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ヤマウミト トミコトタマハ
山と海とその恵みへの祈りの言葉は
【ヤマウミト トミコトタマハ】 「ヤマウミトトミ」は「山海と富」と読み、山海とそこから得られる産物や財産などの恵み、「コトタマ」はそれらにたいする「言魂」すなわち感謝や祈りの言葉と解釈した。
ハニスキノ ナメヱニツゲテ
ハニスキの祭りで神に申し上げて
【ハニスキ】 ユキの宮は天神、スキの宮は皇神を祭り、「ハニスキ」は大地・海・山など地上の神々を祭る。
27-156 ヒトクサノ ホギイノルナリ
民の幸せを祈る」
27-157 フタカミハ ツネニタタスノ
後に、君とタマヨリ姫はタダスの
27-158 トノニヰテ アマネクヲサム
殿で政を執られ、国の隅々まで政が広く行き渡ったので
27-159 タミユタカ サクススナレバ
民の暮らしは豊かになった。スズの木が枯れると
27-160 ウエツギテ ナスズオヨベド
植え継いで、大変長い年月が経ったが
27-161 ナオユタカ ヨソコノスズノ
今なお民の暮らしは豊かである。四十九スズ、
コモソヒヱ ハツホキアヱノ
九百十一枝、初穂キアヱ、
【ハツホキアヱ】 「初穂」はキアヱ暦の最初の年ということを表わしている。
27-163 ハツミカニ コヤネモフサク
一月三日にアマノコヤネが君に申し上げた。
27-164 キミハイマ ミヲヤノミチニ
「君は今、ミヲヤの道によって
ヲサムユエ ヒトクサノヲヤ
国を治めておられるので、民の親であり、また
【ヒトクサノヲヤ… 】 この部分はアマテルカミの言葉をそのまま言っている。
27-166 アメツチノ カミモクダレハ
天地の神も降って敬われるので
27-167 ミヲヤカミ ヨヨノミヲヤノ
神の御親でもあられます。ところが、世の中全ての御親であられる君に
27-168 ツキコナシ ソフノキサキモ
後継ぎの皇子がおりません。十二人も妃がいらっしゃるのに
27-169 イカナルヤ トキニアマキミ
どうしたことでしょうか」すると君は言われた。
27-170 ワレオモフ ソミススヲイテ
「そのことは吾も常々思っている。長い年を過ごしてきたが
27-171 タネアラジ コモリモウサク
子どもができないのだ」コモリが
27-172 ヨツキフミ アリトテアマノ
「それには世継ぎの文があります」と言ったので、
オシクモニ ノリシテヨツギ
君はアマノオシクモに命じて世継ぎの
【アマノオシクモ】 アマノコヤネの子。
27-174 ヤシロナス トキニオシクモ
社を造らせた。社が出来上がるとオシクモが言った。
ナアテナシ コヤネフトマニ
「お祈りする姫はどなたなのでしょうか」アマノコヤネがフトマニで
【ナアテナシ】 「名当て無し」、該当する者の名が分からない。
27-176 ウラナエバ ヤセヒメヨケン
占った。「ヤセ姫がよいでしょう。
27-177 ヤヒノヰハ ナカノヤトナル
八と一と五が表れたので、その中の八を使います。
シノハラハ ハハトハラメル
「シノハラ」を読み取ると、母として孕むことができる方は
【シノハラ】 フトマニに「シハラ」として「シノハラハ カミノフシミノ タマクシオ アミノメクミノ ミヤコタツナリ」とある。該当しそうな漢字を当ててみると「シノハラは 神の伏し身の魂奇しを 天の恵みの 都発つなり」となりそうだが、これでも意味不明。そこで「シノハラ」の「ハラ」に「孕む」の意味を持たせ、「ミヤコタツナリ」の「ミヤコ」は、天の恵みを与えられる「ミ(身)」は、「ヤ(ヤセ姫)」の「コ(子)」としてみた。「ヤヒノヰハ ナカノヤトナル」にしても、なぜ「八」を選ぶのか解らない。現代でも多分にありそうだが、占者は占う事柄の情報を事前に収集していたのではないか。初めからヤセ姫を頭に置いていたとすれば、「八」を選んだのも、フトマニの中にヤセ姫を選ぶ言葉があるとしたのもうなずけるのではないか。
27-179 ヤノツホネ ウチメハナカノ
「ヤ」の局です。ヤセ姫は妃の中でも中ほどの
27-180 クライナリ トシモワカバノ
位のウチメです」年もまだ若い
27-181 ヤセヒメオ ソヒノキサキモ
ヤセ姫を十一人の妃も
27-182 ミナイハフ オシクモキヨメ
みな祝福した。オシクモは身を清めて
27-183 ヨツギヤニ イノレバシルシ
世継ぎの社に籠もって祈ると、兆しが表れて
27-184 ハラミヱテ ソヰツキニウム
ヤセ姫は身籠ることができ、十五か月で
27-185 ヰツセキミ ヤセヒメミヤニ
イツセ皇子をお産みになった。ところがヤセ姫は宮に
27-186 イルルマニ ツイカミトナル
入ると間もなく亡くなり、
27-187 オチナクテ フレタツヌレハ
イツセ皇子に飲ませる乳がなく、触れを出して乳母を探した。
27-188 コレノサキ カモタケツミト
かつて、カモタケスミと
27-189 イソヨリト ソミススマテモ
イソヨリ姫との間に長いこと
27-190 コナキユエ ワケツチカミニ
子どもが生まれなかったので、ワケイカツチ神に
27-191 イノルヨノ ユメニタマワル
祈った夜、神から玉を頂く夢を見て、
27-192 タマノナノ タマヨリヒメオ
姫が生まれ、その「タマ」を付けて、名をタマヨリ姫とした。
27-193 ウミテノチ ヒタシテヨハヒ
生まれてから大事に育てたが、姫の歳が
ソヨススニ タラチネトモニ
十四歳のとき、両親ともに
【ソヨススニ】 「スス(スズ)」はこれまで暦の年をいい、1スズが6万年で、文中では長い年月を表す語として扱ってきた。ここでは「ヨハヒ (齢) 」とあるので、「ソヨスス」は14歳とした。
27-195 カミトナル カアイノカミゾ
亡くなり、河合の神として祭られた。
27-196 タマヨリハ モマツリナシテ
タマヨリ姫は喪祀りを済ませ、
27-197 タタヒトリ ワケツチカミニ
ただ一人でワケイカツチ神の社に
27-198 マタモフテ ユフササクレバ
再び詣でた。木綿の幣を奉げていると
ウツロイガ ウタガイトワク
見知らぬ男が疑問に思って尋ねた。
【ウツロイ】 ここでのウツロイは、その辺にいる素性のはっきりしない人物。
27-200 ヒメヒトリ ワケツチカミニ
「若い女一人で詣でるとは、ワケイカツチ神にでも
27-201 ツカフカヤ コタエシカラズ
仕える気なのかね」タマヨリ姫が「違います」と答えると
27-202 マタトワク ヨニチナムカヤ
また訊いた。「夜はワケイカツチ神と過ごすのかい」と言った。
27-203 ヒメコタエ ナニモノナレバ
姫が言い返した。「何者のつもりで
27-204 オトサンヤ ワレハカミノコ
我をそんなに侮辱するのか。我はワケイカツチ神の子なのだ。