ホツマツタヱ 全行現代語対訳

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26-053

桑の弓を、蟇目のハハ矢で打ち鳴らした。

【ハハヤヒキメゾ】 「ハハヤ」大きな矢。「ヒキメ」は蟇目または引き目と書き、鏑矢のこと。

26-054

アマノコヤネは諱を考え、

26-055

「カモヒト」という諱を奉った。母のトヨタマ姫より「ナギサ

26-056

タケ、ウガヤフキアワセズ」という

26-057

名を授けられた。そのわけは、暗礁で

【チクラ】 「クラ」は「座」として、物を乗せる台の意味があり、文脈から海中の岩、暗礁であろう。

26-058

鴨船が壊れ、トヨタマ姫も弟のタケズミも

26-059

ホタカミも海に落ち

26-060

溺れそうになったが、トヨタマ姫は気丈に

26-061

泳いで、竜やミツチの

【タツヤミツチノ　チカラエテ】 「ミツチ」は水中にすむという想像上の動物。「チカラエテ」をそのまま訳すと「力を得て」すなわち、「タツやミツチに助けられて」となるが、「タケキココロニオヨガセバ」との状況を考えると「チカラエデ」(力を得ないで)とした方がよいのではないか。

26-062

力も借りず無事に波を越えて

26-063

磯に着いたことによる。それから釣り船で

26-064

ミホ崎へ行き、そこで鰐船に乗り、北の津に

26-065

着いたのも、お腹の皇子のことを思ったからであった。

26-066

ナギサタケという名には、母、トヨタマ姫の愛情が

26-067

よく表れている。ホオデミが松原に

26-068

やってきて、産屋を覗くと

【ススミキテ】 ホオデミが松原に進んできた。ホオデミはニニキネのいる瑞穂の宮にいて、姫のことが気になってわざわざ北の津の松原まで来たのだろう。姫は遠くにいるホオデミがまさか来るとは思わず気が緩んでいたのだろうか。

26-069

トヨタマ姫は腹這いになり、しどけない姿で寝ていた。

26-070

ホオデミが戸を閉める音でトヨタマ姫は目を覚ました。

【トボソ】 戸、扉。

26-071

「ああ、恥ずかしい姿を見られてしまった」と弟のタケスミと、

26-072

六月の禊ぎをした後、

26-073

産屋を出てヲニフに行った。

【ヲニフ】 奈良時代にオニフとも読める「遠敷」(ｵﾆｭｳ)郡が福井県にあったが、そこだろうか。

26-074

皇子を抱き、顔や手を撫でて

26-075

「そなたの母は今、恥をかいたので里に帰ります。

26-076

またそなたに会う日が来ますように」と皇子を置いて

26-077

朽木川を上り、山を越え

26-078

ようやく三日目にワケツチ山の尾根の

【ワケツチノネノ　ミヅハメ】 ミヅハメの社(貴船神社)があることから「ワケツチ」は今の貴船山。

26-079

ミツハメの社に着いた。

26-080

ヲニフのホタカミがこの出来事を瑞穂の宮に知らせると

26-081

ホオデミは驚いて、ホタカミを

26-082

トヨタマ姫が思いとどまるようにと行かせた。使者のホタカミは

26-083

トヨタマ姫の後を大急ぎで追って

26-084

朽木谷から西へ、そして南へ

26-085

山を越えて、ミツハメの宮で

【ミツハノミヤ】 本文079に「ミヅハメノヤシロ」、27本文095に「ミヅハミヤ」と、少しずつ表記が違って書かれているが同じもの。この時代はまだ表記の仕方が一定していない。「」のように濁点がオシテの外に打たれているのは後世書き足したのではないかとも言われている。

26-086

トヨタマ姫に追いついた。宮に戻るように願っても姫は帰ろうとしないので

26-087

タケズミに、ここに留まるように言い含めて

26-088

ホタカミは急いで帰った。報告すると

26-089

ホオデミは使者を飛ばして筑紫に知らせた。

26-090

トヨタマ姫の父のハデスミと妹のオトタマ姫とが

26-091

鰐船で西宮から

26-092

山背のミツハメの宮に着き、姫を説得した。

26-093

姫は「今はもう宮を降りたので、二度と宮には上りません。

26-094

オトタマ姫を私の代わりにしてください」と言ったので

26-095

ハデスミとオトタマ姫と二人で宮に上り申し上げると

26-096

ホオデミは妹のオトタマ姫も召した。ニニキネは君の位を

26-097

ホオデミに譲られて

26-098

太上君となって、シノ宮に住まわれた。

【オオヱキミ】 譲位後の天皇の称号「太上皇」

26-099

瑞穂の宮では新治の宮のしきたりで

26-100

ユキスキの祭りの

26-101

大嘗祭を行った。三種の神宝を受け継いだことを

26-102

天の神に知らせ、民の

26-103

安らかな生活が続くように、八幡を立て