【ミハタノハツ】和仁估本では、綾の表題の前に「ミハタノ〇〇」とホツマ文字で書かれているのはこの一綾のみ。二綾には表題の漢訳の下に「梭之弐」と書かれているが、三綾以降は何も書かれていない。長弘本は各綾に書かれている。
【ホムシ】稲穂に付く虫、本文060では「ホヲムシ」となっている。「イナムシ」も同じ虫で、イナゴではないかと考えるが、ウンカなどの害虫とも考えられる。 【キツ】東西。本文025のように、この時代に東西南北を表す言葉として「キ・ツ・サ・ネ」と「ひがし・にし・みなみ・きた」が使われていたようだ。
【ワカヒメ】 アマテルカミの姉 【ワカ】 「ワカ歌」または「ワカの歌」のことと考える。この時代は「言霊」が信じられ、五・七のリズムで歌われる歌には特別な力があると考えられていたのであろう。それはこの綾の「イナムシハラウ ワカノマジナイ」や「回り歌は返すことができない」、39綾本文330の「ウタハクニ チカラハアタヒ」(歌が返せた者には国を与え、力を出した者にはハナフリを賜った)などや、平安時代以降の貴族の和歌との関わりからも言える。アマテルカミの姉、ワカ姫は特に歌の才があり、ワカ姫の歌は「ワカの歌」、「ワカ歌」と呼ばれ、それが五・七のリズムで歌われる歌を指すようになったのではないかと想像する。ホツマツタヱには漢字は一切使われていないので、意味的に漢字で「和歌」の字をあてて訳してもあながち間違いとも言えないが、漢語が使われているとの誤解を避けるため 「ワカの歌」、「ワカ歌」と表記する。
【タチマヒ】この後に成長の節目節目で一族の一員として交わっていくための儀式・しきたりが列挙されているので、「立ち舞う」、すなわち「立ち交わること」と読み、「一族の一員として交わっていくこと」と解釈した。このままの文では硬い表現になるので、訳では「親族に加わる」と表現した。
【カダガキウチテ ヒキウタフ】「カダガキ」は和琴の一種、またその奏法。「カダガキウチテ」は琴を奏でること。「ヒキウタフ」は、ただカダガキに合わせて「アカハナマ…」と唱えさせるだけでなく、「ア・カ・ハ・ナ・マ…」のつく一つ一つの言葉について教えたということではないか。
【フソヨニカヨヒ ヨソヤコヱ…】「アカハナマ」から「ヘネメオコホノ」までの24音をイサナギが、後半をイサナミが唱え民に教えたといわれる。この時代は「ア」から「ワ」までの一音一音に言霊が宿ると考えられていて、すべてを学ぶことによって確かな生き方ができるようになる、というようなことか。
【ヒノイヅル…】 カナサキのここから本文057までの話は、非常にわかりにくく、思うように訳せていないが、わたしは話の展開を次のようにとらえた。 太陽の動きにあわせて「ひがし・みなみ・にし」を説明。 飯を炊くことに例えて「ひがし・みなみ・にし」を説明。 米の飯の回数を言い、キミの食事に触れる。 キミの話から「宮」の話に移り「北」と「ネ」が同じ意味であることを説明。 人の来訪に例えて「きた・ひがし・みなみ・にし」をいい、「きた」から一回りして「きた」に戻ることを説明。ここまでが方角のこと。どれもイマイチだが、特に「オチツクハニシ」はこじつけもできない。よい解釈はないものだろうか。 樹の一年の様子。 「ネ」は、落ち葉が積もった根(ネ)でもあり、冬と北を表す。「キ」は芽が萌すことで、春と東を表す。「サ」は、葉が栄える夏と南を表す。「ツ」は、紅葉する秋と西を表す。(7)の「ネハキタニ」からは(6)の木の一年の様子に対比させて補足している。 「キツサネ」を一通り説明し、「ヲ」を入れて考えることで「キツヲサネ」は国の政の姿を表わす。春(東)に芽吹き、夏(南)に花や葉を茂らせ、秋(西)に木の実を着ける。このことと男女神とのつながりは、二通り考えられる。一つは、木そのものが「キ」すなわち「モモヒナキ、イサナギ」など男神を指し、実が「ミ」すなわち「モモヒナミ、イサナミ」などの女神を表す。もう一つは「キミ」は「木の実」で、「ヲメカミ」(男女神)は両方とも木の実であるということ。いずれにしても、君は男女一組であることの説明となっている。
【ヲンカミ】 通常「ヲンカミ」と書かれていればアマテルカミのことだが、ヒルコ姫がカナサキにこのような教えを受けているこの時点では、アマテルカミは 生まれていなかったか幼少の頃と考える。そうすると、ここでの「ヲンカミ」は一般名詞としての「キミ」と解釈する。