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カワクルマ ホソノヲトナル
皮の車のようになっている。へその緒とつながっている
【カワクルマ】 「皮の車」と訳したが、胎盤のこと。胎盤は円盤状をしており、その中央からへその緒が出て胎児とつながっている。皮で被われた車状の物である。後にも胎盤を「カワクルマ」と呼んでいるので、この時代には胎盤を「カワクルマ」といったのであろう。
【ホソノヲトナル ミハシラ】 「ミハシラ」は解釈ノート037参照。当時でもへその緒を通して胎児が育てられることはわかっていたと思われ、そのへその緒は天の御柱とつながり、アメミオヤが見守っていると考えたのであろう。
14-084 ミハシラノ ホドヨクオモリ
天の御柱は胎児の育ちが順調にいくように守り、
メクリカネ ヒニヒトメグリ
巡りを減らしていく。一日に一巡り分ずつ
【メグリカネ】 他の写本に「メグリカケ」とある。「巡りかねる」より「巡りが欠ける」すなわち「巡りが減る」の方が意味が通じるので「メグリカケ」を採用し「巡りが減る」とした。
オクレヘリ ヤヨヰハミソコ
減らしていくので三カ月目には三十九巡りになり、
【ヤヨヰハミソコ ハナオソフ】 この場合「ヤヨイ」は3月ではなく3ヶ月。「ハナオソウ」は、3月(今の4月)は花が咲きだすことと掛けて、はっきりわかる様子を表したのではないか。「ミソコハナ」という言い回しは39綾本文302のツヅ歌の説明の中にもある。
14-087 ハナオソフ ウツキミツレハ
一層身籠ったことがはっきりする。四カ月経つと
ミトリツス サツキサノコロ
腹の中の胎児の形が整う。五カ月初めのころには
【ミドリツス】 「ミドリツ」は若葉のころの様子で、胎児が育ってきていることを表しているのではないか。
14-089 ヒトメクリ サッサハラヲビ
一巡りとなり、魔よけの腹帯である
ヰハタナス ナカクタトホル
岩田帯を着ける。天の御柱を通ってきた
【ヰハタナス】 ヰハ」となっているが、他の写本は「イワ」となっている。ここでは「イワタ」と読み「岩田帯」と解釈した。
【ナカクタトホル アメノホ】 「ナカクタ」は天の御柱の中を通る管で、へその緒とつながっている。「アメノホ」と「タラチネノホ」の「ホ」は「火」だが、「火」の意味するものとして「生命力・エネルギー」というようなイメージで「ホ」をとらえた。この時期に、天と父母のエネルギーが胎内を潤す水と臓器を作るハニを作り出し、胎児が一層育ち、腹の中は水(羊水)で潤っていると考えたのであろうか。
14-091 アメノホト タラチネノホト
天のホ(火)と父母のホ(火)とが
14-092 メオマネキ ムツノチナミノ
メ(ハニと水)を作り出し、それが混じり合って
14-093 ツユアフレ ミナツキカワキ
腹の中は潤う。六カ月目にはそれが乾き
14-094 ホソノヲエ チシルトホレバ
臍の緒を通して乳汁が通り
ミオヒタス チシルニラレテ
胎児の体を養う。乳汁が天や父母のホによって熟成して
【チシルニラレテ】 「チシル」は血汁とも読めるが、胎児の体を養うものとして「乳汁」とした。「ニラレテ」が難解。18綾本文031に、「ウビコニエ ニアガルヤマゾ」と出てきて、私は噴火によって山ができる様子を想像し、「泥土の塊が煮え立って噴き上がり山になった」と訳した。それと関連付けて考え、液状の乳汁が天のホや父母のホなどのエネルギーによって固まり、それによって「ヰイロノハニ」が臓器となったと解釈した。
ヰツイロノ ハニモテツクル
五種類のハニとなり、それをもって
【イツイロノハニ】 「ハニ」は「埴」の意であろう。「埴輪」などを作ったきめの細かい黄赤色の粘土。形のないところから臓器が作られることを「埴」から物が形作られることのようにイメージして「ハニ」といったのではないか。「イツイロ」は「5種類」。
モリノカミ フヅキクラムラ
胎児を守る神(四十神)が七カ月目には心の働きとつながる器官、
【クラムラ】 ここだけでは訳ができないので、16綾と17綾とを合わせて訳語を導き出した。16綾本文102に「クラワタ」、17綾本文251に「ヨクラ」という言葉が出てくる。文脈から「ヨクラ」はナカゴ(心)、キモ(心臓)、ムラト(声)、フクシ(皮膚)という心の働きと結びつく器官ではないかと考えた。すると、「ワタ」は、現代でも「はらわた」などをいう「臓器」と訳せるのではないか。それをもとに、この綾の本文064で「クラワタ」を「心の働きと内臓」とした。「ムラ」は言葉の意味がはっきりつかめないが、それらの器官の集まりと考え、「クラムラ」を心の働きとつながる器官としてみた。これは今後研究の余地大で、みなさんの知恵をお借りしたい。
