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04-136 ナクミコノ コヱキキトレバ
泣いている皇子の声を聞いたところ
アナウレシ コレヨリモロガ
『あなうれし』と聞き取りました。そのことで皆が
【アナウレシ】 生まれたばかりの乳児が答えるはずがなく、シラヤマ姫がそのように聞いたとするひとつの「儀式」ではないか。「ウヒルギ」も一音ずつの解釈までできるのは、事前に用意されていたからであろう。シラヤマ姫は名付け親か。
04-138 ナオコイテ オバヨリトエハ
名前を知りたいと頼んだので、シラヤマ姫が聞くと
04-139 ウヒルギト ミヅカラコトフ
『ウヒルギ』と自ら答える
04-140 ミコノコヱ キキキルトキハ
皇子の声をしっかりと聞きとって、
04-141 オサナナノ ウハオオイナリ
『幼名の「ウ」は大いなること、
ヒハヒノワ ルハヒノチタマ
「ヒ」は日の輪、「ル」は日の霊力、
【ルハヒノチタマ】 「チ」は広辞苑に「ち【霊】(複合語として用いる)自然物の威力・霊力を表す語」とある。「タマ」は「魂・魄・霊」。このことから「ル」は太陽から受ける人知を超えた偉大な力を意味しているのだろう。
ギハキネゾ カレウヒルギノ
「ギ」は杵。ですからウヒルギの
【ギハキネゾ】 「キネ」(杵)は男を表す語。
04-144 ミコトナリ キネハメヲトノ
尊というのです。キネは夫婦君のうちの
04-145 ヲノキミゾ フタカミオバオ
男の君をいいます』とシラヤマ姫が言いました。二尊は叔母のシラヤマ姫を
タタヱマス キクキリヒメモ
称え、キクキリ姫という名を授けました。『キクキリ姫』も
【キクキリヒメ】 「しっかり聞き取った姫」という意。
04-147 アナカシコカナ      
『ウヒルギ』もなんと畏れ多いお名前でしょう。
アカタマノ ワカヒルノルハ
輝く日の輪より生まれた幼いウヒルギの「日の霊力」は
【アカタマノ ワカヒル…】 「アカタマノ」の文は極めて難解だが、「ル」(日の霊力)について述べていると解釈する。「アカタマ」は日の輪。「アオキ」は「青き」と読み、「若い」という意味に、「クレヒ」は「暮日」と読み、「年老いた」という意味に、「ヌバタマ」は「ヌバタマ色・黒」として、「暗闇の者」すなわち「亡くなっている者」という意味に解釈した。そこから「ウヒルギの持つ力は、生きているすべての者のみならず、天界に上った者にまで及ぶ」と称えていると考えた。この訳は精一杯意味が通じるように訳したもの。よりよい訳があったらぜひ教えていただきたい。
04-149 アオキタマ クレヒノミタマ
若者の魂、年老いた者の魂、
04-150 ヌバタマナリキ      
亡くなった者の魂のすべてに及ぶのです。
04-151 ヒサカタノ ヒカリアレマス
行く末久しく栄える皇子が誕生して
ウイナメヱ アユキワスキニ
初めての大嘗会を執り行い、天の神・地の神に
【ウイナメヱ】 今の大嘗祭のこと。即位後最初の新嘗祭。
04-153 ツゲマツリ ミコヒタサント
報告しました。皇子をお育てしようと
04-154 フタカミノ ミココロツクス
二尊は御心を尽くされました。
04-155 アマノハラ ソムホイマスモ
ハラミ山に十六年居られましたが
04-156 ヒトヒトゾ オボスハメグミ
たった一日ほどにしか感じられなかったのは、皇子への愛情が
04-157 アツキナリ ムカシタマキネ
とても厚かったからです。昔タマキネ尊が
04-158 チカヒシテ カツラキヤマノ
皇子を授かるようにと誓いを立てて、カツラギ山で
ヤチミソギ スミテイトリノ
八千回の禊ぎをしました。タマキネは、禊ぎを終えてイトリの
【イトリノテグルマ】  「イトリ」は白い大きな鳥。白鳥とか鳳凰とかの説もあるが、確証がないので「白い大きな鳥」とする。その飾りをつけた、手で押したり引いたりして動かす小型の車。
04-160 テクルマオ ツクリカツラノ
輦(テグルマ)を作り、カツラギ山より
04-161 ムカヒトテ ハラミニツタフ
ハラミ山に向かっていると二尊に伝えました。
04-162 アルカタチ フタカミユメノ
それを知り、二尊は夢では
04-163 ココチニテ アヒミタマエバ
ないかと喜び、実際に会うと
04-164 トヨケニテ アメミコヒタス
まさにトヨケ尊その人でした。トヨケ尊は皇子に帝王学を学ばせると
04-165 モノカタリ メステクルマオ
話し、輦を召して
ヒタカミヱ ミユキノキミハ
ヒタカミへ向かいました。御幸の時、君は
【ミユキノキミハ ヤフサコシ】  八房の輿に乗っている「君」はだれか。本文131で、ワカヒトは即位しているので、ここでも君はアマテルとも考えられるが、二尊とアマテルをまとめて君とし、3人が八房の輿に乗り、 オチツ(乳母)は桁輿で同行したのではないか。
04-167 ヤフサコシ オチツモハベリ
八房の輿に乗り、オチツ(乳母)も侍り、
04-168 ケタコシモ ミナケタツボノ
桁輿もみなヒタカミへ向かい、
ヤマテミヤ ミコノヒカリノ
ヤマテ宮に着きました。皇子のご威光が
【ミコノヒカリノ テリトホリ ヤモニコカネノ ハナサケバ】  「日の若宮のワカヒト」という諱がつけられた背景を、オオヤマスミが美化して話していると解釈した。「コカネノハナ」は11綾091の「キカヤモコカネサク」と同一のもので「榧の花」。
04-170 テリトホリ ヤモニコカネノ
隅々まで行き渡って、至る所に黄金色の
04-171 ハナサケバ ヒノワカミヤノ
花が咲いていたので、『日の若宮の
04-172 ワカヒトト トヨケイミナオ
ワカヒト』とトヨケ尊が諱を
04-173 タテマツル フタカミオソレ
奉りました。二尊は畏れ多く思い、
04-174 ワガミヤニ ムベソダテジト
自分達の宮ではとうてい育てられませんと、
04-175 アメニアゲ オキツノミヤニ
トヨケ尊に皇子を預けて近江のオキツ宮に
04-176 カエリマス アメミコマナブ
帰りました。そこで皇子は
04-177 アメノミチ ヒトリハンベル
帝王学を学びました。一人傍に侍っている
04-178 フリマロハ ムヨヤソキネノ
フリマロ命は六代ヤソキネ尊の
04-179 ヨツギコゾ タカミムスビノ
世継ぎの御子です。五代タカミムスビの
04-180 ヰツヨキミ ヒゴトニノボル
トヨケ尊は毎日
04-181 アマツミヤ ワカヒトフカク
皇子ワカヒト君の宮に参上しました。ワカヒト君は深く
04-182 ミチオボス アルヒノトヒニ
学ぶことを望みました。ある日ワカヒト君が聞かれました。
04-183 マコトナオ ヰミナトタタヱ
『実名は諱として大切にされていますが、
04-184 アネニミツ ワレハヨツナリ
姉が三音で、吾は四音です。
04-185 コレイカン タマキネイワク
これはどういうことなのですか。』トヨケ尊が答えました。
04-186 ヰミナニハ タラニヨツギニ
『諱には、両親からの名としての二音と、世継ぎとしての