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コソムツキ ヤヤソナワリテ
九十六か月経ったころ、ようやく十分に育ち
【コソムツキ】 8年胎内にいることは実際にはあり得ない。歳と年月については誇張として受け止める。
04-094 アレマセル アマテルカミゾ
お生まれになったのがアマテルカミです。
04-095 フソヒスズ モモフソヰヱタ
二十一スズ百二十五枝
トシキシヱ ハツヒホノホノ
キシヱの年、初日がほのぼのと
【キシヱ】 この時代に使われ出した暦のキアヱ暦の31番目の年。60年で1回りする。
04-097 イツルトキ トモニアレマス
昇るとき、日の出と同時に皇子はお生まれになりました。
ミカタチノ マドカノタマコ
皇子の御形が丸い卵のようになっていて
【マドカノタマゴ】 最初の王が卵から生まれてくるという神話は外国にもあるが、ここでは神話としては考えない。アマテルは胞衣を頭につけて生まれたのではないか。シャーマンやシーザーなど、並外れた能力を持った、英雄になる人物がそのように生まれたという話がある。日本でも、そういう子供は袈裟男とか袈裟太郎とか言われ、神の申し子とされた。
イブカシヤ ウヲヤヲキナノ
不思議でした。祖父の
【ウヲヤヲキナ】 「ウ」は「大」、「ヲヤ」は「祖」と読むと「大祖翁」となる。すなわちオオヤマスミの祖父と考える。
04-100 ヤマズミガ コトホギウタフ
ヤマズミが祝福して謡いました。
ムベナルヤ ユキノヨロシモ
『いかにももっともなことだ。天の恵みのめでたいことよ。
【ユキノヨロシモ】 「ユキ」は、「アユキ・ワスキ」の「ユキ」と考える。「アユキ」は「ア(天)のユ(斎・神聖な)キ(気・エネルギー)」、すなわち「天からの恵み」。「ワスキ」は「ワ(地)・ス(清らか)キ(気・エネルギー)」すなわち「地からの恵み」。この場合はアが省かれているが「アユキ」(天からの恵み)、すなわち「マトカノタマゴ」の形で生まれることが、後のトヨケの話にあるように、天の恵みで目出度いことだということ。(今日の大嘗祭のときに建てられる「悠紀殿・主基殿」に「ユキ・スキ」の言葉が残っている) 松本善之助氏の「月刊ほつま」復刊3号に「ユキ・スキ」についてという記事があり、大変参考になった。
04-102 ミヨツギモ ヨヨノサイワイ
御世継ぎも、末代までの世の中の幸いも
04-103 ヒラケリト オホヨスガラニ
これで拓けた』。夜通しの
04-104 コトブクモ ミタビニオヨブ
お祝いも三度に及び
04-105 ユキヨロシ ヒトノトワシノ
めでたいことでした。人々が『なぜマドカノタマゴがめでたいのか』と聞くと
04-106 コタヱニモ トヨケノカミノ
トヨケ尊の答えは
ヲシヱアリ サワルイソラノ
次のような教えでした。『それはイソラの障りを除くための
【イソラ】 厄難、災い、害などの概念。
ミソギニテ ヱナノカコミハ
禊ぎであり、胞衣に囲まれ
【ヱナノカコミハ オノコロノ…】 イソラの障りを除くため自ら胞衣をかぶったので、自ずと卵の形になったということは、生まれてくる皇子が素晴らしく有能であるという証で、めでたいということ。
04-109 オノコロノ タマコトナラバ
自ら丸まって卵の形になったということなので、
04-110 ユキヨロシ タマノイワトオ
めでたいことなのである。玉の岩戸を
04-111 ヒラケトテ イチヰノハナノ
開け』と言われ、一位の木の先で作った
04-112 サクモチテ イマコソヒラク
笏を持って、『今こそ開く
04-113 アマノトヤ イヅルワカヒノ
天の戸や』と、胞衣を切り開くと、皇子がお出ましになり、初日が
04-114 カカヤキテ シラヤマヒメハ
光り輝きました。シラヤマ姫は
ウブユナス アカヒコクワニ
皇子に産湯をつかわせました。アカヒコが
【アカヒコクワニ ヒクイトオ】 「クワニヒクイト」は蚕が繭を作ることだけでなく、繭から糸をつむいで絹糸を作ることと解釈した。
