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08-155 キコシメシ ミコノクスヒニ
アマテルカミが聞かれて、皇子のクマノクスヒに
トワシムル トミアヤマチテ
喪に服しているわけを聞きに行かせた。タケミカツチが「我が誤って
【トミ】 臣の立場であるタケミカツチが、自分を指して言った。
08-157 ヨロモノマ ヒキカラシケリ
大勢のハタレを引っ張って殺してしまいました」と言うと、
08-158 マタクスヒ ソレハヒトカヤ
またクマノクスヒが「それは人なのか」と聞いたので、
08-159 ゴトクナリ カエコトアレハ
「そのようです」と答えた。クマノクスヒがアマテルカミに報告すると
08-160 ヲヲンカミ ツツヤニイタリ
アマテルカミは牢屋に行かれた。
08-161 ミタマエハ カタチハマサル
ご覧になると、姿かたちは猿で
08-162 カホハイヌ ソノモトキケバ
顔は犬のようであった。なぜそうなったかを聞かれると
ムカシハハ マサルニトツキ
ハタレは「先祖の母親が山の中の人に嫁いで
【マサルニトツギ】 マサルは猿。ここでは、アマテルカミの部族に属さず、山の中で猿のような生活をしている人、と解釈した。
08-164 ヨヨオヘテ ミナサルコトク
年月を経て、みんな猿のようになってしまいました」と言った。
08-165 ミコトノリ タマカエシセハ
アマテルカミが言われた。「魂返しをすれば
ヒトナラン サキニマカルモ
まともな人に生まれ変われるであろう。先に死んだ者たちも
【ヒトナラン】 ハタレはもともと人なので、アマテルカミ達の社会で通用する人として「まともな人」とした。
08-167 ヲオトキテ ヒトニウマルゾ
緒を解いて、まともな人に生まれ変わることができるぞ」。
08-168 トキニモモ ネガワクハカミ
それを聞いて、百人のハタレは「お願いです、アマテルカミ、
08-169 ヒトニナシ タマワレトミナ
そのような人に生まれ変わらせてください」とみな
マカレケリ ココストノミチ
自ら命を絶った。ココストの道によって
【ココストノミチ】 「ココ」は「心」、「ス」は「清」、「ト」は「トの教え」と解釈し、「ココストの道」を「心を清め真に正しい生き方をする教え」とした。
08-171 ヲヲンカミ ツハモノヌシト
アマテルカミはツワモノヌシと
08-172 フツヌシト タケミカツチニ
フツヌシとタケミカツチに
タマカエシ サルサルサハニ
魂返しをさせた。大勢の猿のような者が人として生まれ変わるための
【サルサルサワニ】 解りにくいが、漢字を充てると「猿去る多(サワ)に」とでもなろうか。猿のように生活していた大勢の人々が、タマ返しによって、その業から去ることができた、というようなことと解釈した。
08-174 オコルミチカナ      
魂返しが行われた。これが魂返しの初めである。
08-175 マタハタレ ツクシノミタリ
また筑紫にいるハタレの首領の三人が、
ナカクニノ ハナヤマノノニ
ナカ国の花山の野に
【ハナヤマ】 京都市山科区に花山と付く地名が多数残っている。この辺りか。
08-177 トモアツム トキニアマテル
仲間を集めていた。そこでアマテルカミが
08-178 ミコトノリ ウケモチノマゴ
ウケモチの孫の
08-179 カタマロニ クニミテカエレ
カタマロに「国の様子を見てまいれ」と命じた。
08-180 カタマロガ イタレバハタレ
カタマロが花山にやってくると、ハタレは
イロカエテ サキミタレタル
血相を変えて、先頭の者達は右往左往した。
【イロカエテ サキミタレタル キクミチノ】 ハタレが妖術などを使うという話にすると、「イロカエテ」は「辺りの様子を変えて」、「サキミタレタルキクミチ」は「咲き乱れる菊の花が咲いている道」とでもなろうか。
