【オクルカワカリ】 葬送の者が鳥の姿(役割)となる、この時代の葬儀の一方法か。または正式な葬儀のできない場合の仕方か。「カワカリ」はどんな鳥かと江戸時代の鳥類図鑑を調べても載っていない。近世植物・動物・鉱物図譜集成、観文禽譜に、かろうじて「河雁・川雁・カハガリ」などの言葉を見つけることができた。ところが、「カワカリ」は記紀の記述によるものであった。振出しに戻った形になってしまったが、唯一次のような文があった。「(略) 雁をも鴨をもカルといひしと見ゆ (略) 黒鳧の肉淡黒、可食といへるはカルカモの本名カハガリ略してカルとも云う。(略) 纂疏には川雁は鳧雁の類を謂うとあり」(抜粋、一部漢文は読み下し文に変えた)これからすると、「カワカリ」は江戸時代にはすでに何の鳥か分からなくなっていたようであるが、「カワカリ」はカルガモのことだと書かれていることを頼りにカルガモと訳す。
【キサリモチ】 秀真政伝では、死体の頭を持って悔みに来る人々に対面させる役としている。記紀の解釈も諸説紛々である。「キサリ」の確かな意味は不明だが、ここでは葬列の中の役割として考え、「キ」を棺として遺骸を運ぶ役とする。 【ヨハキシ】 40綾本文108に「オバハアタカモ カミノヨノ ヨハキシゾコレ」、同211に「オシヤマスクネ カフリミハ ヨハキシモチテ トミムタリ」、同288に「ヱトノタケヒコ ヨハキシオ マテニナラビテ」と出てくる。本文と合わせたこの四つの文から、少なくも葬列で持つ物であると推測できる。「ヨハキ」を「世掃」と読むと、葬列の浄めの意味があるように思われる。和語の「シ」に当たる漢字は「為」しか見つけられないのでそのように為すものを言うのか、具体的にはどんなものか分からないが、「尾羽はあたかも神の世のヨハキシのようだ」の「尾羽」の形態と、近年まで地方の葬列で、花をつけた飾りを持っていくのを見かけたことと合わせて、葬列で持つ飾りとして、造語になるが「世掃花」と考えた。
【カナヤマヒコ】 6綾に「ウチミヤニ カナヤマヒコガ ウリウヒメ」と名前は出てきている。娘が妃に選ばれ、かつ中山道を拓いたとなると、どのような人物なのだろうか。今は岐阜県にある南宮大社(仲山金山彦神社)の祭神として祭られ、金属・鉱山の神とされているようである。「未魁の新説異説」で詳しく述べるが、私は、この時代に土木に優れ製鉄にも通じていた人物とすると、渡来人だと考える。唐突のようだが私は、この人物が伝説の人とされている徐福ではないかと推理する。「史記」の「秦始皇本紀」等に書かれている徐福の渡来にかかわる記述と、日本での伝説などと、これも「新説異説」で触れるがホツマツタヱから私が算出した年代が一致すること。「カナヤマ」という名前は、徐福の出身地、江蘇省カンユ県金山郷(程天良著、池上正治訳「徐福霧のかなたへ」による)の「金山」を和語の「カナヤマ」に置き換えたものとも考えられること。等々、カナヤマヒコは徐福だと思えてくるのである。
【メロヨシニ】 広辞苑に「網の目を引き寄せること」とあるが、出典は神代紀で、ここと同じ場面から引かれている。 【ヨシヨリコネイ】 「メロヨシ」にするのではなく、仲人を立て手続きを踏んでほしいということ。
【ウス】 ウビチニとスビチニが初めて結婚という形をとったことから、結婚する男女を、その頭文字をとって表したのではないか。 【カモイトムスブ】 大言海で「カモ」を引くと「かりも」に同じとある。「かりも」の項には「ゆかりなし、ゆくりなし」とある。「ゆかりなし・ゆくりなし」は「思いがけず、図らずも、不意に」という意味であるから、「カモイトムスブ」は「思いがけず糸を結ぶ」となる。「糸を結ぶ」は二人が結ばれることと考えられる。アチスキタカヒコネの怒りを鎮めようとしてオグラ姫が歌った歌が思いがけず二人を結んだのだが、後々「カモイトムスブ」は、歌のやり取りで男女の縁が結ばれることを言うようになったのではないか。