ホツマツタヱ 全行現代語対訳

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40-160

姫の返し歌

40-161

「気高い天の皇子、

40-162

よくぞ見つけてくださいました。我が大君の

【ヤスミセシ】 これを「休んだ」とすると、ミヤヅ姫が出迎えた時というのと矛盾する。私は「易見せし」と読み、「容易に見た」すなわち「さっと見つけてくれた」というように解釈した。

40-163

新しい年が来てまた年を経て

40-164

とてもとても君を待ち遠しく思っていましたので

【ウヘナウヘナ】 「宣な宣な(ｳﾍﾞﾅｳﾍﾞﾅ)」と読み、まったくまったく、もっとももっともの意。

40-165

私の着ている襲(ｵｽﾋ)の裾も

【オスヒ】 襲(ｵｽｲ)。頭からかぶって衣裳の上をおおうもの。(広辞苑)

40-166

月日が経ってしまったのでしょう」。

40-167

ヤマトタケ君が伯母のヤマト姫から戴いた

40-168

叢雲の剣をミヤヅ姫の館に置いて

40-169

伊吹山に登り、帰りは伊勢路を

40-170

苦しみながら行き、都を思って

40-171

「ああ愛おしい。我が家の

【ハシキヤシ…】 38綾本文222でヤマトタケの父タリヒコが歌った歌の冒頭の部分と同じ。父の思いのこもった歌がヤマトタケの心の中に残っていて、それをツヅ歌にしたのだろう。

40-172

方に雲が立ち上っていることよ」と

40-173

御子や親族に遺し歌を遺した。

40-174

このツヅ歌の折り合いは「や・か・た」（館）で、

40-175

「出で立つ」とあるのは、人は旅の館で会った

【イデタツハ】 「イデタツ」はヤマトタケの歌の「クモイタチクモ」の「イタチ」を指していると解釈した。

40-176

旅人同士で、いつかは別れる定めなのだから未練を残さぬようにと

40-177

諭した歌で、ヤマトタケの深い心の

40-178

導きの歌なのである。

40-179

能褒野で亡くなる時に

40-180

ミヤヅ姫に歌を遺した。

40-181

「アイチダの姫の床に

40-182

我はイセの剣を置いてきたので

【イセノツルギ】 この剣は伊勢のヤマト姫から授かった叢雲の剣。「イセ」には夫婦という意味も込められている。

40-183

二人が別れることなどあるだろうか。いやそれはない。」

40-184

このワカ歌は、夫婦の契りは

40-185

繋がっていて、この世で別れても

40-186

二人を繋げている緒は切れることはないと

【ツリノヲ】 剣を吊り下げる「緒」と、二人を繋げている「緒」(絆)を掛けている。

40-187

導き表した人の世の教えである。

40-188

ミヤズ姫は悲しみに悶え、命も絶えそうになり、

40-189

やっとの思いで生きているようなありさまだった。姫の父はハラミの宮の

40-190

図面を描き写して都に上った。

40-191

ヤマトタケ君の願いを

40-192

皇に申し上げ、ヤマトタケがアイチダに建てるのを待っていた

40-193

宮が出来上がった。皇に渡御をお願いすると

40-194

詔を下し、タタネコを斎主として

【タタネコイハフ　サヲシカド】 「イハフ」を「斎ふ」と読み、神聖なものとして祭ること(大辞林)とした。ここでは斎主。

40-195

勅使に立て、オハリムラジを祭主とした。

40-196

皇子達には御幸の準備をさせ、

40-197

厳かに御幸された。コトヒキ原の

40-198

御陵に落ちた尾羽を四枚、

40-199

古市の尾羽を四枚、ともに

40-200

持ってきて、能褒野に残された冠と

40-201

笏と御衣裳も御霊笥に入れて

40-202

白御輿に納めた。日代の四十四年、

40-203

三月十一日、黄昏より

40-204

御輿が出発し、能褒野より東へ向かった。

40-205

諸々の司が松明で守った。

40-206

先頭は、榊を持つ者が二十人、

40-207

副祭主はサルタヒコの

40-208

面をかぶり、祭主八人は

【ミカホアテ】 「アテ」は顔にあてる、すなわち「面をかぶった」と考える。

40-209

八元幡を持った。大祭主は