08-182 キクミチノ ココサワユクヤ
キクミチの集まっているココ沢を行くと
ヒメオドリ ムラクモタビヤ
突然燃える火が目を奪った。煙をもくもく出す松明や
【ヒメオトリ】 同じく「(山の中で)女が踊っている」となるだろうが、ここでの「ヒ」は「火」を表す文字ではないが、「火、目を取り」とした。
08-184 ホタルビノ ワラヒアザケリ
燃えさしの枝を持ってハタレ達が笑い嘲り、
イカリビノ アオタマハケバ
怒りをむき出しにして、青い木の実を投げてきたので
【イカリビノ アオタマハケバ】 同じく、「怒り火の青玉吐けば」となり、荒唐無稽な話になってしまう。このようにこの綾では解釈ノート62で断ったように、かなり無理があるが、現実にあり得ることに「大意訳」をした。原文に忠実に訳して、「このようにアマテル軍が感じた」とすることもできるので、読者の判断に任せたい。
08-186 ススミヱズ カタマロカエリ
それより先に進むことができなかった。カタマロが宮に帰って
08-187 モフストキ シバシカンガヱ
報告すると、アマテルカミはしばし考えて
ミコトノリ コレキクナラン
言われた。「これはキクミチであろう。
【コレキクナラン】 「キク」は「キ」(キツネ)と「ク」(クツネ)のこと。両者がひとつのハタレ集団となっているので「キクミチ」と名付けたのであろう。
キツネトハ キハネヨリナル
キツネと呼ぶ方は、もともと「ネ」の国に住んでいたが
【キツネトハ キハネヨリナル】 「キハ」の「キ」は「キツネ」の省略と考え、ハタレのキクミチは「ネヨリナル」すなわち、ネの国がもとで、「ツサ」(西南日本諸国)を経て、再びネの国に戻って住み着いた者たちなので「キツネ」呼ぶ、と解釈した。もともとはアマテルカミの民だったと考える。
08-190 ツサオヘテ ネニキテスメル
「ツサ」(西南)を回り、「ネ」の国に戻ってきた者達だ。
08-191 ネツミオバ アブラニアケテ
彼らにはネズミを油で揚げて
イトフベシ クハチトタガフ
食わすのがよい。クツネは少し違う。
【イトフベシ】 「イトフ」(厭う)は、「いやに思う・いやに思って避ける」と「大事にする・いたわる」という反対の意味を持つ。ここでの意味は後者であると思うので、そのようなニュアンスを持たせて「食わす」と訳した。
【クツネ】 狐の古名。「キツネ」と「クツネ」は同じ狐で、違いが判らないが、「キツネ」はかつてネの国を離れ戻ってきた集団で、「クツネ」はネの国に居ついていた集団と考える。
クハキウノ ヲノホオイトフ
クツネは灸の煙を嫌がる。
【キウノヲノホ】 「キウ」は「灸」の字を当てたが、今日の「お灸」と同じ概念のものかどうかわからない。ここでは物が燻されることとし、「ヲノホ」は出てきた煙をいうと解釈した。
ハジカミノ ヲガメガフスベ
辛い物である生姜や茗荷を燻して
【ハシカミノ ヲガメガフスベ】 「ハシカミ」は現代では生姜を指すが、山椒の古称でもある。「ハシカミノ」とあるので、両方に共通する「辛い物の」とした。「ヲガ」は生姜、「メガ」は茗荷の古名。ヲガについては確たる資料がなく、和仁估本の漢字訳による。フスベは燻べ、すなわちいぶすこと。
08-195 ヒシガント ミコトオウケテ
退治しよう」。その言葉を受けて
08-196 カタマロガ モロニヲシヱテ
カタマロはみんなに教え、
08-197 ノニイタル ハタレミタリガ
ハナヤマの野に行った。ハタレ三人が
08-198 サキミタレ イクヱカワリテ
右往左往していた。入れ替わり立ち替わり
08-199 オドロカス カタマロナケル
襲ってきた。カタマロは