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08-103 ユガケアリ ナンゾイタマン
「弓懸がある。どうして痛いものか。
08-104 ウケヨトテ ハハヤハナセハ
これを受けてみろ」と羽々矢を放つと、
08-105 ハタレトル トモニワライテ
ハタレも掴み取った。二人は共に笑った。
08-106 ミヤゲアリ カミヨリヲコゼ
「土産があるぞ」とフツヌシが言って、アマテルカミからのオコゼを
08-107 タマハレバ ハタレヨロコビ
授けると、ハタレは喜び、
08-108 カミイカン ワガスキシルヤ
「アマテルカミはどうして、わしの好きなものを知っているのか」と言った。
08-109 マタイワク ナンチモシルヤ
そこでフツヌシが「汝もアマテルカミの好きなものを知っているか」と言うと、
08-110 コタヱネバ ワラツテイワク
イソラが答えなかったので、フツヌシは笑いながら言った。
08-111 コロスナリ ハタレイカリテ
「アマテルカミの好きなことはハタレを殺すことだ」。ハタレは怒って
08-112 ナニユエゾ ナンチホコリテ
「どうしてだ」と言うと、フツヌシは「汝は得意になって
バクルユエ イソラウツナリ
ひとを騙すから、イソラを討つのだ」と言った。
【バクル】 化ける。ここでは騙すとした。
08-114 ナオイカリ イワオケアゲテ
イソラはなお怒って、岩を蹴り上げて
ノノシレハ フツヌシヲコゼ
罵ったが、フツヌシはオコゼを
【オコゼ】 カサゴの仲間の魚。山の神の供物にするなど、山の神と関係のある伝承が多い。
08-116 ナゲイルル ハタレマウバイ
ハタレ軍の中に投げ入れた。ハタレ達が奪い
08-117 アラソエハ ミカタハフキオ
争っているところを、フツヌシの軍は蕗を
08-118 タキイブス ハタレムセンテ
焚いて燻した。ハタレ達がむせて
08-119 シリゾクオ オイツメシバル
退くところを追い詰めて
チハタレマ コレモヒルネト
千人のハタレ達を縛りあげた。こんなことは昼寝をしているようなものだと、
【コレモヒルネ】 きわめて簡単なこと、非常に容易なこと。現代の言い方では「朝飯前」というところ。
08-121 ナオイサミ ヨモヨリカコミ
なお勇んで、四方から囲い
08-122 イソラカミ ツイニシバリテ
イソラの首領もついに縛り
08-123 ツツガナス チモノモノマモ
牢屋に入れた。千百人のハタレ達も
08-124 ソノクニノ シムニアツケテ
その国の一族に預けて
08-125 モロカエリケリ      
みな帰った。
08-126 マタハタレ イヨノヤマヨリ
また、ハタレが伊予の山から
08-127 キシヰクニ ワタリセムルオ
紀志井の国に渡って攻めてきたと
トツミヤノ ツゲニモロアイ
トツ宮の使者が伝えたので諸臣が集まって
【トツミヤ】 弟ツ宮。アマテルカミの弟のツキヨミの宮
08-129 カミハカリ カネテカナテノ
宮中会議を開いた。アマテルカミが予ねてカナテという名前を
08-130 ミコトノリ タケミカツチニ
賜ったタケミカツチに
フトマカリ タマエバイソギ
太環餅を授けた。タケミカツチは急ぎ
【フトマカリ】 「マカリ」は広辞苑等にある「まがりもちい(環餅)」(もち米の粉をこねて引き伸ばし、色々な形に作り曲げて油で揚げたもの)のようなものと解釈した。「フト」も広辞苑によれば、油で揚げた餅。
カナテント タカノニイタル
その怪力でハタレを鎮めようと高野に行った。
【カナテント】 「カナテ」は金属の手、すなわち、剛腕・力持ち。怪力を発揮して。
08-133 ヰツナミチ ヨロノケモノニ
ヰツナミチがたくさんの獣を
08-134 バケカカル ミカツチユケハ
操って襲ってきた。タケミカツチが行くと、
08-135 ハタレカミ ススミテイワク
ハタレの首領が進み出てきて言った。
08-136 サキフタリ ワレニカエセヨ
「先のシムミチとヰソラミチの二人をわしに返せ。
08-137 カエサスハ カミモトランゾ
返さなければ、アマテルカミといえども捕えてしまうぞ」。
08-138 ミカツチガ ワライテイワク
タケミカツチが笑って言った。
08-139 ワガチカラ ヨロニスクレテ
「我の力は誰よりも優れていて
イカツチモ ナンチモヒシグ
雷でも汝でも捻りつぶしてしまうぞ。
【イカツチ】 雷。力が強いものの例えとして言った。
08-141 ナワウケヨ ハタレイカリテ
さあ、縄を受けよ」。ハタレは怒って
08-142 タタカエハ ミカタノナクル
戦いを仕掛けてきた。ミカツチ軍の者が投げ入れた
08-143 フトマガリ ムレムサホリテ
フトマガリモチを一斉に群れて貪り食う
08-144 ハタレマオ ウチオイツメテ
ハタレ達を攻めて追い詰め
08-145 ミナククリ ツイニイツナモ
みな縄で縛り上げた。ついにイツナの首領も
08-146 ワラビナワ モモヒトツレニ
蕨縄で縛った。百人を一連ねに
08-147 ユイスヘテ ココチコモモノ
繋いで、全部で九千九百人を
ツキシバリ ヒヨドリグサノ
次々に縛った。それはまるでヒヨドリ草の
【ヒヨドリグサ】 小頭花を多数つけるヒヨドリ花のことか。花の様子が、繋がって縛られているハタレの様子を想像させたのだろうか。
08-149 ゴトクナリ ミツカラヤマニ
ようであった。タケミカツチが自ら山に
08-150 ヒキノホル ミナクヒシマリ
ハタレ達を引っ張って登って行くと、ハタレ達の多くは首がしまって
08-151 マカルモノ ヤマニウツミテ
死んでしまった。死んだ者は山に葬って
08-152 イキノコル モモササヤマニ
生き残った百人をササ山の
08-153 ツツガナス カナテカラセル
牢屋に入れた。タケミカツチが自分の怪力でハタレを死なせてしまった
08-154 アヤマチト モニツツシムオ
過ちを悔い、喪に服し謹慎していると、その様子を