ホツマツタヱ 全行現代語対訳

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08-200

揚げネズミを投げ入れた。キツネたちがそれを奪い合い

【キクタミ】 「キツネとクツネ」ではなく「キツネ」としたのは、ここだけハタレを「タミ」と表現し、本文205で「カエリモフデン」と言っていることから、本文189に書かれている、ハタレの仲間になったアマテルカミの元の民の「キツネ」であると考えたから。

08-201

貪り食っているところを諸臣達は一気に

08-202

攻め入った。ハタレ達が退いて逃げていくのを

08-203

追い詰め、千人を捕えて

08-204

切ろうとした。ハタレ達はみな嘆いて

08-205

「やつがれらを、再び

08-206

アマテルカミの民にしてください」と命乞いをした。

08-207

カタマロはハタレ達の縄を解いて許し、

08-208

蕨縄をたくさんなわせた。

08-209

生姜と茗荷を燻して

08-210

クツネ達が混乱したところを、更に戦い

08-211

追い詰め、ことごとく捕まえて

08-212

順に溜めておいた。ついに追い詰めて、

08-213

三人のハタレの首領を蕨縄で縛った。

08-214

残りのキツネやクツネを、広い網を

【キクツネ】 キツネとクツネを合わせて言ったもの。
【ミサトノアミ】 三つの里を覆うくらいの、ということで、広い網とした。

08-215

野に張ってみな追い込み

08-216

数珠つなぎにした。キツネとクツネを合わせると

08-217

大変大勢になった。首領の三人は牢屋に入れて

08-218

兵達はみな帰った。

08-219

またハタレがヒスミからヒタカミ、

【ヒスミヒタカミ　カクヤマト　フタイワウラ】 ハタレの移動経路。かなり長距離なので船での移動ではないかと考え、「カクヤマト」は「香久山と」ではなく「香久山本(富士の辺り)」とした。「ヒスミ」は津軽、「ヒタカミ」は東北中南部、「フタイワウラ」は二見浦のことと思われる。

08-220

カグヤマトと移動し、フタイワウラに

08-221

着いたとの報告が度々来たので

【ツグツゲノ　クシノハヒケハ】 「ツゲ」は柘植と告げを掛けている。「(柘植の)櫛の歯を挽く」は物事が頻繁に引き続いて絶えない例えで、告げが度々来ること。

08-222

諸臣は宮中会議を開いて

08-223

アマテルカミに出陣を願い、アマテルカミは

08-224

出陣されることになった。輦の中で

08-225

セオリツ姫はアメノミカゲを

【アメノミカゲ】 古語辞典では「日や雨をさえぎること、宮殿」とあるが、ここでは輦に乗っている姫が、団扇のようなもので日よけとしたのであろうか。

08-226

アキツ姫はヒノミカゲをアマテルカミに差しかざした。

【ヒノミカゲ】 アメノミカゲの対として書かれているが、アメノミカゲと同様。

08-227

イフキヌシとクマノクスヒは

08-228

白馬と黒駒に乗りアマテルカミの左右に添い、

08-229

諸臣はそれに続いた。山田に着いたときに

【ヤマダ】 宇治山田。アマテルカミは伊雑の宮(今の三重県磯部町)にいて、二見浦に向かうと、途中に宇治山田がある。行程的に考えても妥当な場所と思う。

08-230

先遣の者達を遣わすと、ハルナハハミチが

08-231

野山の景色が分からぬくらいの煙を立てて

08-232

火を燃やした。そして刺矢を霰のごとく射ってきて、

08-233

大声をあげて雷のように暴れたので味方は退却した。

08-234

アマテルカミはあらかじめサツサ餅に

【サツサニウタミツケ】 「サツサ」は12綾本文026に「サツサモチイ」とあり、餅のひとつ。「サツサ餅」とした。「ウタミ」は歌を書きつけた短冊。

08-235

短冊を付けておき、それを投げ込むとハタレ達は喜んで食べた。

08-236

アマテル軍はハタレ達をサッサツヅ歌ではやしたてた。

【サッサツヅウタ】 初めと終わりに「サ」が付き、真ん中に「ツ」の付く歌。「ツヅウタ」は続き歌で、十七、十九、十九・・・と続く歌。和仁估本原本にはホツマ文字の「サ」と「ツ」の間に「－」がつけられている。これは「サッ」と発音する促音便を表していると考える。「ツヅウタ」については39綾に詳しく書かれている。

08-237

「サスラもハタレも居場所を捨てて

【サスラデモ　ハタレモハナゲ】 「ハナゲ」のハは地面のこと。「地を投げる」で居場所を捨てて移る。それは「サスラ」と「ハタレ」の共通点。

08-238

天にも居らず地も捨てて、人でもないから三つ足らず。篝火焚いて祈るとも

【ミツタラズ】 ミツは三つ。この綾の本文029でアマテルカミが「ハタレは天にもいない、人(仲間)でもない」と説明しており、地も捨てるので「天地人」の三つとも欠けている、とした。

08-239

手立ては尽きて、祝詞も太鼓も

08-240

天には届かぬ。日・月の如くこの我は

【ヒツキトワレハ　アワモテラスサ】 「ヒ・ツキ」は天を支配するもの、「ワレ」は人(アマテルカミ)で、「アワ」は天地・この世。「アワモテラスサ」でこの世の支配者はアマテルカミだと、ハタレを煽った。

08-241

遍くこの世を支配するのさ」

08-242

と、諸臣が歌うと、ハタレは怒って

08-243

次々と矢を射ってきた。しかし、アマテルカミの歌で心が乱れ

【タミメ】 書き物。タミメというと「印相」と訳すことが多いが、ここではサツサツヅウタの内容に激怒し、心が乱れたためとする方が合理的ではないか。この他にも「タミメ」は何か所か出てくるが、書き物と訳して不都合はない。

08-244

矢は当たらなかった。ハタレはますます怒って

08-245

火を放った。アマテルカミが水を

【カミミツハメオ　マネクトキ】 本文233でも「ナルカミ」が出てくるが、これらの神の意味する現象を現実の話として表現した。