【フクシユフ】
「フクシ」は本文306前後に書かれた文脈から「皮膚」とした。皮膚が「結う」すなわち「つなぐ」とは、いろいろな感覚・感情を皮膚が手足に伝えているというような考え方だったと解釈した。
【ヨクラ】
4つのクラ。ここではナカゴ、キモ、ムラト、ココロバ。
「クラ」に関連する記述はこの部分以外にも次の六か所に出てくる。
(1)1綾本文019「ヰクラムワタヲ」
(2)14綾本文064「アナレクラワタ」
(3)14綾本文097「フツキクラムラ ハヅキワタ」
(4)16綾本文102「ヰイロハニ コレクラワタト」
(5)17綾本文303「ヰワタムクラモ」
(6)17綾本文306「ムラトハナラス ワタソエテ」
多くが「クラ」と「ワタ」がセットになっている。池田満著「ホツマ辞典」によれば、「イクラのクラは目に見えないものを意味し、ムワタのワタは人体の内臓器を指す」とある。「目に見えないクラ」とは何か。この綾には「ヨクラ」(四クラ)と「ムクラ」(六クラ)が出てくる。ここに「クラ」とは何かを解くカギがある。ここに書かれている「クラ」と考えられるものは、ナカゴ、キモ、ムラト、ココロバの4つで「ヨクラ」となる。一綾でフクシも入って「ヰクラ」(五クラ)となり、そのフクシはヨコシも包み込んでいるとあるので、ヨコシも加えて「クラ」の数が六となり「ムクラ」なのではないか。さて、これらの「クラ」に共通するものが「クラ」の訳語となるとすると、心情や感情、感覚を受け止めたり表わしたりする働きを持っている点で共通していると言えないだろうか。喜ぶのも悲しむのも「ナカゴ」、心配したり期待したりするとドキドキするのは「キモ」、感情があらわになるのが「ムラト」、暑さ寒さを感じるのも冷や汗をかくのも「フクシ」、優しいのも冷たいのも「ココロバ」、悪いことをしたり緊張したりすると震えるのは「ヨコシ」。こんな風に考えてみた。
また、「ワタ」は「ムワタ」(六ワタ)と「ヰワタ」(五ワタ)とあるが、前後のつながりから訳語を考えると、「はらわた」や「魚のわた」など現代でも使われているように、内臓器と考えて間違いないと思う。この時代に認識できた内臓器は、胃、腸、肺以外に何であったか私は特定できない。肝臓や脾臓、すい臓などという説もあるが、例えば、今日でこそ、人体の化学工場とか沈黙の臓器と言われる肝臓が血液を作り出していることが知られているが、この時代にそれらが認識されていたのであろうか。