先頭の番号が青い行は、クリックすると解釈ノートが見られます。
対訳ページの使い方の詳細はこちらのページをご覧ください。
26-104 ハナカサリ アスヨリタミニ
花飾りをして祈った。翌日、多くの民に
26-105 オガマシム シバシバメセド
拝謁させた。ホオデミが、姫が戻るように度々遣いを出しても、
26-106 トヨタマハ ミヅヤオイテズ
トヨタマ姫はミツハメの宮を出なかった。
26-107 アクルトシ オオヱスベラキ
翌年、太上君となったニニキネが
26-108 ワケツチノ アオイカツラオ
ワケツチ山の葵の葉と桂の葉を
26-109 ソデニカケ ミヤニイタレバ
袖に掛けてミツハメの宮に行くと
26-110 ヒメムカフ トキニハオモチ
トヨタマ姫が迎えに出た。そこでニニキネは持ってきた葉を見せて
26-111 コレイカン トヨタマコタエ
「これは何であるか」と聞いた。トヨタマ姫は
26-112 アオヒハゾ マタコレイカン
「葵の葉です」と答えた。するとまた「これは何か」。
26-113 カツラバゾ イツレカクルヤ
「桂の葉です」。「どちらが枯れているか」。
マダカケズ ナンヂヨオステ
「いえ、まだ枯れてはいません」。「それなのに汝は世を捨てている。
【ナンヂヨオステ ミチカクヤ】 本文198にあるように、ホオデミは桂、トヨタマ姫は葵がお印だったのではないか。ニニキネは葵と桂を夫婦に例えて見せたのだろう。どちらも「カケ」ていない、すなわち、どちらかが死んだのでもないのに、「カクル」(隠れる、隠遁する)のは、夫婦の道を欠(カク)のではないか。
26-115 ミチカクヤ ヒメハオソレテ
夫婦の道を欠いていると思わぬか」それを聞いてトヨタマ姫は恐れ入って
26-116 カカネトモ ナギサニオヨグ
「夫婦の道を欠くつもりはないのですが、海で泳いだことを
26-117 アザケリニ ハラバヒノハヂ
嘲られ、はたまた産屋で腹這いのはしたない姿を見られ、
26-118 カサヌミハ アニノホランヤ
このように恥を重ねた身でどうして宮に上ることができましょうか」
26-119 コレハヂニ ニテハヂナラズ
「そのことは恥のようだが恥ではない。
26-120 シカトキケ コオウムノチハ
しかと聞け。子どもを産んだ後は
26-121 チナミタツ ナソヰカニタス
夫との交わりはせず、七十五日間は養生しなければならない。
26-122 ツツシマザ サラタチタセス
その慎みをしないと、その後慎んでも回復できないと
26-123 カツテカミ カネテモフスオ
カツテが予て言っていたぞ。
26-124 ノゾクハヂ ナンヂニアラズ
夫が産屋を覗くことが恥で、汝の恥ではない。
26-125 タツノコハ チホウミニスミ
龍の子は千年の間海に住んで、
タツタシル チホヤマニスミ
海を自在に操る術を悟る。千年の間山に住んで
【タツタシル】 「タツタ」「タツフル」「ツクハナル」は語義に沿った訳が大変難しい。誤訳の可能性も高いが、全行対訳をするため、世に語られる龍についての話に合わせて訳した。「タツタ」は「龍が(海を)治(タ)す」と解釈して訳してみた。「シル」は術を学ぶこととした。
タツフルト チホサトニスミ
龍として長く生きる術を悟る。千年の間人里に住み
【タツフルト】 龍は寿命が長いので「フル」は年を経ることとした。
ツクハナル ミイキサトリテ
人とのよい関わりを持つ術を悟る。この三つの生きる術を悟って
【ツクハナル】 「ツクハ」に適当な訳がなく、「ツク、ハナル」と読んで、人里に住んで学ぶことは、人との関わりとした。
【ミイキ】 「イキ」を「生き」すなわち「生きる術」とした。「ハイキ」「アイキ」「ヒトイキ」の三つの生きる術。
26-129 キミトナル ナンヂナギサニ
龍君となれるのだ。汝は海で
26-130 オチントス ミタネオモエバ
溺れかけたが、生まれてくる皇子を思って
26-131 タケココロ ナシテオヨギテ
気丈に泳いで
ナガラフル コレハイキシル
このように生きている。これで地の上で生きる術を悟ったことになる
【ハイキシル】 「ハ」は「地、大地」。溺れかけた海より、命がけで得た地の上で生きる術。
26-133 ミヤニタチ フリテアザケリ
宮に立って、みなと触れ合えば嘲りから
マヌカルル コレアイキシル
免れる。これで、宮で生きる術を悟ったことになる。
【アイキシル】 「ア」は「天、宮」。この場合は宮。
26-135 イマヒトツ アオヒカツラノ
もう一つ、葵桂の例えのように
26-136 イセオヱバ ヒトイキサトル
伊勢の道を全うすれば、人としての生きる術を悟ったことになる。
26-137 ミツシレバ タツキミコトク
この三つを知れば、龍君のように
26-138 カミトナル タツギミイカン
立派な人になれるのだ」。「龍君とはいかなるものでしょうか」。
26-139 タツハヒレ ミツシルユエニ
「龍は領巾(ひれ)のような長い生き物である。水を御することができるので
ウロコキミ カンツミオニオ
鱗君とも言われている。このカンツミオニのように
【カンツミオニ】 ここでいう「オニ」は「荒ぶる神」、龍のこと。その「荒ぶる神」も「三つの術」を身に着けることにより「高い神格を得た神」となる。
26-141 ミツシレバ ヒトハカミナリ
三つの術を身につけることにより、人は神となるのだ」とニニキネが話すと
26-142 ヒメハハヂ オチイリイワズ
トヨタマ姫は恥じ入り、何も言えなかった。
26-143 ミホツヒメ ミユキオクリテ
ミホツ姫はニニキネの行幸に着いてきて
26-144 ココニアリ トエバヨロコビ
このミツハメの宮にいた。ミホツ姫が顔を出すとトヨタマ姫は喜んで
26-145 コタエトフ ミホツウナツキ
どう答えたらよいのか聞いた。ミホツ姫はうなずいてニニキネに話した。
26-146 オオヱキミ ココロナイタメ
「太上君、どうぞご心配なさらないで
26-147 タマイソヨ キミトヒメトハ
ください。君と姫とは
26-148 ヒトツキト ムツマシナサン
日と月のように仲睦まじくされるでしょう」
26-149 モフストキ ヲヲキミヱミテ
と申し上げると、ニニキネはほほ笑み
26-150 タケスミニ トヨタマタセト
タケスミにトヨタマ姫を助けるようにと
カワアイノ クニタマワリテ
河合の国を賜った。
【カワアイノ クニ】 京都市左京区に河合神社がある。祭神のタマヨリ姫はタケスミの娘で、タケヒト(神武)の母親。
26-152 タニオイデ ムロツニカメノ
ニニキネが、朽木谷を出て室津に着くと亀船が
26-153 ムカイマツ カドイデオクリ
迎えに来て待っていた。ニニキネの出発を見送りに
26-154 ミユキナス キミエヲヲキミ
ホオデミが来た。ニニキネはホオデミに
26-155 ノコシコト アニヒツキテル
遺言を遺した。「空に日や月が照っているが