先頭の番号が青い行は、クリックすると解釈ノートが見られます。
対訳ページの使い方の詳細はこちらのページをご覧ください。
20-108 イカルカノ ミネヨリトリノ
斑鳩に着いた。斑鳩の山の峰より鳥が
20-109 シラニハニ アマノイワフネ
白庭山に飛んでいった。天のイワ船も
20-110 オホソラオ カケリメクリテ
大空を駆け巡るようにして着いたので
20-111 コノサトノ ナオモソラミツ
この里を「空見つ
20-112 ヤマトクニ ミヤツヤナリテ
ヤマト国」と名付けた。宮の建物ができたので
ソフノカミ スガタガムスメ
ソフの守のスガタの娘を
【ソフノカミ】 この地に「ソフ」という場所があった。現在の奈良市月ヶ瀬村は近年まで「添上郡」であった。古くは「曾布」あるいは「層富(ソホ)」という地名であったが「添(ソフ)」の字があてられ、添上郡・添下郡となったということである。
20-114 ミキサキニ ナシテウタヨミ
妃にし、歌を詠んで
20-115 カダカキノ コトオタノシム
カダカキの琴を弾いて楽しんだ。
20-116 イカルガノ ミヤニウツリテ
斑鳩の宮に移った
20-117 ソノアスカ ウテナニヨモオ
翌日、高殿に上って四方を
20-118 ノソムオリ シラニハヤマニ
眺めた時、白庭山の方に
20-119 カラストフ クマノトオモヒ
カラスが飛んで行った。ホノアカリはそこを熊野だと思い
20-120 ミヤウツシ トキニコヤネハ
宮を遷すことにした。そこでアマノコヤネは
20-121 ハヤカレト オホモノヌシモ 
「早過ぎます」と言い、大物主も
20-122 トトメケル フトダマガイフ
止めた。フトダマが言った。
20-123 カガナエテ キミノオボスオ
「二人は、よく考えて君のお考えになったことを
20-124 トトメンヤ カグヤマモイフ
お止めになるのか」。カグヤマも言った。
20-125 クマノナル アスカウツセハ
「君が熊野と思われている飛鳥に宮を移すのは
20-126 ヨキタメシ スデニキワマル
良いことではないか。すでに君は決められているのだ」。
20-127 モノヌシハ イカリテイワク
大物主は憤慨して言った。
20-128 フトダマハ キミノトノオヂ
「フトダマは君の母方の叔父であり、
20-129 トミヲキナ キナフヨロトシ
左の臣でもある長老ではありませんか。昨日、末永くこの宮が栄えるようにと
20-130 キミイワヒ ケフマタカワル
君が祝ったばかりなのに、今日また心変わりして
20-131 ミヤウツシ ヨロチハトオシ
宮遷しをするのですか。万年、千年なら長いけれど、
20-132 ヒトトセモ ヘザルオセメバ
一年も経たないのに宮遷しをすることを諌めなければ
20-133 ヨノハヂハ ナンチノココロ
世の恥です。汝の心の
20-134 ケカレヨリ キミアヤカラバ
穢れによって、君の立場が危うくなるならば、
20-135 ワレオラス アカネホノホニ
我はここにいるわけにはいきません。真っ赤な炎で
20-136 ツミストモ マロカネハメド
刑を受けようとも、鉄の玉を咬まされようとも
20-137 ケガレヱズ カクイイカエル
この穢れは甘受できるものではない」と言い放って帰っていった。
20-138 モロハカリ ツヒニウツシテ
しかし、諸臣が話し合い、ついに宮遷しをしてしまった。
20-139 アスカガワ クルワニホリテ
そして、君は飛鳥川を宮の周りに引いて
20-140 ミソギナスカナ      
禊ぎをしたのである。