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タラチネノ ハヤヂニカバネ
アメワカヒコの両親は、急いで駆けつけて息子の遺体を
【ハヤヂニカバネ ヒキトリテ】 「ハヤヂ」は「疾風(ハヤチ)」か。26綾本文025にも「ハヤヂニキタノ ツニツキテ」とあり、急いで行くことと解釈できる。
10-048 ヒキトリテ モヤオツクリテ
引き取って喪屋を作り
カリモカリ オクルカワカリ
仮の葬儀を行った。遺体を喪屋まで送る葬列は、カルガモは
【オクルカワカリ】 葬送の者が鳥の姿(役割)となる、この時代の葬儀の一方法か。または正式な葬儀のできない場合の仕方か。「カワカリ」はどんな鳥かと江戸時代の鳥類図鑑を調べても載っていない。近世植物・動物・鉱物図譜集成、観文禽譜に、かろうじて「河雁・川雁・カハガリ」などの言葉を見つけることができた。ところが、「カワカリ」は記紀の記述によるものであった。振出しに戻った形になってしまったが、唯一次のような文があった。「(略) 雁をも鴨をもカルといひしと見ゆ (略) 黒鳧の肉淡黒、可食といへるはカルカモの本名カハガリ略してカルとも云う。(略) 纂疏には川雁は鳧雁の類を謂うとあり」(抜粋、一部漢文は読み下し文に変えた)これからすると、「カワカリ」は江戸時代にはすでに何の鳥か分からなくなっていたようであるが、「カワカリ」はカルガモのことだと書かれていることを頼りにカルガモと訳す。
キサリモチ ニワトヨハキシ
「キサリモチ」、ニワトリは「ヨハキシ」、
【キサリモチ】 秀真政伝では、死体の頭を持って悔みに来る人々に対面させる役としている。記紀の解釈も諸説紛々である。「キサリ」の確かな意味は不明だが、ここでは葬列の中の役割として考え、「キ」を棺として遺骸を運ぶ役とする。
【ヨハキシ】 40綾本文108に「オバハアタカモ カミノヨノ ヨハキシゾコレ」、同211に「オシヤマスクネ カフリミハ ヨハキシモチテ トミムタリ」、同288に「ヱトノタケヒコ ヨハキシオ マテニナラビテ」と出てくる。本文と合わせたこの四つの文から、少なくも葬列で持つ物であると推測できる。「ヨハキ」を「世掃」と読むと、葬列の浄めの意味があるように思われる。和語の「シ」に当たる漢字は「為」しか見つけられないのでそのように為すものを言うのか、具体的にはどんなものか分からないが、「尾羽はあたかも神の世のヨハキシのようだ」の「尾羽」の形態と、近年まで地方の葬列で、花をつけた飾りを持っていくのを見かけたことと合わせて、葬列で持つ飾りとして、造語になるが「世掃花」と考えた。
スズメイヰ ハトハモノマサ
スズメは「イヰ」、ハトは「モノマサ」、
【イヰ】 飯。使者に捧げる食物をささげ持つ役のことであろう。
【モノマサ】 葬儀で死人に代わって弔問を受ける役(広辞苑)
サザキミソ トビユフマツリ
ミソサザイは「ミソ」、トビは「ユウマツリ」の役で
【サザキミソ】 「サザキ」はミソサザイ。小さいがよく通る声でなく。「ミソ」は「泣きみそ」で泣き役。
【ユウマツリ】 「ユウ」は幣。幣を持つ役、もしくは幣を持って祀りを行う役であろう。
カラスツカ ヤヒヤヨイタミ
カラスは塚に納める役。八日八夜死を悼み
【ツカ】 遺骸を塚に収める役か。
10-054 モオツトム タカテルノアニ
喪に服した。タカテル姫の兄の
10-055 タカヒコネ アメニノホリテ
アチスキタカヒコネが都に上って来て
10-056 モオトエハ コノカミスガタ
弔問にきたところ、このタカヒコネの姿が
ワカヒコニ ウルリワケヱズ
アメワカヒコによく似ていて見分けがつかないほどであった。
【ウルリワケエズ】 奉呈文本文082には「ワリウルリ」と出ている。瓜を二つに割ったときその断面が全く同じで区別がつかないことから、よく似ていること。
10-058 シムノモノ キミハイケリト
親族の者が「アメワカヒコは生きている」と
ヨヂカカリ ヤホタマユラト
すがりついてきて、八年ぶりに会えたと
【ヤホタマユラ】 「タマユラ」は「ほんの少しの間、しばしの間」の意の語である。会えたと思った瞬間「8年がほんの少しの間に感じられた」ということと捉えて「8年ぶり」と意訳をした。
10-060 マドフトキ イカルアチスキ
見間違えたので、アチスキタカヒコネはひどく怒った。
10-061 タカヒコネ トモナレハコソ
「友だからこそ
10-062 オチニトフ ワレオナキミニ
遠路はるばる訪ねてきたのに、我を死者と
10-063 アヤマツハ アラケガラシヤ
見間違えるとは、ああ、汚らわしい。
10-064 ハラタチト モヤキリフセル
腹が立つ」と喪屋を切り倒して
アオハカリ サケテカントオ
アオハカリを下げ斎場を
【アオハカリ】 正確な意味は不明だが、喪屋を切り倒したとすると、剣であることは間違いない。
10-066 サラントス ムカシナカヤマ
立ち去ろうとした。昔、中山道を
