オンタカラ ヨロコビカエス
民は喜び、お礼に
キシヰクニ アヒノマヱミヤ
キシヰの国の人々は天日の前宮と
【アヒノマエミヤ】「天日の前」はアマテルカミの后をいう。「アヒノマエミヤ」は后の宮。
タマツミヤ ツクレバヤスム
タマツ宮を造ったので、ムカツ姫とワカ姫はそれぞれの宮に滞在した。
【タマツミヤ】和歌山県和歌山市和歌浦の玉津島神社か。
アヒミヤオ クニカケトナス
ムカツ姫は天日の前宮をクニカケ宮とした。
【クニカケミヤ】ムカツ姫は「后の宮」ではなく「二つの国を懸ける(つなげる)宮」と名付けたのではないか。和歌山市に日前国懸 (ひのくまくにかかす) 神宮がある
01-086 ワカヒメノ ココロオトトム
ワカ姫の歌の心を留めている
01-087 タマツミヤ カレタルイネノ
タマツ宮は、枯れた稲を
01-088 ワカカエル ワカノウタヨリ
甦らせることができる。そこでワカ姫のワカ歌に因み
01-089 ワカノクニ タマツノヲシカ
国の名もワカの国とした。タマツ宮の勅使として来ていた
01-090 アチヒコオ ミレバコカルル
アチヒコを一目見て好きになってしまった 
01-091 ワカヒメノ ワカノウタヨミ
ワカ姫はワカ歌を詠んだ。
ウタミソメ オモイカネテゾ
その歌を書き記し、思い兼ねて
【ウタミソメ】歌を短冊のようなものに書いたのであろう。