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話された。「吾は昔、このハラミ山の
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絵を見たけれど、優雅でなく高いだけだったので
【アテナデタカク】
「アテ」は「貴くみやびやかなこと。上品なこと」(広辞苑)また、「当てること」「あてがうもの」ともとると、「対比するもの、調和するもの」というようにもとれ、本文083の「ナカミネノ アテハアワウミ」は「調和するもの」とした。
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父君はその絵を捨ててしまった。この度の山と湖の
【ヤマサワノ】
「サワ」は沢。低くて水がたまり、蘆・荻などの茂った地。(広辞苑)この場合は淡湖。
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絵を合わせると、割り札が合うようで
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良い兆しである。ハラミの山の
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良い薬草も五百年前に
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焼けて無くなってしまったが、種から再び
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生えてくるよい兆しである。淡海の水がハラミ山を
【ニオウミ】
淡海。琵琶湖の別称に、近江の海、鳰(ﾆｵ)の海がある。
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潤せば千代見草も
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生えるだろう」と、楽しまれた。
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三十六年一月十日、
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モトキネを世嗣として
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君自ら御機織留(政の決まりの文)を
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授けられ、「これはアマカミに代々伝わる
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御文書である。朝に夕にこれを読んで
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よく思いをめぐらして民を治めるように」と仰せられた。
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君は即位の正装を民に拝謁させた。
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三月中頃、オオヤマトフトニ君はハラミ山へ
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御幸された。その行程が決まり
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黒田より香久山、賀茂の宮、
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多賀の宮、諏訪へ行き、酒折の宮では
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タケヒテルが宴の支度をして待っていた。
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その後ハラミ山に登って、須走りを下り
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山裾を巡り、ムメ大宮に
【ムメオオミヤ】
かつてムメヒトが政を執っていた宮。現在の富士宮市の浅間大社。
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着いて、滞在された。カスガが話した。
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「ハラミ山の峰で採れた、御衣裳に描かれている草は
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千代見草だろうか」。みなが食べようとしたが、
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煮ても苦くて誰も食べられなかった。
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「中峰に調和するものは淡海で
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八つ峰に調和するものは裾野の八湖である。
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今は三つ埋まってしまった。噴火はしたが、中峰の美しさは
【ヤクレト】
本文059に「ハラミノヤマノ ヨキクサモ ヰモトセマエニ ヤケウセシ」とあるので、この噴火は紀元前500年から300年ごろに起こったといわれる噴火のことではないかと思われる。私の計算では、オオヤマトフトニが富士に行幸したのは110年頃のこと。ニニキネが富士のすそ野を開拓したのは紀元前150年頃で、そのころにはまだ３つの湖は農耕ができるくらいには残っていたのではないか。
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変わることはない」と君は話され、歌を詠まれた。
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「中峰は時が経ても、静かに噴煙を上げつつ、変わることがない。
【ナカバワキツツ】
「ナカバ」は「半ば」の意であろう。訳に「半ば」の類語を充てたいところだが、ふさわしい語がなく、そのような状態としての意訳をした。
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この山と、ヤマトは共に今は穏やかである。
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この山のなんと素晴らしいことよ」
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このように詠まれて、山の新しい名前を付けたいと
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思われた。その時田子の浦の者が
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藤の花を献上したのに因んで
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ハラミ山の新しい名前を思いついた。名前を付ける御歌は
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「ハラミ山がいつまでも栄えるように、花もいつまでも咲けよ。
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藤蔓の花の名に因んで藤(富士)とつけよう。
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この山のなんと素晴らしいことよ」
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これにより名前を「藤の山」とした。
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オオヤマトフトニ君は南路で都に帰った。
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梅宮の祝主であるホツミの
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オシウドに、稜威(ニニキネ)、朝間(コノハナサクヤ姫)、皇子(ホオデミ)
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ヤマヅミ(オオヤマヅミ)の四神を
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ヤス河原に祭らせた。その時、タケヒテルは
【ヤスガワラ】
「ヤス」は近江の野洲。ニニキネとホオデミは野洲の瑞穂の宮にいたと思われる。26綾の本文027に「ミツホマデ ミカエリアレバ」と、ホオデミがニニキネのいる瑞穂の宮に帰ったことが書かれている。また、瑞穂の宮は、24綾135以降に三上山等の地名と、仮宮を瑞穂と名付けたということが書かれていることから、三上山のある近江八幡市の野洲町にあったと言えるのではないか。
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玉川の神宝の文を
【タマガワノ カンタカラフミ】
14綾「ヨツギノルノトゴトノアヤ」に書かれている文。
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献上した。この文によって天御孫の
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ハラ御君(ニニキネ)の子孫が、神代から伝えられている