ヒクイトオ ナツメガヲリテ
絹糸を紡ぎ、ナツメが布に織り
【ナツメ】 養育係。「撫女」とでも表すとイメージが湧く。
ウブキヌノ ミハタテマツル
シラヤマ姫が産衣にして差し上げました。
【ウブキヌノ ミハタテマツル】  主語がなく、わかりにくいが奉ったのはイサナギの姉(妹)のシラヤマ姫。本文134に「オバヒメガ コヱネノクニニ ミハヲリテ」とあることから、「オバヒメ」はコヱネの国の人だと分かる。また24綾本文085以降で、ココリヒメが「妹がコヱネの国の白山の峰を超える輿を作った」と言っている。「コヱネ」「シラヤマ」という共通性から、ココリヒメ(キクキリヒメ)はシラヤマヒメと同一人物と考える。また石川県の白山比メ(口偏に羊)神社にココリヒメ(シラヤマヒメ)が祭られていることからも、「オバヒメ」「ココリヒメ(キクキリヒメ)」「シラヤマヒメ」は同一人物と考え、この後「オバヒメ」「オバ」とあるのは「シラヤマ姫」とする。ここではアカヒコが絹糸を作り、ナツメが布に織り、それをシラヤマ姫が産着に仕立て差し上げたと解釈した。
04-118 タラチメノ ツカレニチシル
母親のイサナミ尊は疲れて乳が
04-119 ホソケレバ ホイヰノカミノ
少ししか出なかったので、ホイヰ命の妻の
04-120 ミチツヒメ チチタテマツリ
ミチツ姫が乳母として乳を差し上げ、
04-121 ヒタスレド ヒトミオトヂテ
お育てしたけれど、皇子は目を閉じたまま
04-122 ツキヒナヤ ヤヤハツアキノ
夜も昼もなく月日が過ぎました。やっとその年の秋の
モチノヒニ ヒラクヒトミノ
望の日に開いた目は
【モチ】  望。満月の日。陰暦では15日。 朔は新月の日。1日。
04-124 シホノメハ タミノテフチノ
愛らしい目でした。民は手を打って
04-125 ヨロコビニ ツカレモキユル
大喜びし、イサナミ尊には疲れも消えるほどの
ミメグミヤ アメニタナビク
喜びでした。空にたなびく
【アメニタナビク シラクモノ…】  他の所でも氷雨が降ったりツララが降ったりして、重大な出来事が起きている。この文でも霰が降ることは、アマテルが目を開き即位するという重大な慶事への進展を表しているのではないだろうか。
シラクモノ カカルヤミネノ
白雲がかかるハラミ山の八つの峰に
【ヤミネ】 富士八峰。剣ヶ峰、白山岳(釈迦ヶ岳)、久須志岳(薬師ヶ岳)、朝日岳(大日岳)、伊豆ヶ岳、(阿弥陀岳)、成就ヶ岳(勢至ヶ岳)、駒ヶ岳(浅間ヶ岳)、三島岳(文殊ヶ岳)の八峰。
04-128 フルアラレ ヒスミニコタマ
霰が降って、皇子の住まわれる宮にこだましました。
コノミヅオ ヌノモテツクル
この目出度い出来事を祝って布で作った
【コノミヅ】 「ミヅ」は「瑞」。うるわしいこと、めでたいしるし。アマテルの誕生と目を開けたこと。また、霰が降ったこともめでたいしるし。綾の題は「誕生」としてあるが、これらを含んでいる。
ヤトヨハタ ヤスミニタテテ
八豊旗を八隅に立てて、
【ヤトヨハタ】 「ヤトヨ」は「八豊」と読み、「八」は八方、あらゆるもの。「豊」は「豊かであるように」というようにとらえ、そのような願いが込められているのではないか。古来、朝廷で儀式・祭礼の具として用いられた。
キミトナル クラヰノヤマノ
アマテルカミは即位しました。クラヰの山の
【キミトナル】 アマテルだけは、誕生してすぐに君となった。
【クラヰノヤマ】 岐阜県に位山という山があり、全山一位の林でおおわれている。一位は笏材。
04-132 イチヰサク ヨニナガラヱテ
一位の木で作った笏は後世永く伝えられました。
04-133 サクモツハ カミノホズヱゾ
笏を持つ者はアマテルカミの子孫なのです。
オバヒメガ コヱネノクニニ
叔母のシラヤマ姫がコエネの国で
【オバヒメ】 04-117参照。
【コエネ】  北陸地方。シラヤマ姫の出身地。
04-135 ミハヲリテ タテマツルトキ
布を織って差し上げたときに