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クダリマス イロノツズウタ
新しい宮に下る。その時詠われた「イロのツヅ歌」
【イロノツヅウタ】 1音目と真ん中の音が「イ・ロ」となっているツヅ歌。御魂遷しの様子(イロ)を詠んだもので、4綾本文101の、ヤマズミがアマテルカミの誕生を祝って歌った歌を受けている。窮状を脱することができるよう、この歌にあやかりたかったのだろう。
33-056  イザトホシユキノヨ   
「遥か遠い昔にアマテル神がお生まれになった
33-057  ロシモオホヨスガラモ  
めでたさを、もう一度夜通し味わおう」
33-058 ナホキサラ ミカミコトノリ
七年二月三日、君が仰せられた。
33-059 ワガミヲヤ ヒラクモトヒハ
「吾が祖先が都を開いた頃は
33-060 サカンナリ ワガヨニアタリ
国は栄えていたが、吾の代になって
33-061 ヲエアルハ マツリトトカヌ
疫病がはやるのは、祭りが神に届かず
33-062 トガメアリ ケダシキワメテ
咎められているということだ。思うに手厚く祭れば
33-063 ヨルナリト アサヒノハラニ
神も降りてきて下さるだろう」と朝日原に
33-064 ミユキシテ ヤモヨロマネク
御幸して八百万の神を招く
ユノハナノ モモソヒメシテ
湯立てをモモソ姫にさせた。
【モモソヒメ】 32綾本文021の、オオヤマトフトニ(孝霊天皇)とヤマトクニカ姫の間の生まれた三つ子の一人「ヤマトモモソ姫」と、この綾の「モモソ姫」は同一人物だろうか。日本書紀では孝霊天皇の姫もこの綾の姫も「倭迹迹日百襲姫命(ヤマトトトヒモモソヒメ)」となっていて、岩波文庫版の解説では同一人物とされている。同一人物だとすると、3代下った君の前に現れた「モモソ姫」は何歳ぐらいであろうか。私が計算したところによると、20歳程度で次の代が即位すると考え、単純計算ではあるが姫は60歳位ということになる。さて、この「モモソ姫」は34綾本文052で「オホモノヌシノツマ」すなわち巫女となる。そこで34綾解釈ノート052に書いたような男女の問題があったと考える。巫女は通常未婚の少女がなるようで、どう考えてもこの時代の60歳に近い女性の話とは思えない。ということで、ホツマツタヱに出てくる「ヤマトモモソ姫」と「モモソ姫」とは別人であると考える。
33-066 ノリコチニ サッサツズウタ
モモソ姫に神が乗り移り、「サッサツヅ歌」を詠った。
33-067  サルタミモツズニマ   
「民が都から去って行ったのも、神を続けて
33-068  ツラテヲヱニミタルサ  
祭らなかったからで、疫病で乱れるのもそのためである」。
33-069 キミトフテ カクオシユルハ
君が聞かれた。「このようにお教え下さるのは
33-070 タレカミゾ コタエテワレハ
どの神様でしょうか」。モモソ姫が答えた。「我は
33-071 クニツカミ オオモノヌシゾ
国つ神の大物主である」。
33-072 キミマツル コトシルシナシ
君は大物主を祭ったが、特段よい兆しも見えなかった。
33-073 ユアヒシテ スガニイノリテ
そこで沐浴で身を清め、心も清めて祈り、
33-074 ツケモフス ワレウヤマエド
神に訴えた。「吾が神を敬っているのに
33-075 ウケザルヤ コノヨノユメニ
受け入れて下さらないのでしょうか」。その夜、夢に神が現れて
33-076 ワレハコレ オオモノヌシノ
「我は大物主の
33-077 カミナルガ キミナウレヒソ
神である。君は嘆かないでよろしい。
タセザルハ ワガココロアリ
世の中が治まらないのならば、我に良い考えがある。
