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13-142 ミチワスル タトエハタシム
スズカの道を忘れて、例えば
カラシムシ ウオトリケモノ
芥子や上等なカラムシなどの贅沢を好めば、魚や鳥や獣と
【カラシムシ】 このあとに「ホメハウマキニ」とあることから、カラシとカラムシを重ねて書いてあると判断して解釈した。辛子は香辛料を表していると思われる。中世ヨーロッパでは、胡椒と金銀が同重量で交換されたとも言われるほどの貴重品だった。おそらくここでも香辛料は貴重品だったのではないか。カラムシはイラクサ科の多年草。茎の繊維を織物にした。古代の一般的な織物とも考えられるが、糸の紡ぎ方によっては現代に通用する上等な織物ができるようである。葛や楮(コウゾ)、科(シナ)などの繊維より上等なのかは定かでないが、カラムシはかなり細い糸が採れたようで、そのような織物は贅沢だったのかもしれない。
13-144 アイモトム テレハタカラハ
惹かれ合うのです」。「それでは、財は
13-145 ナンノタメ ホメハウマキニ
何のためにあるのですか」。「上等な着物やおいしい食べ物に
13-146 フケルユエ マレニウマルモ
うつつを抜かしているから、たまたま次の世に人として生れてきても
マツシクテ ヤツコトナリテ
貧しくて、しもべとなって
【ヤツコトナリテ】 和仁估本では「ウリテ」となっているが、小笠原長弘本に「ウ」の横に「ナ」と書き込まれている。「ナリテ」ではないかということで、私もそう考え「ナリテ」とする。それだと訳しやすい。この時代に「ウル」が、現代の「身を売る」というような使い方がされていたのか不明なので、意味が通じる「ナリテ」とした。
13-148 ミオシノギ ヒトタノシマス
耐え忍び、人を楽させるだけの人生になってしまうのです。
13-149 カノホシオ ウラヤムヒトガ
そのように財のある人は、羨む者の
カムユエニ タマノヲミタレ
妬みの心が取り憑くのでタマの緒が乱れて、
【タマノヲミタレ】 天界から降ろされた、良心や善などの部分のタマと、もともと地上にある欲などの醜い部分のシイを結んでいる緒が絡まってタマが天に還れないこと。
ツヂカセノ チマタニシヰノ
辻風の吹く道でシイが
【チマタニシヰノ クルシミガ】 タマとシヰが絡まった状態の「タマシイ」。天に還れない魂が道端で苦しんでいるうちに獣の体に入ってしまうと考えたのであろう。
13-152 クルシミガ ケモノトナルゾ
苦しみ、タマが獣に生まれ変わってしまうのです。
カミウタズ タトエハユメノ
神がその人に罰を与えるのではありません。例えば夢で
【ユメノオソワレ】 悪夢が恐ろしくて自殺するとは考えにくいが、「オソワレ」を広辞苑で調べると「おそわれる(「おそ」は「厭」の下に「鬼」)、夢で恐ろしいものに苦しめられる。うなされる。」とある。人知の及ばないものへの畏怖心の強かった時代には、こういうこともあったのだろう。
13-154 オソワレノ シノビカタクテ
恐ろしいものに苦しめられ、我慢できなくて
13-155 ワキマエズ マカルノツミモ
前後の見境もなく自殺しても、その罪でまた
13-156 オソワレゾ ヒトオマドワス
死後も苦しめられるのです。他人を惑わす
13-157 ワガホシモ ヒトハウタネド
我欲も、他人は手を下しませんが
13-158 タマノヲニ オボヱセメラレ
自分のタマの緒が覚えていて、それに責められて
13-159 ナガキユメ アメノマツリオ
苦しい夢をずっと見続けることになるのです。そのような時は天の神を
タテオケヨ カバネノミヤニ
祭り、姓の宮に
【カバネノミヤ】 「姓の宮」と読み、先祖を祭る宮と解釈した。
13-161 カンクラオ モフセバヲトケ
神座を設けて祈れば、タマの緒が解けて
13-162 ヒトナルゾ マツリナケレハ
人に生まれ変わることができます。これらの祭りをしなければ
13-163 アマメグミ モレテオツルゾ
