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8タマカヱシハタレウツアヤ
魂返し ハタレ討つ綾
【タマカヱシ】 亡くなった者のタマを天界に返す儀式。魂は、天から下されたタマと地上にあったシイに分かれていて、タマの緒によって結ばれて魂になっている。この世で生き方が正しくなかったり、残念な死に方をしたりした時、その人の魂の緒が乱れてタマが天界に戻れないで苦しむと考えられていた。
08-001 ヲヲンカミ アメガシタテル 
アマテルカミが世の中を治め
08-002 クシヒルニ タミモユタカニ
尊い威光で民の暮らしも豊かになり、
08-003 フソミヨロ フチミモヤソノ
長い年月(二十三万二千三百八十二年)を
08-004 フタトシオ ヘテモヤスラヤ
経ても御心は安らかで
08-005 ミカタチモ ナオワカヤギテ
御様子もなお若々しくて
08-006 ヲワシマス コトシフソヨノ
おられる。今年二十四本目の
サクスズオ フソヰノスズニ
真榊が枯れて、二十五本目の真榊に
【サクスズ】 真榊は1000枝(60000年)で枯れるとされている。28綾本文009以降に詳しく書かれている。
ウヱカエテ フシニアタレハ
植えかえた。節の年に当たったので、
【フシニアタレハ】 真榊を植えかえる年を「節の年」という。その隙間に悪いことが忍び込むと思われていたと考えられる。
ネノクニト サホコノクニノ
ネの国とサホコの国の
【ネノクニト サホコノクニノ マスヒトガ ウチノシラヒト】 「ネノクニト サホコノクニノ マスヒト」はこの二つの国のマスヒトだったクラキネ。シラヒトは義理の関係なので「シム」(血族)ではなくて、縁者として「ウチ」と呼んだのではないか。
08-010 マスヒトガ ウチノシラヒト
マスヒトであったクラキネの縁者のシラヒトと
08-011 コクミラガ ヲヤモオカシテ
コクミ達が母親のサシミメを犯し
08-012 コモオカス トガアヤマチモ
子のクラコ姫も犯す重罪を犯すという出来事が起きたが、
08-013 フタメトノ カシコトコロノ
ネの局の二人の姫(モチコ・ハヤコ)の
08-014 ヒキツリニ ユルセバカカヱ
関わりにより減刑されると、アメオシヒが二人を臣として召し抱え
08-015 クニオタス マイナイツカム
国を治めた。しかし、二人は賄賂を取り、
マメナラズ ツイニオロチニ
忠義を尽くさなかった。ついに流離ってきたモチコ姫とハヤコ姫に
【オロチニ ナメラレテ】 「オロチ」を7綾本文110では「大蛇のように執念深く」と訳したが、ここでは「オロチ」はそのようになったモチコ・ハヤコを指している。
08-017 ナメラレテ ノリノクズルル
操られて、国の規律が崩れた
フシブシニ ハタレノモノノ
隙に乗じ、ハタレの者たちが
【ハタレ】 徴(ハタ)る「催促する、とりたてる」が語源のようで、人の物を無理やり奪うような人達を指す。ここで出てくるハタレは、シムミチ、ハルナハハミチ、ヰソラミチ、ミダルキクミチ、ヰツナミチ、アヱノミチの6集団ある。
ウグメキテ サハイノコヱノ
集まりうごめき、騒々しい声を上げ
【サハイノコヱ】 「サハイ」は五月蝿。数が多いさまや、うるさいさまを比喩的に表す。
08-020 オソロシク ココサワヤマノ
恐ろしい状態に陥った。ココサワ山から
ハヤキキス ヒナグルツゲノ
急使者が杼を投げるように大急ぎで宮中に知らせにきたので
【ハヤキキス】 「キギス」はキジの古名。ここでは使者。
【ヒナグルツゲ】 機織りのとき、経糸の間に横糸を通すのに使った杼は素早く頻繁に左右に投げ渡された。
08-022 タカマニハ カミハカリシテ
宮中では協議をした。
08-023 ススミデル タケミカヅチガ
進み出たタケミカヅチは
08-024 ソムタケノ ヨロニスクルル
身の丈が十六丈もあり、万人に勝る
08-025 チカラニモ シラヌハタレノ
力を持っていたが、ハタレを知らなかったので
08-026 イブカサオ ウツヤヒタリノ
どうしたら討てるのかと言った。左の臣の
08-027 カナサキモ コタヱオシラデ
カナサキもどうしたらよいかわからないので、
08-028 ウカカヱハ アマテラシマス
伺うと、アマテルカミが
08-029 ミコトノリ ヤヤシルマコト
話された。「吾はいくらか彼らの実態を知っている。
08-030 ハタレトハ アメニモオラス
ハタレとは天上にいる者でもなく
カミナラズ ヒトノネチケノ
吾等の仲間でもない。ねじけた心の
【カミナラズ】 ここでいう「カミ」はアマテルカミの統治下の人々を指す。この時代は、人はアメミヲヤに始まるクニトコタチの子孫だと考えられていたので「カミ」と呼んだのであろう。
08-032 トキスグレ コリヱテムツノ
極めて強い人間が集まって、六つの
08-033 ハタレナル ニシキオロチノ
ハタレの集団になったものである。ニシキオロチの
08-034 シムミチヤ ハルナハハミチ
シムミチとハルナハハミチ、
08-035 ヰソラミチ ミタルキクミチ
ヰソラミチ、ミダルキクミチ、
08-036 ヰツナミチ ナルカミモトム
ヰツナミチ、雷を操るといわれる
08-037 アヱノミチ ミナソノシムオ
アメヱノミチの六つである。彼らは皆おのれの精魂の
08-038 ヌキトリテ ワザニモヱツク
限りを尽くし、自分の技で精も根も尽きてしまう。
08-039 オゴリヒノ ヒヒニミタビノ
奢って燃え上がっている心にも、一日に何回か
ナヤミアリ イカデオソレン
弱点が現われる。どうして恐れることがあろうか。
【ナヤミアリ】 この後、アマテル軍はハタレ達と戦うが、多くは食べ物を与える作戦で捕えているので、ハタレ達の悩み、すなわち弱点は「空腹」と想像した。アマテルカミはこの弱点を突く作戦を立てたのではないだろうか。
08-041 カンチカラ ハライノゾカハ
吾等に備わった力で払い除けば
08-042 オノツカラ ハハモイソラモ
自ずからハハミチもイソラをも
08-043 ヨリカヱシ イルヤモウケズ
押し返し、相手の射る矢は当たらず、
08-044 カミノヤハ カナラズアタル
吾等の矢は必ず当たる。
08-045 ハタレミノ ワザヤアラハス
ハタレ達のたくらみは見破れるであろう」。
08-046 フツヌシガ テタテオトエバ
フツヌシが、ハタレを討つ手立てを聞くと
08-047 カナサキノ ヲキナコタヱテ
カナサキの翁が答えた。
08-048 ワレモナシ ヰツクシオモテ
「私もその手立ては分かりません。ただ慈愛の心を持って当たるのが
08-049 カンカタチ ナカコスナオニ
アマテルカミのお心でしょう。心を素直にして当たれば