【マドカノタマゴ】 最初の王が卵から生まれてくるという神話は外国にもあるが、ここでは神話としては考えない。アマテルは胞衣を頭につけて生まれたのではないか。シャーマンやシーザーなど、並外れた能力を持った、英雄になる人物がそのように生まれたという話がある。日本でも、そういう子供は袈裟男とか袈裟太郎とか言われ、神の申し子とされた。
【ユキノヨロシモ】 「ユキ」は、「アユキ・ワスキ」の「ユキ」と考える。「アユキ」は「ア(天)のユ(斎・神聖な)キ(気・エネルギー)」、すなわち「天からの恵み」。「ワスキ」は「ワ(地)・ス(清らか)キ(気・エネルギー)」すなわち「地からの恵み」。この場合はアが省かれているが「アユキ」(天からの恵み)、すなわち「マトカノタマゴ」の形で生まれることが、後のトヨケの話にあるように、天の恵みで目出度いことだということ。(今日の大嘗祭のときに建てられる「悠紀殿・主基殿」に「ユキ・スキ」の言葉が残っている) 松本善之助氏の「月刊ほつま」復刊3号に「ユキ・スキ」についてという記事があり、大変参考になった。
【ウブキヌノ ミハタテマツル】 主語がなく、わかりにくいが奉ったのはイサナギの姉(妹)のシラヤマ姫。本文134に「オバヒメガ コヱネノクニニ ミハヲリテ」とあることから、「オバヒメ」はコヱネの国の人だと分かる。また24綾本文085以降で、ココリヒメが「妹がコヱネの国の白山の峰を超える輿を作った」と言っている。「コヱネ」「シラヤマ」という共通性から、ココリヒメ(キクキリヒメ)はシラヤマヒメと同一人物と考える。また石川県の白山比メ(口偏に羊)神社にココリヒメ(シラヤマヒメ)が祭られていることからも、「オバヒメ」「ココリヒメ(キクキリヒメ)」「シラヤマヒメ」は同一人物と考え、この後「オバヒメ」「オバ」とあるのは「シラヤマ姫」とする。ここではアカヒコが絹糸を作り、ナツメが布に織り、それをシラヤマ姫が産着に仕立て差し上げたと解釈した。
【アメニタナビク シラクモノ…】 他の所でも氷雨が降ったりツララが降ったりして、重大な出来事が起きている。この文でも霰が降ることは、アマテルが目を開き即位するという重大な慶事への進展を表しているのではないだろうか。
【ヤトヨハタ】 「ヤトヨ」は「八豊」と読み、「八」は八方、あらゆるもの。「豊」は「豊かであるように」というようにとらえ、そのような願いが込められているのではないか。古来、朝廷で儀式・祭礼の具として用いられた。