天の恵みから漏れ落ちてしまいます。
コオモテヨ モシツマウマズ
まずは継ぎ子をもうけなさい。もしも、妻が産まず
【コオモテヨ】 唐突な話の転換のようだが、次のように考える。「姓の宮」を祭るということは、血統が続いていることが必要で、血統をつなげるためには「継ぎ子」がいなくてはならない。そこで始めの「イセノミチ」の話に戻った。
タネタエハ メカケメヲキテ
世継ぎがいない時は、妾を置いて
【メカケメヲキテ】 妾女。この綾の本文068の「ウマズハヨソノ メオメトレ」と同じ考え方。現代では許されない考え方だが、この時代の子孫を残すための方法。近代までその考え方は続いた。
13-166 タネナセヨ メカケトナレル
世継ぎを作りなさい。妾となった
13-167 メノツトメ ツマオウヤマエ
女の務めは、妻を敬うことです。
13-168 メカケメハ ホシニナゾラフ
妾は星に例えられます。
13-169 ホシヒカリ ツキニオヨバズ
星の光は月には及びません。
13-170 ウツクシモ ミヤニナイレソ
妾が美しくても、宮に入れてはいけません。
アマノハラ ツキナラフレハ
空に月が二つ並んでいたら
【ツキナラフレハ クニミタル】 空に月が二つあるとなぜ国が乱れるのか判然としないが、在り得べからざる物があってはいけないということか。
13-172 クニミタル ツマトメカケト
国は乱れてしまいます。それと同じように妻と妾とを
13-173 ヤニイレバ イヱオミタルゾ
家に入れれば、家が乱れます。
13-174 ツキハヨル ツマナウトミソ
妻は夫と夜を過ごすものです。妻を疎んじてはいけません。
13-175 ウチヲサム メカケノコトバ
家の中をまとめるのに妾の言葉を
13-176 ナマツリソ コオウムモリハ
取り上げてはいけません。子どもを産む役割の妻が
ウマヌトキ スツルムラボシ
例え子どもを産まないからといって、捨てて群星にしてしまうと
【ムラボシ】 世の中に大勢いる女性。
ノリミタル インシアマカミ
則に反し、世の中が乱れます。昔アマカミは
【インシアマカミ ホシトナル】 「インシ」は「往にし」の音便。過ぎ去ったこと。往時。「アマカミ」は何を指すか。ミカサフミの「タカマナルアヤ」に「ミナカヌシ オヨビヱヒタメ トホカミモ アメニクバリテ ホシトナス」「ノチソヒノキミ キツヲサネ アミヤシナウモ アニカエリ サコクシロニテ ミコトノリ ミナホシトナス」「クニトコタチノ ナヨノカミ ミナサコククシロ ヨリノホシ」「ヨソコノカミハ アニカエリ モトノタカマノ ハラニアリ」などとあるのを手掛かりに、トホカミエヒタメ等の四十九神を指すと考える。同じ空にあっても、この四十九神の星と群星とは別だということ。
13-179 ホシトナル コレハノリナス
星になりましたが、それは地上の則を定めるためだったのです。
13-180 メノスガタ ヨクテアルルモ
女の中には容姿がよくても性格が悪い人もいます。
ミニクキニ ヨキミヤビアリ
器量が悪くても良い性格の女もいます。
【ヨキミヤビアリ】 「ミヤビ」は1綾本文113以降何度か出てくる。ここでも同じ意味合いだが、言葉の流れから「性格」とした。
13-182 ヨソホヒニ ナフミマヨヒソ
外見に惑わされてはいけません。
イセノミチ アマノウキハシ
イセの道の教えでは、仲人を
【アマノウキハシ ヨクワタス】 仲人は、現代では結婚式の形式に組み込まれた感があるが、古くは男女を取り持つだけでなく、夫婦和合に関する諸々のことを教えるのも大事な役目だった。
13-184 ヨクワタス カミノヲシヱノ
きちんと立てることです。そうすればアマテルカミの教えの
13-185 イモヲセノ ミチノオオムネ
『イセの道』が概ね
13-186 トホルコレナリ      
満たされることになります」。
13-187 ツクバウシ ホシオサルニハ
ツクバウシが尋ねた。「欲心を取り去るには
13-188 ミナステテ タノシミマツヤ
持っているものをすべて捨てて、死後の楽しみを待てばよいのですか」。