ミチヒラク カナヤマヒコノ
拓いたカナヤマヒコの
【カナヤマヒコ】 6綾に「ウチミヤニ カナヤマヒコガ ウリウヒメ」と名前は出てきている。娘が妃に選ばれ、かつ中山道を拓いたとなると、どのような人物なのだろうか。今は岐阜県にある南宮大社(仲山金山彦神社)の祭神として祭られ、金属・鉱山の神とされているようである。「未魁の新説異説」で詳しく述べるが、私は、この時代に土木に優れ製鉄にも通じていた人物とすると、渡来人だと考える。唐突のようだが私は、この人物が伝説の人とされている徐福ではないかと推理する。「史記」の「秦始皇本紀」等に書かれている徐福の渡来にかかわる記述と、日本での伝説などと、これも「新説異説」で触れるがホツマツタヱから私が算出した年代が一致すること。「カナヤマ」という名前は、徐福の出身地、江蘇省カンユ県金山郷(程天良著、池上正治訳「徐福霧のかなたへ」による)の「金山」を和語の「カナヤマ」に置き換えたものとも考えられること。等々、カナヤマヒコは徐福だと思えてくるのである。
10-068 マコムスメ シタテルオクラ
孫娘のシタテルオクラ姫が
10-069 タカヒコノ イカリトカント
アチスキタカヒコネの怒りを鎮めようと
10-070 ミチカウタ ヨミテサトセリ
短歌を詠んで諭した。
10-071 アメナルヤ オトタナバタノ
「都にいる織姫のわたくしは
ウナガセル タマノミスマル
うなじに珠の首飾りをかけています。
【ウナガセル】 「ウナグ」うなじに掛けること。
ミスマルノ アナタマハヤミ
(貴方を思い、胸が高鳴り)首飾りのアア何と早く揺れることでしょう。
【ミスマルノ アナタマハヤミ】 「アナ」感嘆詞「ああ」。「タマ」は珠の首飾り。「ハヤミ」は早いので。ここではオグラ姫の気持ちを表している。
タニフタワ タラズアチスキ
私の胸を満たしてくれるのは、
【タニフタワ タラズ】 「タニフタワ」は谷を作る二つの地。女性の胸のこと。「タラズ」では意味が通らない。他の写本では「タラス」となっているので、そちらを採って「満たす」とした。
10-075 タカヒコネゾヤ      
アチスキタカヒコネ命、貴方だけです」。
10-076 コノウタニ ツツキモシレリ
この歌を聞いて、その先に何が言いたいのか分かった
10-077 タカヒコモ イカリユルメテ
アチスキタカヒコネは、怒りも静まり
タチオサメ ミトノミヤビオ
太刀を収めて、宮人としての上品な求婚の仕方を
【ミトノミヤビ】 「ミト」は「ミトアタワス」の略で、結婚すること。
10-079 サトサント コタエノウタニ
教えようと、歌で応えた。
10-080 アマサガル ヒナヅメノイハ
「都より遠く離れた田舎勤めの我の気持ちは
タタセトヒ シカハカタフチ
ただ親友の弔問に来ただけです。このように我は独りになってしまいました。
【カタフチ】 川の片側にできている淵のこと。親友を欠いて独りになったことを表している。「セトヒ」は親友を訪ねることと訳しているが、「セ(瀬)」と「フチ(淵)」が対になって表現されている。
10-082 カタフチニ アミハリワタシ
その独りになった我に網をかけて
メロヨシニ ヨシヨリコネイ
引き寄せようとしたのですね。引き寄せるのではなく我の方へ来てください。
【メロヨシニ】 広辞苑に「網の目を引き寄せること」とあるが、出典は神代紀で、ここと同じ場面から引かれている。
【ヨシヨリコネイ】 「メロヨシ」にするのではなく、仲人を立て手続きを踏んでほしいということ。
シカハカタフチ      
そうすれば、我の思いは深いのですから」。
【シカハカタフチ】 この前で自分をカタフチ(片淵)と表現しており、ここでは自分の思いの深さを淵の深さで表している。すなわち、自分もシタテルオグラ姫を愛する気持ちを深く持っているということ。
10-085 コノウタハ ノチノヱニシノ
この歌のやり取りは、後々縁があって
アフウスノ カモイトムスフ
出会った男女が歌のやり取りで図らずも結ばれるという
【ウス】 ウビチニとスビチニが初めて結婚という形をとったことから、結婚する男女を、その頭文字をとって表したのではないか。
【カモイトムスブ】 大言海で「カモ」を引くと「かりも」に同じとある。「かりも」の項には「ゆかりなし、ゆくりなし」とある。「ゆかりなし・ゆくりなし」は「思いがけず、図らずも、不意に」という意味であるから、「カモイトムスブ」は「思いがけず糸を結ぶ」となる。「糸を結ぶ」は二人が結ばれることと考えられる。アチスキタカヒコネの怒りを鎮めようとしてオグラ姫が歌った歌が思いがけず二人を結んだのだが、後々「カモイトムスブ」は、歌のやり取りで男女の縁が結ばれることを言うようになったのではないか。
ヒナフリハコレ      
結婚に至るまでの習わしとなった。
【ヒナブリ】 辞書では「田舎風であること」のように書かれているが、ここでは結婚の風習・習慣を指している。