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13-092 ヲヲンカミ ホメテタマハル
アマテルカミは称賛して、
13-093 カマトカミ テナベオサクル
カマドカミという称号を賜りました。手鍋を下げる
13-094 キタナキモ ミガケハヒカル
穢い竈も、磨けば光って
13-095 カミトナル クニモリタミノ
神となるのです。国守や民に
サトシニモ ツクマナサセル
教える時にも、『ツクマ鍋や煮捨竈も神となれる』という
【ツクマナサセル】 「ツクマナス」は、「テナベオサクル キタナキモ ミガケハヒカル カミトナル」の部分を指し、そのようにさせるのが「イセノミチ」だということと解釈した。
13-097 イセノミチ コスヱオモフニ
イセの道の教えが役立ちます。子々孫々を思えば
13-098 イマシメノ ナケレハミタル
この戒めがなければ、世の中が乱れてしまいます。
13-099 ハタレマノ タカラアツメテ
ハタレのように、財を集めても
13-100 スヱキユル ソレススクラゾ
後には子孫が絶えてしまいます。これを『スズクラ』といいます。
13-101 イキノウチ ホシオハナルル
生きているうちに我欲を捨てること、
13-102 コレハススカゾ      
これを『スズカ』といいます」。
13-103 チチヒメハ タレヨリイデテ
チチ姫が御簾から出てきて
13-104 ワカヒコニ イマキクスズカ
ワカヒコに「今聞いた『スズカ』というのは
ワガヰミナ キミタマワレド
わたしの諱でもあります。君からいただきましたが
【キミ】 ここではヲシホミミ。
13-106 ワケシラス マタトキタマエ
その意味が分かりませんでした。もう少し教えてください」と言った。
13-107 コタエトク スズハマサカキ
ワカヒコが説明した。「スズというのはマサカキのことで
ホスヱノビ トシニキナカノ
生長していくと、一年に一寸(キ)の半分ずつ伸び、
【キナカ】 「寸(キ)」は古代の長さの単位。今の「寸(スン)」とほぼ同じ長さと言われる。
ムヨロホギ ホシヰオサレハ
寿命は六万年です。人は欲心を捨てれば
【ムヨロホギ】 「ホギ」がわかりにくいが、「ホ」は年、また「ホギ」で寿ぐと解釈し、ここでは寿命とする。
ススカナリ タカラホシキハ
スズのように末永く栄えます。それが『スズカ』なのです。財を欲しがると
【ススカナリ】  「スズ」(長寿のマサカキ)のように「カ」(明るい・正しい)こと。末永く栄えること。
13-111 スヱキユル トキニカルキミ
子孫は滅びます」。その時、カルキミが
13-112 ススミイフ ナンゾトガムヤ
進み出て言った。「どうして我が
13-113 ワガタカラ ヒトタタユルゾ
財を持っていることが悪いというのでしょうか。人は褒めてくれますぞ」。
コノコタヱ ヒトノサイワヒ
ワカヒコが答えて「人は財を持ち幸せにしていると
【ヒトノサイハヒ ワガマヨヒ マカリクルシム】 ここは人の関係が読み取りにくい。「ヒト」を、財を持っている幸いな人とすると、「ワガ」はそれを見て妬み迷う人。死後に苦しむのはどっちか。「タカラホシキハ スエキユル」「ホシヰオサレバ スズカナリ」を合わせて考えれば、財を持っている人となる。これより「妬みを買って」と訳した。
13-115 ワガマヨヒ マカリクルシム
それを見ている人の妬みを買って、死後に苦しむのです」。
13-116 マタイワク タノシクオラハ
するとカルキミが言った。「生きている時に楽しければいいのではないですか」。
13-117 カスガマタ ウイオシレルヤ
カスガがまた言った。「命の始まりをご存知ですか」。
13-118 アメニウケ アメニカエルゾ
カルキミが「天から命を授かり、天に帰ります」と言うと、
13-119 カスガマタ キミニテモホシ
カスガがまた「君のような立場の人でも欲はあります。
13-120 タミハナオ ススカノフミオ
民ならなおさらのことです。『スズカの文』を
13-121 ミサルカヤ ヲキナウナツキ
見たことがないのですか」。カルキミはうなずいて、
13-122 クシヒコガ イサメノススカ
「息子のクシヒコが、私を諌めたときに言った『スズカの道の教え』が
13-123 イマトケリ クルシミハナニ
今やっと分かりました。苦しみとはどんな苦しみなのですか」と尋ねた。
13-124 カスガトク ムカシトヨケノ
カスガが説明した。「昔、トヨケカミが話されました。
13-125 ミコトノリ ワレミヨオシル
『吾は三世を生まれ変わってきた。
13-126 ハツノヨハ クニトコタチゾ
一世目はクニトコタチであった。
13-127 アメニユキ ミルモトアケノ
吾は天界に帰り、そこにいたモトアケの神の
13-128 モリサタメ フタヨムスビノ
役割を定めた。二世目はタカミムスビとして生れ、
モヨロホギ ユキテタマノヲ
百万年の寿命で、天界に行って生れてくる子どものタマに緒を
【タマノヲナス】 天界から地上に下ろされたタマをこの世にあるシイと、緒によって結びつけて子どもの魂にする術。タマキネ(トヨケ)が、クニトコタチからタカミムスビ、タマキネと3代生まれ変わったと話したことであって、実際の話ではない。
13-130 ナスオキク イマタマギネモ
結ぶ術を学んだ。今はタマキネとして生きて
13-131 ヤヨロトシ ホシニムサボル
八万歳になるが、我欲を貪る
13-132 ココロナク ユキキノミチモ
心も持たず、人の天界への行き来の術も
13-133 オホヱシル メヲオムスビテ
身につけた。男女が結ばれ、子ができると
13-134 ヒトココロ ヨニカエルトキ
人の心が天よりこの世に還り、その子が
13-135 スグナレバ マタヨクウマレ
素直な心で一生を終えれば、次の世も素直な心で生まれることができる。
ヨコホシハ アヱカエラヌゾ
よこしまな欲が強いと、人として還ることができないのだ』」。
【アヱカエラヌゾ】 「アエ…ズ」は、しようとしてできない。
13-137 マタトワク ヒハヲニカエリ
またカルキミが尋ねた。「火は燃えて空に還り、
13-138 ミツハメニ ヒトハヒトミニ
水は地に還ります。人は人の体に
カエランカ イワクハグサヤ
還るのではありませんか」。ワカヒコが言った。「田畑に生えても雑草や
【ハグサ】 水田に生えて稲を害する雑草(広辞苑)
オノコグサ ヰネアワナラス
オノコ草は米や粟にはなりません。
【オノコグサ】 広辞苑に「おとこぐさ(男草)」として、「荻の異称」とある。荻は水辺に生えるイネ科の多年草。食用にはならない。
13-141 アヤカリテ ヒトモウマルル
同じように、人もそのように生れてきます。