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トミコトミ オゴリシノビテ
臣や小臣は奢る心を抑えて
【コトミ】 「小臣」という役職があったかどうかは定かでないが、下級の役人のことではないか。
23-306 ミチマモレ ワカミノタメノ
政の道を守れよ。我が身のための
23-307 ヤヱカキハコレ      
八重垣の剣でもあるのだ」。
23-308 トキニマタ オオモノヌシガ
すると続けて、大物主が
23-309 モウサクハ ハタレヤフルノ
聞いた。「ハタレを退治した時の
23-310 ナオモガナ トエハアマテル
お話をもう少しお聞かせください」と聞くと、アマテルカミが
23-311 ミコトノリ ハタレガワザハ
話された。「ハタレの戦法で
23-312 チカツケズ ユミヤニヤフリ
近づけなかったとき、弓矢で攻撃して
23-313 チカツケバ タチウチハラフ
近づき、相手の太刀を振り払い
23-314 ミノカキゾ マタトフヤタミ
味方を守ったのが八重垣の剣である」また大物主が聞いた。「君は国中の民を
23-315 オサムレバ ヤタナハイカン
治めておられますので、『八咫の剣』という名前にしてはどうでしょうか」。
23-316 ミコトノリ カガミハタミノ
アマテルカミが言われた。「鏡は八民の
23-317 ココロイル イレモノナレバ
心を入れる入れ物だから
23-318 ヤタカガミ ツルギハアダオ
八咫鏡と言うが、剣は悪い者を
23-319 チカヅケズ マタトウカキノ
近づけないので、八咫とは付けられないのだ」。また聞いた。「八重垣の
23-320 ヤヱイカン キミニコヱミテ
八重とはどういう意味ですか」。君はにっこりして
23-321 ノタマフハ イシクモコエリ
答えられた。「よくぞ聞いてくれた。
23-322 ソレヤヱハ ムカシフタカミ
その八重というのは、次のようないわれがあるのだ。昔、二尊が
23-323 クニシラス モノイフミチノ
国を治めていた時、民に言葉について教えられた。
23-324 アワウタノ アハアメトチチ
アワ歌の『ア』は天と父、
ワハハハゾ ヤハワガミナリ
『ワ』は母、『ヤ』は我が身のことである。
【ヤハワガミナリ】 「ヤ」は、父と母の関連で考えると、「ヤヤ」(児、稚児)の短縮で、ややこ、赤ん坊のことと考える。誰もが父母の子どもなので、教えを受けている人自身のことだということか。
コノアワヤ ノドヨリヒヒク
この『ア・ワ・ヤ』は声で思いが人に伝わるようにするための
【ノドヨリヒヒク ハニノコエ】 「ノドヨリ」を「声に出して」、「ヒビク」を「人に伝わること」と解釈した。「ハニノコエ」は「地上の声」すなわち「地上の人々の言葉」とした。
23-327 ハニノコエ クニオシラスル
人々の言葉なのである。それは国を治めるための
タネナレバ アワハアワクニ
基になったので、アワ歌を教えた所を『アワ国』と呼んだ。
【アワハアワクニ】 5綾本文008以降に、社会を形作るための基礎となる人々の言葉を伝わりやすくするため二尊がアワ歌を教え、そこがアワ国になったことが書かれている。
23-329 ヤハヤモノ アオヒトクサノ
また『ヤ』は国中の民を
23-330 ナモヤタミ ヤハイエヰナリ
表わす『八民』のことでもある。『ヤ』は家のことも意味する。
23-331 タハヲサム ミハワガミナリ
『タ』は治めることを、『ミ』は我が身のことを意味する。
23-332 アワクニノ ヤニイテヤシマ
二尊がアワ国の宮で八州を
23-333 シラスレバ ヤハヤツナラス
治めたが、『ヤ』は単に『八』ではなく
モモチヨロ カサヌルフシノ
とても多いということである。このように色々な意味を持っている
【カサヌルフシ】 「フシ」は注目すべき点。「意味」は意訳。
23-335 ヤエカキゾ トキニモノヌシ
八重垣の『八重』という言葉なのである」。すると、大物主が
ヱミイワク ムカシモノヌシ
顔をほころばせて言った。「昔、大物主の役を
【ムカシモノヌシ タマワリテ…】 大物主は右の臣(剣の臣)に任じられ、八重垣の剣を預けられた。ソサノヲの子に始まる大物主系は八重垣の剣を受け継ぎ、24綾本文055と059に大物主が「ツルギオミ」「カキオミ」と呼ばれていることから「八重垣の臣」とも言われたと考える。その「八重垣」という言葉の深い意味が分からなかった。
23-337 タマワリテ フカクオモエド
賜ったとき、よくよく考えても
23-338 マダトケズ イマヤフヤクニ
まだ理解できませんでしたが、今ようやく
23-339 コレオシル コレヤヱカキハ
理解できました。この八重垣という名前は
23-340 モノノヘノ ナナリトオノガ
物部にふさわしい名前だと、
ヲニコタユ テレバスヘラノ
我が心の奥深く感じ入りました。ですからスヘラギの
【ヲニコタユ】 「ヲ」は「タマ・シイ・ヲ」の「ヲ」。ここでは「命」ということから意訳した。
23-342 ヨヨノカキ オノガヲナリト
末々までお守りする垣であることを自分の天命とします」と
23-343 チカイナス マタミコトノリ
誓った。するとまたアマテルカミが言われた。
23-344 ムベナルヤ クシヒコナンチ
「なるほど。クシヒコ、汝は
23-345 ミマコヨリ ヲコヌシカミト
ニニキネよりヲコヌシカミという名を
23-346 タマフナモ マタタラスワレ
賜ったけれど、まだ足りない。吾が
23-347 フタカミノ タマフサカホコ
二尊から賜った逆矛を、
23-348 サイワヒニ ソノキオヱレバ
幸いなことにその機会を得たので
23-349 ユツルナリ ウマレスナオニ
汝に譲ろう。生まれついての真っ直ぐな性格は
23-350 ヤマトチノ ヲシヱニカナフ
ヤマトの道の教えに適っている。
スヘラギノ ヤヱカキノヲキ
汝はスヘラギの八重垣の砦である。
【ヲキ】 広辞苑に『「堡」(「小城」の意)土や石で造った防御のための城塞』とある。
23-352 タマフナモ ヤマトヲヲコノ
授ける褒め名はヤマトヲヲコノ
23-353 ミタマカミ トキニクシヒコ
ミタマカミとする」。するとクシヒコは
23-354 オソレフシ シバシコタエズ
恐れ伏して、しばしの間応えることができなかった。
23-355 モノノヘラ サウケタマエト
物部たちは「どうぞお受けください」と
23-356 ススムレト マタウナタルオ
勧めたが、まだクシヒコがうなだれているので、