対訳26 | 朝倉未魁の超訳ホツマツタヱ

ホツマツタヱ全行現代語対訳

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26-000

卯萱、葵桂の綾

26-001

三十六スズ三十四枝三十八穂、

26-002

三月望の日、ワケイカツチの

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天君ニニキネは諸臣を集めて

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詔を下された。「以前、新治の

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宮を建てた後、水田を拓くために、

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ハラミ山に宮を遷して長い間

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民を治めてきた。甲斐あってシワカミ

【シワカミホツマ】君を中心とした優れた国。

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ホツマとなった。アマテルカミから君の位を

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受け継いで、ワケイカツチノ

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カミとなってから長い間

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国を治めてきたが、だいぶ歳をとったので

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君の位を、この度ウツキネ(ホオデミ)に

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譲ろうと思う」。そのことを伝える勅使がホオデミの元に来た。

26-014

三十二人の県主がホオデミを慕い、別れを惜しんだが

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ニニキネの詔は既に下されているので、

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君の世が長く続くようにと祝いをした後に

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帰られるよう願った。シガがどの船がよいかと聞くと

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鰐船の船長が「大亀船では

【ワニ】あるいは「ワニ」という人名か。

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一か月以上かかるでしょう。鴨船なら一カ月、

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大鰐船なら、より早く着きます」と言うと

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ホオデミが言われた。「父がお呼びの時は

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かなり急ぎのことだ。我は大鰐船で行くが

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姫は鴨船で後から送って欲しい」

26-024

大鰐船を志賀の浦から

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船出させ、船を急がせ

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北の津に着き、イササワケの宮から

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ミヅホの宮まで帰られたので

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ニニキネも臣達も喜んだ。

26-029

これ以前に、トヨタマ姫は身籠っていて

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既に産み月になっていた。故に後から

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鴨船で北の津に行くことにした。

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「私のために産屋を造って

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待っていてください」とトヨタマ姫が言ったので、松原に

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産屋を建てた。屋根が葺き終わらないうちに

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鴨船が着き、急いで産屋に入って

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皇子をお産みになった。カツテは皇子を取り上げ

【カツテハイスモ　ミユモアゲ】「カツテ」は産婆ならぬ産爺(取り上げ爺)とでも言ったらよいのだろうか。14綾本文172と184に、カダキヤスヒコが赤子を取り上げる仕事をすることで、カツテカミという称号を受けたことが書かれている。「イス」については、今日でも「出産椅子」という「イス」が使われることはあるようだが、広辞苑によれば、奈良時代以前は胡坐(ｱｸﾞﾗ)と呼ばれていたようである。それが「倚子(イシ)と呼ばれ、椅子(イス)となったようである(大言海)。この時代に古語辞典にもない「椅子」という用語があったかは疑問。文脈から考えると「イス」は、高貴な人に出産させるという意味で「斎(イ)為(ス)」と表現したか、「出だす」の省略形の「イス」かと考え、「取り上げ」と訳したが、正確な語義は不明。「ミユ」は産湯。

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産湯もつかわせた。ウガヤの湯殿には

【ウガヤノユトハ】「ウガヤ」は卯と萱。卯(空木)はユキノシタ科の落葉低木。初夏に白い花をつける。幹は中空だが材は極めて固い。これを屋根の骨組みとし、萱を葺いたのではないだろうか。また、枝葉、種子には解熱、解毒作用があるという。時期的に、屋根材とした空木の若い株には花が咲いていたであろう。解毒の効能の意味合いで用いたのか、単にその花を飾ったのか、「ユトノ」(湯殿)に卯の花があったのではないか。

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卯の白い花が明るく咲いていた。

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卯の実は鵜の目といい、またアマカツラともいう。

【コハウノメ】通常、実を「コ」とは言わないが、「ウノメ(鵜の目)」は緑色をしており、卯(空木)の実も丸く完熟しても暗緑色をしているという共通点から空木の実ではないかと考えた。
【アマカツラ】語義不明。この行はただの卯の実の説明にしか過ぎないのか、この後の皇子の病気の薬のことなのか分からない。この３行後に「ミユススメ」とあるので、この二つを関連付けて「アマカツラ」という解熱・解毒薬、「ミユ」はそれを煎じた湯とも考えたが、スセリが、自分がかつて罹った病気を治すために送った「御湯」はスセリ草の煎じ薬と考えるのが妥当であろう。

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