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10-088 コノタビハ タカミムスビノ
この度はタカミムスビが、
10-089 トミカレオ ノゾクカドデノ
奢って立場をわきまえないオホナムチを諌めるための門出である
10-090 カシマタチ ワニスキマツル
カシマダチを、地の神を祭って祈った。
10-091 カミハカリ フツヌシヨシト
宮中会議で、出雲へ遣わすのは誰が良いかと謀ると、「フツヌシがよい」と
10-092 ミナイエバ タケミカツチガ
皆が言った。タケミカツチが
10-093 ススミイデ アニタタヒトリ
進み出て「何故ただ一人
10-094 フツヌシガ マサリテワレハ
フツヌシだけが優っていて、我が
10-095 マサランヤ タカキイサミノ
優っていないというのですか」と言った。なんと素晴らしい心意気の
10-096 ミカツチヤ フツヌシソエテ
タケミカツチであることかと、フツヌシを伴わせて
カシマタチ イツモキツキニ
カシマダチの命を下した。出雲の杵築に着き
【イツモキツキ】 出雲大社。杵築大社が明治4年に出雲大社と改称した。
10-098 カフツチノ ツルキオウエテ
カフツチの剣を地に立てて
10-099 ウツクマリ ナチリトフナリ
かがんで礼をして、タケミカツチがオホナムチの非を質(タダ)した。
10-100 ミホコリテ アサムクミチオ
「わが身を奢って、道理をないがしろにしたのを
10-101 ナラサント ワレラツカフゾ
糺そうと、我らが遣わされました。
10-102 ソノココロ ママヤイナヤヤ
汝の気持ちは、君の言うことに従うのか否かどちらですか」。
10-103 オホナムチ コタヱトワント
オホナムチは、どう答えたものかと聞こうと
ミホサキノ ツリエキキスノ
美保崎で釣りをしている息子のクシヒコの元へ使者の
【ミホサキ】 島根県島根半島の美保関。
【ツリエキキスノ】 「ツリ」は、隠棲して釣りをしていたクシヒコ。そこへ使者が行った。
10-105 イナセハギ アメノコタエオ
イナセハギをやり、タカミムスビへどう答えたらよいかを
10-106 トフトキニ コトシロヌシガ
聞いた。コトシロヌシのクシヒコが
ヱミスガホ ワレスズカニテ
笑顔で言った。「我が『スズカの道の教え』に従って
【スズカ】 「スズカの道の教え」端的に言えば欲を去ること。13綾に詳しく説明されている。
10-108 タラチネニ ホロロナケドモ
父上をよくよく説得しても
10-109 チノタヰゾ サカナトキルモ
父は釣られた鯛のように何もしなかったが、魚のように切ってしまうのも
オロカナリ タカマハタミノ
愚かなことです。タカマより、今は民の身である我の
【タカマ】 宮中。この場合はタカミムスビ。
【タミノヱミスダイ】 オホナムチが奢って責められるこの場面では、「タミ」はコトシロヌシとなる。ということは、クシヒコは父親を説得しても聞き入れられず隠棲して民の身でいたと考えられる。「ヱミス」は笑みす。ここではクシヒコが自分のことを言った。「タイ」は「チノタイ」のオホナムチのこと。
ヱミスタヰ ヰトカケマクゾ
父に大変心にかけてくださる
【イトカケマクゾ】 タイ(父親のオホナムチ)に釣り糸を掛けてつりあげること。すなわちオホナムチを宮に呼びつけることであるが、「カケマク」は、心にかけて思うことという意味もある。ここでは有無を言わさずオホナムチを制裁するのではなく「ママヤイナヤ」と、「ママ」の場合は情状酌量の含みを持たせていると解釈できるので、クシヒコは「大変心にかけてくださる詔」と感じたと解釈した。
10-112 ミコトノリ ワガチチサラバ
詔がありました。わが父が出雲を去れば
10-113 モロトモノ カエコトナセハ
我も一緒にここを去ります」。これをイナセハギがオホナムチに伝え、
10-114 マダヒトリ アリトイフマニ
(オホナムチがそのようにしようとしたとき)「まだ一人いるぞ」と言って
10-115 アラハルル タケミナカタゾ
タケミナカタが現れた。
チビキイワ ササケテタレカ
大変重い岩を持ち上げて、「誰が
【チビキイワ】 千人かからなければ引けないような大変重い岩。
10-117 ワガクニオ シノビシノビニ
我が国を密かに
10-118 オトサンヤ イテワガチカラ
攻め取ろうとしているのだ。出てこい。我と力を
10-119 クラヘント トルテモイワノ
比べてみろ」と岩を投げたが、捕える側の岩のような
10-120 ミカツチガ トラエテナグル
タケミカツチが受け取って
アシガヒノ オソレテニクル
まるで葦の芽のように軽々と投げ返した。タケミナカタは恐れて
【アシガヒ】 広辞苑に「あしかび【葦牙】葦の若芽」とある。
シナノウミ スワトイフトキ
信濃湖まで逃げた。いざ切られるという時、
【シナノウミ】 今の諏訪湖。
【スワトイフトキ】 諏訪湖のスワと・いざという時のスワを掛けている。
10-123 カシコミテ ワレオタスケヨ
「畏れながら申し上げます。我を助けてください。
10-124 コノトコロ ホカエハユカジ
この地より他へは行きません。
10-125 ソムカジト イエハタスケテ
絶対に叛きません」とタケミナカタが言ったのでタケミカツチは許して
10-126 タチカエリ トエハコトフル
出雲まで帰った。タケミカツチがオホナムチにどうするかと聞いたところ、
10-127 オホナムチ ソノコノママオ
オホナムチは我が子クシヒコの言った通りに
10-128 フタカミエ ワガコサリニキ
フツヌシとタケミカツチの二人に答え、「我が子は既にここを去りました。
10-129 ワレモサル イマワレサラハ
我もここを去りましょう。今我がここを去ったら
10-130 タレカマタ アエテナレナン
誰かまたここを治めるだろうが、強いて治めることのできる
10-131 モノアラジ ワガクサナギノ
者がいるであろうか。我の草薙の
10-132 コノホコニ ナラシタマエト
この矛で、うまく治めるようにして欲しい」
10-133 イヒテサル サカフハキリツ
と言い残して去って行った。フツヌシとタケミカツチは逆らう者は切って
10-134 マツラフハ ホメテモロカミ
服従したものは誉め、諸臣を
10-135 ヒキイツツ アメニカエレハ
率いてアメの今宮に帰った。
コフノトノ マツリオトツテ
コフの殿で政を執っていた君のオシホミミが
【マツリオトツテ】 「執って」と訳すしかなく、促音の「っ」となる「ツ」の使い方があったということになる。書き写すうちに「トリテ」の「リ」が「ツ」になったのだろうか。
10-137 ミコトノリ ナンヂフツヌシ
詔を下した。「汝フツヌシよ