【モモソヒメ オオモノヌシノ ツマトナル・・・・】
大物主はすでに神なので、「ツマ」になったと言っても「妻」ではない。ここの話は歴史的な実話とは考えられないが、何かの事実が裏に秘められていると考える。ここから「コシガテンカモ」までを、「ハシ塚」(箸墓古墳?) に祭られているモモソ姫にまつわる出来事として想像をめぐらした。以下は私の想像する「事実」である。
「モモソ姫は大物主神に仕える巫女となった。モモソ姫にはすでに恋人がいて、夜になると忍んで逢っていた。ある朝、大物主の末裔で、大三輪の神の祝主でもあるオオタタネコがモモソ姫を訪ねてきた。いてはならない男を目撃したオオタタネコは慌てて用件も告げず帰ってしまった。モモソ姫は神に仕える巫女として大いに恥じ、自ら命を絶ってしまった。それを知った多くの人の哀惜の情が箸塚をつくらせた。」
「クシゲ(櫛箱)」を女性のいる部屋、「コヘビ(小蛇)」を男性とするとモモソ姫の部屋に男がいたことを暗示していると思われる。「ヒメオドロキテサケビナク」はモモソ姫がオオタタネコに見つかって狼狽する様子。オオタタネコは、モモソ姫が仕えている大物主の末裔なので、オオモノヌシに見つかったのと同じような恐怖を感じたのではないか。オオタタネコが踵を返したのは、モモソ姫に気を使ったのかもしれないが、モモソ姫にしてみれば「ナンヂシノビズ ワガハジト オオゾラフンデ」帰って行ったと思われたであろう。恥、後悔、恐怖、それらのために絶命したのか、自死したのか、死んでしまったのである。 (それでも、自分の陰部を突いて死ぬことはありえないし、尻餅をついて箸が陰部に刺さるなんて状況があるわけないと私は思う。)
オオタタネコはモモソ姫の気の毒な死を悼み、塚を造ることにした。この頃エビス討伐で多くの犠牲者も出たので、その者たちも合わせて「オレガレ」すなわち生を全うできずに死んだ人の大きな塚を造った。そこで、オオタタネコは「ヲトクマツリ」を祭主として行ったのである。以上のような解釈だが、本文は人々の間に生まれた物語の通り訳した。