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30-051 カミノヨノ フルコトシルシ
これまでの代の故事を記して
30-052 タテマツル ナナクサミソモ
奉った。七草の味噌粥も
30-053 トンドホモ カミアリカユモ
トンド焼きも粥占も
30-054 オコナハレ サアエヒツギト
行われた。サアエの日に皇位継承の儀式を行うため
30-055 アメトミハ ワケツチミヤノ
アメトミは別雷宮の
30-056 ツルギモチ アタネハカガミ
八重垣の剣を持ち、アタネは八咫の鏡を
30-057 モチノホル キミタカミクラ
持って宮に上った。君は高御座に
30-058 シトネコヱ アマノタネコハ
褥を九重に敷き、アマノタネコは
30-059 シトネミヱ クシミカタマハ
褥を三重に、クシミカタマは
30-060 シトネフヱ ヒノヲミウタフ
褥を二重に敷き、それぞれ座した。先代皇の使者ミチヲミが謡う
ミヤコトリ ミヱオリテキク
「都鳥」を君は褥を三枚はずし六重にして聞かれた。
【ミヤコトリ】 アマテルカミがニニキネに皇位を譲る時、国の政のあるべき姿を「都鳥」になぞらえて言った言葉。訳文の『 』の中がその言葉で、そのあとはアマテルカミから三種の神宝が皇孫ニニキネに授けられた時の様子をミチヲミが語ったもの。
【ミヱオリテキク】 11綾本文060にも「キミココノヱノ シトネオリ ムヱニキキマス」とあるように、このような場合、褥を外すのが礼儀だったのだろう。
30-062 アワオタス アマスメラギノ
「『天下を治める天皇(ニニキネ)の
30-063 モロハトミ カスガトコモリ
左右の臣はカスガとコモリ。
30-064 キミトミノ ココロヒトツニ
君と臣とは心一つの
30-065 ミヤコトリ カタチハヤタミ
都鳥。形は八民、
30-066 クビハキミ カガミトツルギ
首は君。鏡の臣と剣の臣は
30-067 マテノハネ モノノヘハアシ
左右の羽、物部は足。
30-068 カガミトミ ツギホロブレバ
鏡の臣を継ぐ者無ければ
30-069 タミハナレ ヒツギフマレズ
民、君から離れ、君の日嗣は続かぬ。
30-070 ツルギトミ ツギホロブレバ
剣の臣を継ぐ者無ければ、
30-071 モノブワレ ヨオウバワルル
物部は散りて、国奪わる。
30-072 ヤタヲミハ ソロヲウハルノ
八咫鏡の臣は稲生ゆる春の
タミワザオ カンガミルメゾ
民の仕事を見守り導くことがその役目。
【カンガミルメ】 「カンガミル」は「鑑みる」。先例に照らし合わせて考えること。「メ」は目。民の仕事を見ること。そこには当然指導もあるだろう。
30-074 カキヲミハ ヨコマオカラシ
八重垣の剣の臣は邪悪なものを成敗する
30-075 モノノフノ チカラモルテゾ
物部の仕事を守るのが役目ぞ』
30-076 コノユエニ ミグサオワケテ
このようなお考えで、アマテルカミは三種の神宝を分けて
30-077 サヅクルハ ナガクヒトツニ
授けられました。末永く君臣民が一つで
30-078 ナルヨシオ アヤニシルシテ
あるべき故を『都鳥の文』として書かれて
30-079 ヲテヅカラ フミオミマコニ
アマテルカミ御手ずから文を皇孫に
30-080 サヅケマス セヲリツヒメハ
授けられました。セオリツ姫は
30-081 ミカガミオ モチテカスガニ
御鏡を持ってカスガカミに
30-082 サツケマス ハヤアキツメハ
授けました。ハヤアキツ姫は
30-083 ミツルギオ モチテコモリニ
御剣を持ってコモリカミに
30-084 サヅケマス ミタビウヤマヒ
授けました。三度礼をして
30-085 ミナウクル ヤマトヒツギノ
それぞれが受けました。これが皇位を継ぐときの
30-086 ミヤコドリカナ      
『都鳥』の儀式です」
30-087 ヒノヲミハ シルシノミハコ
先代皇の使者ミチヲミは御璽の箱を
30-088 タテマツル アタネハカガミ
君に捧げた。アタネは八咫の鏡を、
30-089 アメトミハ ヤヱガキモチテ
アメトミは八重垣の剣を持ち
30-090 アメタネコ クシミカタマニ
アメタネコとクシミカタマに
30-091 サヅクナリ キミトミモトノ
それぞれ授けた。君と臣は
30-092 シトネシク トミモモツカサ
褥を元通りに敷いた。臣と大勢の司(役人)が
30-093 コトホギシ ヨロトシウタフ
祝いの言葉を述べ、末永く栄えるように祝いの歌を歌った。
30-094 ミカガミハ ヰソスズヒメニ
八咫の鏡はヰソスズ姫に、
30-095 ヤヱガキハ アヒラツヒメニ
八重垣の剣はアヒラツ姫に預け、
30-096 ミシルシハ キミノミニソエ
御璽は君が持たれて
30-097 ミクサトモ ウチツノミヤニ
三つの神宝はみな内つ宮に
30-098 ヲサメマス ハラミノタメシ
納められた。ハラミ山のニニキネ尊の前例が
30-099 ウチミヤト タタユモトナリ
三つの神宝を内宮に置くのを良しとしたことの元であった。
30-100 ミカサリオ タミニオガマセ
儀式の装いを民にも拝謁させた。
30-101 ネノツキニ アユキワスキノ
十一月にユキ殿スキ殿の
ミヤツクリ モトアケアワノ
宮を造り、天と地の
【モトアケアワノ カミマツリ】 和仁估本では「モトアケアマノ」となっている。「アユキワスキノミヤ」を造ったのであれば、天の神と地の神を祭るはずだが、それでは「アマノカミ」だけを祭ったことになる。「アマ」が「アワ」となっている写本もあるので「アワ」とした。
30-103 カミマツリ タネコクシタマ
神々を祭った。アメタネコとクシミカタマが
30-104 マテニアリ ミケナヘマツリ
君の左右に侍り、御神鐉を供え
30-105 モフスヲミ ウマシモノヘト
差し上げる臣となった。ウマシマチと物部は
30-106 トオマモル ミチヲミクメト
宮の外を守った。ミチヲミと久米部は
30-107 ミカキモリ カンノトコトハ
御垣守をした。神への祝詞の奏上は