先頭の番号が青い行は、クリックすると解釈ノートが見られます。
対訳ページの使い方の詳細はこちらのページをご覧ください。
アノメツケ コレアタイラゾ
宮の目付は直(アタイ)達がする。
【アノメツケ コレアタイラゾ】 「メツケ」は室町幕府以降、非違を検察し、主君に報告した監察官とされるが、その原形はすでにこの時代にあった。大辞林に「アタイ」は「直」。「古代の姓の一つで、国造に与えられた」とある。
23-198 モノノベオ ヤモリツカヌル
物部を八百人束ねる
23-199 ヌシハコレ オオモノヌシヤ
主は大物主である。
23-200 ソエムラジ コトシロヌシト
補佐役の連と事代主とに
23-201 タスケシム ソエノフタリハ
補佐をさせる。補佐の二人は
ヘトカサリ オオモノヌシハ
綜絖のヘとカザリで大物主は
【ヘトカサリ】 解釈ノート128で書いたことから、2種類の綜絖で模様を作るように、二人が世の中の秩序を保つ大事な役割だということ。
23-203 ハタノヌシ カレサガオヨム
機の主に例えられる。それにより、正邪を判断するのである。
ソノガマテ アレハアレオサ
十ガ程度の罪であれば村長は
【ソノガマデ】 7綾本文163では「ガ」は「罪」で、刑罰の程度は「クラ」。ここでは刑罰の程度も「ガ」となっている。この他にも見受けられるが、ホツマツタヱの表現は時代が進むにつれて変化している。「ガ」の意味に該当する漢字がないので「ガ」のままとする。
23-205 クミオヨビ ソウチハシカル
組の者を呼び、十ガ以内なら叱責とする。
23-206 ソノソトハ アガタニツゲル
十ガを越える場合は県主に訴える。
23-207 アガタヌシ コソウチハツエ
県主は九十ガ以内であれば杖打ちの罰を与える。
23-208 ケタノガハ ガトヤニイレテ
九十ガ以上の罪は牢屋に入れ
23-209 クニツコニ ツクレハハカリ
国造(宮の目付け)に訴える。宮の目付けが調べ、
ケタノガハ ツエウチアガタ
九十ガなら杖打ちのうえ県の外に
【ケタノガ】 「ケタ」は四角いさま。ここでは四半分。罪の程度を1年の日数の365としたことは本文098に出てきたが、区切り方を見ると、それを円に描いて見ていたようである。そうすると概ね四分の一は91、二分の一は182、四分の三は273となる。しかし最小単位を十ガとしているので端数は省いて考えてもよいだろう。
23-211 オイヤラヒ フタケタナラハ
追い払う。百八十ガになれば
23-212 クニオサル アマレハツケル
国から追放する。百八十ガ以上になると大物主に知らせ、
23-213 モノヌシノ タタシアカシテ
大物主が糺して罪を明らかにし、
23-214 フモノガハ シマニサスラス
二百ガになったら島流しにする。
23-215 ミケタガハ カミツメヌキテ
二百七十ガになると髪の毛と爪を抜いて
23-216 イレスミシ アメニワタレハ
入れ墨をする。ガの巡りを一回り(三百六十五ガ)すれば
23-217 ミオカラス マカルノツミハ
死罪にする。人を殺す刑罰は
23-218 モノヌシノ ミコトオウケヨ
大物主の判断を受けよ。
23-219 モノノベラ シカトキケコレ
物部等よ、しかと聞け。
23-220 ワガママニ タミオキルナヨ
おのれの判断のみで民を斬ってはならぬぞ。
23-221 タミハミナ ナオワガマゴゾ
民はみな、それでも吾の孫同然なのである。
23-222 ソノタミオ マモリヲサムル
その民を守り、国を治める
クニカミハ コレナオワガコ
クニカミは、やはり我が子同然である。
【クニカミ】 クニの中に複数ある県の県主を総称してクニカミと呼んだと考える。
23-224 クニカミハ タミノタラチネ
であるからクニカミは民の父母なのである。
23-225 ソノタミハ クニカミノコゾ
その民は、クニカミの子どもということになるのだ。
23-226 ワガコデモ ヲヤガキルナヨ
たとえ我が子でも、親が子どもを斬ってはならぬ。
ワガコサス ツミモヤソクラ
我が子を傷つける罪は百八十クラ、
【ワガコサス】 「サス」は「刺す」と読めるが、傷つけることとした。
【ツミモヤソクラ】 この綾では刑罰の程度は「ガ」なのだが、ここだけ従前の「クラ」となっている。おそらく音数の関係で「クラ」としたのだろう。
23-228 ママコサス ツミフモナソガ
養子を傷つける罪は二百七十クラ、
23-229 イモイサス ツミフモナソガ
妻を傷つける罪は二百七十クラ、
ウマヅメハ ヨソメゾアニモ
子を産まぬ妻は、他人の女として扱う。夫との間に子がいてもいなくても
【ウマヅメハ ヨソメゾ】 この文は、前行の「イモイサス ツミフモナソガ」の続きで、「妻を殺す罪は270ガだが、子どもを産んでいない妻は他人の女として扱うので、罪は270ガではない」ということと解釈した。ここでの刑罰についてはすべて親族間のことなので、この場合は他の基準で裁くということか。
【アニモ セモカラス】 「アニ」はすぐ後に説明されているように、子どもがいる夫をいい、いない場合は「セ」と呼んだ。このような区別は今日では考えられない基準である。
23-231 セモカラス トガミモムソガ
夫を殺す罪は三百六十ガ、
23-232 ウマザルハ ヨソウメハアニ
妻に子がいない夫はヨソ(他人の男)といい、子がいればアニ(夫)という。
23-233 タラチウツ トガミモムソガ
父母を殺す罪は三百六十ガ
23-234 ママヲヤオ ウツトガヨモガ
義父母を殺す罪は四百ガである。
23-235 アメノリオ タミヒトクミガ
世の規範を民の一組(五軒)が
23-236 ミタレテモ ヲサメクラネバ
乱しても、筬で横糸を揃えられず
23-237 ハタオレス カレオサムルハ
機が織れなくなるように世の秩序が保てなくなる。それ故に世を治める則は
23-238 ハタノミチカナ      
『機織の則』そのものなのである」。
23-239 トキニマタ オオモノヌシガ
するとまた、大物主が
23-240 モウサクハ ムカシミタレズ
聞いた。「昔は世の中が乱れていなかったし
23-241 オコラヌハ アラコオキテハ
人々は奢った暮しをしていなかったのに、無法者への罰則は
23-242 イツクンゾ キミエミイワク
どうしてできたのですか」。するとアマテルカミは笑みを浮かべて答えた。
23-243 ナンヂモト タタチオモエト
「汝は元々単純に考えるが、
23-244 ノチノヨニ イヤヲサマレハ
今後、大変世の中が治まって
23-245 ウヱシラデ オゴルタノシノ
飢えを知らず、奢った暮しを楽しむ風潮が
ミツルトキ ウヱトシゴロハ
世に蔓延したとすると、不作の年には
【ウヱトシゴロハ】 「ウヱトシ」を飢える年と解釈し、「不作の年」とした。
23-247 ミノラズテ マコトニウヱル
稲が実らず、真に飢えてしまうのだ。
23-248 コレカネテ サタムルハノリ
このことから、予め定めてある『衣の則』に