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15-093 ハツヒニハ カユトシルトゾ
一月一日に、粥と汁とで祭った。
15-094 ウビチニハ ツキコトマツル
ウビチニの時代には月毎に祭ったが
15-095 オモタルノ スエニホボソト
オモタルの時代の末には穂の着きが悪く
ナルユエニ ツキヨミヤリテ
なった。後に吾はツキヨミをナカクニへ遣いに出した。
【ツキヨミヤリテ】 訳に本文にない「後に」と付けたわけ。オモタルの時代に穂の着きがわるくなったが、その時はアマテルはまだ幼少だったと考えられる。ウケモチの許へアマテルカミがツキヨミを行かせたとすると、それはオモタルの時代より時間が経っていると考えられる。
15-097 ウルソタネ エントイタレハ
ツキヨミは水稲の種籾をもらおうと思って、行って着いたところが
マルヤニテ クニニムカエハ
そこには肥溜めがあった。七代目ウケモチの元に向かうと
【マルヤニテ】 「マルヤ」は「放る(マル、大小便をする)屋。」便所でもあったのだろうが、人糞を肥料として使えるように溜めておく所、肥溜めだったのではないだろうか。人糞を肥料とすることを知らなかったツキヨミがはじめに出くわした、ツキヨミにとっては穢れた所の「マルヤ」が伏線になり、作物にその肥をかけているところを目撃し、おぞましいと思っていたところに、そこから採ってきたと思われるスズナを出され、取り乱してしまったと考えられないだろうか。
【クニニムカエハ】 「クニ」はウケモチの居所。ウケモチは代々ナカクニにいた。ここにいたのはカダの父親の7代目ウケモチ。
ツギオケノ クチヨリヨネノ
ツギオケの口から米の
【ツギオケノ クチヨリヨネノ イヰカシグ】 飯を炊いているのが分かるのだから、「ツギオケ」は、飯を炊くことができる土器の桶、すなわち土鍋のような物と解釈した。「クチ」というのは鍋の開口部。「マルヤニテ」の項でもふれたが、「マルヤ」にツキヨミはショックを受けた。多くの研究者もショックを受けたのか、「ツギオケ」を肥桶と解釈しているようである。いくら文明の十分開けていない時代でも、肥桶で飯を炊くとは考えられない。この後の「テコ」も肥桶ではなく「手籠(テコ)」と考える。
15-100 イヰカシグ ソノニムカエハ
飯を炊いているのが見えた。農地に向かうと
15-101 コヱカクル テコニイレキテ
農民が作物に肥をかけていた。手籠に入れてきたスズナで作った
15-102 ススナシル モモタクワエテ
スズナ汁をなみなみと注いで
15-103 ミアエナス ツキヨミイカリ
ウケモチが宴を開いた。ツキヨミが怒って
15-104 イヤシキノ ツハハクケガレ
『何と穢い物をたべさせるのか。つばを吐きたくなるほどの穢れだ。
カワンヤト ツルギオヌキテ
承服できるものか』と、剣を抜いて
【カワンヤ】 語義がよくわからない。「カワ」を肯ふ(カウ、承知する)として、「承服できない」とした。別の写本では「アワンヤ」となっていて、「敢わんや」とすると、「堪えられない」と訳せる。文法的には疑問も残るが、これ以外に手掛かりがつかめない。古語文法に詳しい方の助言をいただきたい。
15-106 ウチコロシ カエコトナセハ
ウケモチを殺してしまった。帰ってそのように言ったので
ヲヲンカミ ナンヂサガナシ
吾は『汝、善悪の判断が出来ないのか。
【ヲヲンカミ】 ホツマツタヱを書いたクシミカタマが敬意を以て「ヲヲンカミ」としたのであろうが、ここはアマテルカミの話の中なので「吾」とした。
【サガナシ】 「サ」は正しいこと、良いこと、清いこと。「ガ」は悪いこと、暗いこと、罪。サもガも区別がつかない。すなわち、善悪の判断ができない。
15-108 アヒミズト マツリハナレテ
顔も見たくない』と怒った。ツキヨミは、政からはずされて