14-098 ハヅキワタ ナカツキハミメ
八カ月目には内臓を、九カ月目には外貌の
シムソヨベ コヱノヨソヤヂ
十四の体の部分を創る。アワ歌の四十八声と
【シムソヨベ】 「シム」はこれまで、性格や血筋と解釈してきた。「ソヨベ」を「14の部位(部分)」と解釈し、「シムソヨベ」を「性格や血筋の14の部位」と考えた。すなわち、血筋として受け継がれて、個々それぞれの個性や能力を表す体の14の部位。私はそれを、頭、目と耳それぞれ二つ、鼻、口、首、手と足それぞれ二つ、大小の排泄器の14としてみた。
【コヱノヨソヤヂ アワノカミ スベコソムアヤ】  この綾は妊娠出産という目に見えない変化に抽象的な概念が絡んで分かりにくく、ここも具体的にどんなことかは分からないが、私は次のように考えた。「コヱノヨソヤヂ」はアワ歌の48声、すなわち人が話す言葉。「アワノカミ」は天の神の48神で、それぞれ48声に宿り、その人のすべてをコントロールする力、言霊。イメージとしては、いわば「コヱノヨソヤヂ」がハードウェアで、「アワノカミ」がソフトウェアというところか。そこで、人が人とかかわる基本となる「言葉の要素」とした。
14-100 アワノカミ スベコソムアヤ
アワの四十八神の全部で九十六の言葉の要素が
ソナワリテ ソフニヱナヌギ
備わって、十二カ月目にエナを脱いで
【ソフニエナヌギ】 通常10ヶ月ほどで出産するのだが、なぜか12か月となっている。
14-102 ウマルナリ タトエメアレド
生れる。例え女の子がいても、
14-103 ヨツギナク ヱントオモハハ
世継ぎがなく、世継ぎを得ようと思うならば
14-104 アクリシレ アサヒノウルオ
アグリを知るがよい。夫婦が朝日の精気を
14-105 ミニウケテ コミヤニアレハ
体に受けて、子宮に朝日の精気が留まっていれば
14-106 ヨルナミト トモニメクレト
月の精気と一緒に体内を巡るが、
14-107 ヲハサキニ メオツツムユエ
ヲ(日の精気)が先にメ(月の精気)を包み込むので
14-108 セバメラレ ツイニホスヱノ
メは狭められて、ついに穂の先端が
ハセイデテ ミドリシヂナル
飛び出して、胎児の陰茎ができる。
【シヂ】 今日ではまったく意味不明の言葉であるが、文脈から「陰茎」と解釈した。
14-110 ヲノハジメ コレヲノコウム
それが男の初めなのだ。これが男の子を生む
14-111 アクリナリ メノコハサキニ
アグリである。女の子の場合は先に
14-112 ツキヤドリ ノチヒオマネク
月の精気が子宮に宿り、後に日の精気を招くと
14-113 メハハヤク ヲハツツマレテ
メが先にあってヲが包まれるので
14-114 シヂナラズ タマシマカドニ
陰茎ができず、子宮(コミヤ)の外に
イヱリナス コレメノハジメ
割れ目ができる。これが女の初めで、
【イエリ】 「イ」を「斎」と読み、「エリ」を「彫り(エリ)」と読み、「浄く彫られたところ・割れ目」すなわち女子の陰部と解釈した。
14-116 メノコウム ヲノコホシクハ
女の子が産まれる。男の子が欲しかったら
14-117 アクリナセ ワガミオソヱテ
アグリを行いなさい。吾の力を以て
14-118 ヱサシメン アマテルクニハ
男の子を得させよう。吾が治めている国には
14-119 ワガミタマ アリトシルヘシ
吾の霊力があることを思い起こしなさい。
14-120 ワレムカシ ヒノワニアリテ
吾は昔、日輪の中にいて、
14-121 テラセドモ ヒトミオウケズ
この世を照らしていたが、人の体を授かっていなかったので
14-122 ミチヒカズ フタカミタメニ
人々を導くことができなかった。そのためにイサナギ、イサナミの二尊が
14-123 タラチネト ナリテマネケハ
父母となって、吾を招いてくれたので
14-124 ヒトノミト ナリテハラメド
吾は人の体になった。母イサナミは懐胎したが
14-125 ナガヰシテ コソムツキマテ
吾は母の胎内に長くいたので、九十六カ月もの間
14-126 クルシムル ヤヤウマルレド 
母イサナミは苦しまれた。そしてやっと生まれたが
14-127 ミヒタシニ ヒトヒモヤスキ
大事に育てようとしたために、一日たりとも心安らかな
14-128 ココロナシ ワガミハキミト
日はなかった。吾が身が君と
14-129 ナルトテモ ヲヤノメクミオ
なってからも、親に恩を
14-130 カエサント フシテヲモエバ
返そうと、懸命に考え