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17-157 マシナラズ ヲヤノココロモ
使い物にならない。親の心も
17-158 トシハゲシ アエシノバズテ
きつく激しくしたい気持ちを敢えて我慢しなければ、
17-159 ニハカカゼ オロカニクラク
それは子どもにとって疾風のようなもので、愚かで物を知らない
17-160 ニブキコハ ソノアラカゼニ
鈍い子は、その荒々しい風に
17-161 フキウタレ イタミシノヘバ
吹かれ打たれて、痛みを我慢するので
17-162 ナオカラズ ムチオノガルル
素直な子になれない。鞭を逃れるために
ハヤギキオ ホメヨロコベバ
小利口に知恵を働かせるのを、親が喜んでほめれば
【ハヤギキ】 素早く利く反応すること。
17-164 スギネヂケ ハタレトナルゾ
ひどくずるい心になって、ついにはハタレになってしまう
17-165 アヤマルナ ヲヤツツシメヨ
間違えてはいけない。親は自分の思いを押し付けてはならない。
17-166 クラキコモ コマカニヲシヱ
物を知らない子にも、事細かに物を教え
17-167 ヒオツミテ スコシハトフル
日を重ねれば少しは教えたことが身に付く。
17-168 ツキオヘテ アツクヲシヱバ
幾月か丁寧に教えれば
17-169 ニブサルル トシドシマナビ
鈍くなくなるものだ。何年か学べば
17-170 アケボノノ ワザモハヤキゾ
物も分かるようになり、素早く物事ができるようになる。
17-171 ハツヨリモ ヨカラデワザオ
初めよりも上手にならないで
カエストモ モモチヲシエテ
同じ技を繰り返していても百回も千回も教え、
【カエストモ】 繰り返すか、変えずか、返すか、どれとも取れそうだが、この後で「モモチオシエテ」とあるので、繰り返すとした。
オボヱズハ シヅムルツヱニ
まだ覚えなくても、自分の心を鎮め
【シツムルツエ】 「ツエ」は子どもをたたく杖ではなく、自分の心を鎮めるつっかい棒となる杖と考える。
17-174 マタヲシユ ヱヱコハタノメ
また教えるのだ。我が子を可愛いと思うなら
ヲシヱドノ テモトモマツノ
教え人に頼みなさい。教え人の元に置けば
【ヲシエド】 「教え人」と訳したが、この時代にそのような専門職があったのだろうか。見識や技を持っていて指導力のある人がそのように呼ばれたのだろうか。例えばオホナムチとスクナヒコナとの関係がそう言えないか。
シモトツエ オヱルママニテ
その子は松の若枝となることができる。松は成長するのに合わせて
【シモトツエ】 「シモト」には、「枝の茂った若い立木」と「罪人をむち打つための、細い木の枝で作ったむち・杖」という二つの意味があり、「ツエ」とついているので刑罰の用具のように読み取れるが、この文脈で、叩いて教えるというのはふさわしくない。
17-177 ツチカエバ ソトセニナオル
培えば、十年で真っ直ぐになる
17-178 キザシオヱ ミソトセヤヤニ
兆しが表れ、三十年でかなり
17-179 ノビサカヱ モモノツクリキ
伸びて枝も張り茂る。百年経つと材木として使えるようになる。
17-180 ミモノハリ ヰモハムナギゾ
三百年経てば梁として使え、五百年経てば棟木にもなるのだ。
17-181 ヒトノリモ ソトセホボナル
人を教える時も、十年でほぼ教えが身に付く。
17-182 ミソノハリ ヰソハムナギノ
三十年で梁のようになり、五十年で棟木のようになる
17-183 イザオシモ アツキメクミノ
栄誉を得るためには、手厚く慈愛を持ち
17-184 ユルノリオ カナラズウムナ
息の長い育て方をして、必ずや飽きたり
17-185 ハヤルナヨ ハヤキハタレニ
焦ったりしてはならない。子が小利口になって、ハタレに
オモムカデ ヤタノカガミノ
なるようなことがないように、『八咫の鏡の
【ヤタノカガミノアヤ】 アマテルカミがここまで話したことを指しているのであろう。
アヤキケハ ヨコガオサルゾ
教え』を聞けば、子どもの育て方を誤ることはない。
【ヨコガオサルゾ】 「子どもがよこしまな災いを避けることができる」とも取れるが、私は話を聞いた親が間違いを犯さないことと解釈した。
17-188 ワガココロ イレテヰヤスク
私の心を受け止めれば、安心して子を育てられるように
17-189 アメガマモルゾ      
天が守ってくれるのである」。
17-190 タチカラヲ ススミモフサク
タチカラヲが進み出て言った。
17-191 ヌスビトノ ミツメニシルル
「盗人が、三度目に見つかったとき
17-192 ツチイカン カミハヤワシテ
罰はどのようにするのですか」。アマテルカミは穏やかに
17-193 ミコトノリ シバシココロオ
話された。「しばし心を
17-194 シヅメマテ ワレヒトブリオ
静めて待ちなさい。吾は人の振る舞いを
17-195 ツネミルニ フツクコトナル
常に見ているが、ことごとく異なる。
クニカミノ イキフクカゼオ
人はその国の風俗や習慣を
【クニカミノ イキフクカゼ】 直訳すれば「国の神が息を吹く風」であるが、土地土地によって自然とできる風俗や習慣をたとえて言ったのであろう。
ウケウマレ イキストナレバ
受けて生まれ、それが身に付くので、
【イキストナレバ】 風俗習慣を普段無意識にしている呼吸にたとえたのであろう。
17-198 ナラハシノ コトバモクニオ
いつも使っている言葉も国が
17-199 ヘダツレバ カハレドヨソノ
離れていれば違ってくるが、他所から来た
17-200 オサナコモ ナジメバソコノ
幼子でもその国になじめば、その国の
フリトナル ウツホニスメド
風習が身に付くのである。このように人間はウツホに住んでいるが
【ウツホニスメド・・・コタエシル】 人間は立体的な空間にいて生活し、風俗習慣など身に付けるが、大地からは離れて生きることはできない。すなわち常にウツホの風や大地とつながっているのだから、これから話す「風の神や地の神に知られる」ということは、察しが付くだろうということ。
17-202 ソラトバズ ハニフミオレバ
空を飛ばず大地を踏んで生きているのだから
17-203 コタエシル カゼハニガミノ
自ずと答えは分かるであろう。風の神や地の神が
17-204 マモルユエ ミルキクタビニ
人を守っているので、人のしたことを見聞きするたび
17-205 ヨシアシモ ヒメモスアメニ
その善し悪しも、いつでも天の神に
17-206 ツゲアレバ カクシヌスムモ
知らせているのだ。隠れて盗んでも