15-109 ヨルキマス アメクマヤレハ
夜だけ宮に登ることになった。吾はアメクマドを遣わしたが、
15-110 スデニサリ カダガウルソノ
ウケモチは既に亡くなっていた。それでもカダは水稲の
15-111 タネササグ クマドカエレハ
種籾を吾に差し出した。アメクマドが持って帰り
ヲサガタニ ウユルソノアキ
その種籾をオサ(長)がそれぞれの田に植えさせると、その秋には
【ヲサガタニ ウユル】 領地の中の田は、それぞれヲサ(長)が束ねていたのであろうか。そう考えると、領地内のすべての田にその種籾を蒔いたと考えられる。
ヤツカホノ ナレバクニトミ
立派な穂が実り、国は豊かになり、
【ヤツカホ】 「ツカ」(束)は上代の長さの単位。4本の指で握った幅。「ヤツカホ」は8束の穂。立派な穂。
15-114 ココロヨク マタマユフクミ
人々は楽しく過ごせるようになった。また、繭から
イトヌキテ コカヰノミチモ
糸を紡ぐという養蚕の方法も
【コカヰノミチ】 厳密に言うと、糸を紡ぐ「紡糸」と「コカヰ」(養蚕)とは別だが、この時代そのような分業はされていず、蚕を育てることから糸を紡ぐまでが「コカヰ」だったのだろう。
15-116 ヲシユレハ カダノミコトハ
教えたので、カダ命は
15-117 ヨヨノタミ タモリツカサゾ
それ以来ずっと民に『田守り司』と崇められたのである。
15-118 モロタミモ ヨクキケツネノ
民達もよく聞くがよい。普段の
15-119 クイモノハ ソロハサイワヒ
食べ物は、田畑の作物が大変よろしい。
15-120 ウロコイオ ツギナリトリハ
鱗の付いている魚はその次である。鳥は
15-121 ホガカチテ ホトントマカル
ホの元素が勝っているので、食べていると、早死にすることが多い。
15-122 トモシビノ カキタテアブラ
灯火の灯心をたくさん出して燃やすと
15-123 ヘルゴトク ホカチイノチノ
油が早く減るように、ホが勝っていると命の
アブラヘル アヤマリミテノ
油が減るのである。間違えて三音の
【ミテ】 「テ」はヲシテ、文字だが、民にも話しているので、3音とか3声と訳した方がよいと思う。
15-125 シシハメバ シシコリチチミ
獣肉を食べれば、身体が固まって縮んだり、
15-126 ソラコエテ ミノアブラヘリ
ぶよぶよと太ったりして、体の生命力がなくなり、
15-127 ケモカレテ ヤガテマカルゾ
気力が衰えて、やがて死んでしまうのだ。
15-128 フツキナカ ススシロクエヨ
獣肉を食べたら二ヶ月半、スズシロを食べよ。
15-129 フテシシハ クエバイキテモ
二音の獣肉を食べると、生きていられても
15-130 クサリクサ カミトナカタヱ
腐った臭がして、神に見放されてしまう。
イミコヤニ ミトセススシロ
その時は、身を清め慎む小屋で、三年間スズシロと
【イミコヤ】 「イミ」は忌、斎。穢れを避けて慎む小屋。
シラヒゲモ ハシカミハミテ
白鬚草と生姜を食べて
【シラヒゲ】 ユキノシタ科の多年草の白鬚草か。
15-133 アカソソゲ ヤヤヒトトナル
身を清めよ。そうすればどうにか元の人の体に戻れるだろう。
15-134 スワノカミ シナノハサムク
諏訪の臣が、信濃は寒くて
15-135 トリシシニ サムサシノグト
鳥の肉で寒さをしのぎたいと、
15-136 コフユエニ ナオアラタメテ
願い出たので、以前の教えを改めた。
アイモノノ ウオハヨソアリ
『食べてもよい干物や塩漬けの魚は四十種類あるが
【アイモノ】 相物、間物。塩で処理した魚・干魚の総称。
15-138 コレモミカ ススナニケセヨ
これも食べたら三日間スズナを食べて穢れを消すこと。
15-139 ミヅトリオ クヘバフソヒカ
水鳥を食べれば二十一日間
15-140 ススナヱヨ ヨノトリケモノ
スズナを食べること。』と、世の中にある鳥や獣を