【タセサルハ ワガココロアリ】 日本書紀(岩波文庫版)では「天皇、復な愁へましそ。国の治らざるは、是吾が意ぞ。」とあり、その後で、「子孫の大田田根子に自分を祭らせたら世が治まる」と言っている。これでは大物主が、自分が君の元から出されたことをネに持って世を乱しているようではないか。代々の大物主の真っ直ぐな人格(神格?)とは思えない。私は、君は大物主を恐れていたが、ここで大物主の精神に気が付いたということを表わしていると考える。オオタタネコに祭らせるというのは、大物主の精神で政を執るとよいということ。
33-079 ワガハツコ オオタタネコニ
我の末裔のオオタタネコに
33-080 マツラサバ ヒトシクナレテ
祭らせれば、どこも平穏になって
トツクニモ マサニマツラフ
他の国も間違いなく従うであろう」と言った。
【トツクニ】 28綾本文070にも「トツクニ」が出てくるが、その解釈ノートにも書いたように文脈から「弟ツ国」。ここではそれは当てはまらないので、「外ツ国」か「遠ツ国」と解釈すべきであろう。
33-082 ハヅキナカ トハヤガチハラ
八月七日トハヤの娘のチハラ
33-083 メクハシメ オオミナクチト
メクハシ姫とオオミナクチと
イセヲウミ ミタリミカトニ
イセヲウミの三人が帝に
【ミカト】 32綾本文035に「ミカド」が出てきたが、そこでは「帝」とはしなかった。ここは「君」の意味の「帝」であろう。
33-085 ツゲモフス ユメニカミアリ
申し上げた。「夢に神が出てきました。
タタネコオ オオモノヌシノ
『オオタタネコを大物主の
【オオモノヌシノ イハイヌシ】 この後本文097で、オオタタネコが自分をオオミワの神の末裔と述べている。31綾本文194に、クシヒコ(オオクニタマ)、フキネ(オオナムチ)、ワニヒコを三輪の神にしたことが書かれているので、ここでの大物主はそれを指す。その中でも特に皇の守り神となると言って洞に入ったクシヒコ(オホヤマトクニタマ神)をシナガオイチにも祭らせるということと解釈した。
33-087 イハヒヌシ シナガオイチオ
祝主にして、さらにシナガオイチを
33-088 オホヤマト クニタマカミノ
オホヤマトクニタマ神(オオクニタマ、クシヒコ)の
33-089 イハヒヌシ ナサハムケヘシ
祝主にすれば、乱れが治まるであろう』と神が言いました」
33-090 キミコレニ ユメアワセシテ
君はこれと自分の夢を合わせて
33-091 フレモトム オオタタネコオ
触れを出してオオタタネコを探した。
チヌスヱニ アリトツグレバ
チヌのスエにいると告げた人がいたので
【チヌスエニ】 大阪府堺市に「ちぬが丘」という名称や「陶器」という地名が残っているのでこの辺りであろう。
33-093 キミヤソト チヌニミユキシ
君は八十人の臣を連れてチヌに御幸した。
33-094 タタネコニ タガコゾトトフ
君がオオタタネコに「誰の子孫であるか」と聞くと、
33-095 コタエニハ ムカシモノヌシ
その答えは「昔、大物主と
33-096 スエツミガ イクタマトウム
スエツミの娘のイクタマ姫との間に生まれた
33-097 モノヌシノ オオミワカミノ
大物主の大三輪の神の
33-098 ハツコナリ キミサカエント
末裔です」と言った。君は、これで国が栄えるだろうと
33-099 タノシミテ イキシコヲシテ
楽しみにして、イキシコヲに
33-100 ウラナハス コレマコトヨシ
占わせた。これには、大変よいと出た。
33-101 ヨソカミオ トエバフトマニ
他の神ではどうかと聞くと、フトマニで占うと
33-102 ウラワロシ メツキハツヒニ
よくないと出た。十月一日に
33-103 イキシコヲ ヤソヒラカナシ
イキシコヲは八十の平皿を供えた。
33-104 コレオモテ オオタタネコオ
このことによって、オオタタネコを
33-105 イワヒヌシ オオミワノカミ
大三輪の神の祝主とし、
33-106 ナガオイチ オオクニタマノ
シナガオイチをオオクニタマの
33-107 イワヒヌシ アマネクフレテ
祝主とした。国中に知らせて