【タカマハヨロノ クニカタチ】 ここでいう「タカマ」は、清浄な場所。ミカサフミのタカマナルアヤに「カミマツル ハモタカマ スカノトコロハ コレニクラヘン」(神を祭っている地上も清いところなのでタカマと同じだ)とある。アマテルカミは、大きな岩がいくつも点在している神聖な景観を、あたかも二尊が多くの島を拓いて創った国「オノコロ」のようにイメージしたのではないか。それでこの場所を「タカマ」と呼んだのだろう。本文045にも「ウムクニスヘテ オノコロゾ」とあるように「オノコロ」はいくつもの島(クニ)からできているので、「コレオノコロ」はアマテルカミが座った岩だけを指すのではない。
【フタカミノ ウキハシニタチ…】 ここからの話は、そのまま訳せば記紀の国生み神話と同じようになる。本書はホツマツタヱを歴史書という視点で訳してきた。ここもそのスタンスで訳してあるので、意訳となっている。記紀からは歴史的事実を探り出すことはできないが、このように訳すことによってホツマツタヱではそれができるのではないかと思っている。「再生」としたのは、本文062にあるように、それまで続いていた国がオモダル・カシコネの時、飢饉などで秩序がなくなって乱れてしまっていたから。
【アホウビ】 19綾本文042の「アホオアメ」と「ウビオクニタマ」から考えると、「アホ」は「天」になる前の状態、「ウビ」は大地となる前の状態と考えられる。また、14綾本文038の「ヲハキヨクカロク」と「メハナカニコリ、ミツハニワカレ」と合わせて考えると、「アホ」は(天になる前の)「清くて軽いもの」、「ウビ」は(大地になる前の)「濁って重いもの」といえる。14綾本文036の「アワウビノメグレル」の「アワ」は「天と地」で、それがまだ「ウビ」(どろどろと濁った状態)で巡っているということ。
【アテオムスビテ】 「ア」は「天」、「テ」は手段、方法と解釈し、「アテ」を「天を創造する手段」、「ムスビテ」は「結実させること」と解釈した。「天を創造する手段によって天を創ることを結実させる」となるが、まわりくどい訳になるのでここでは「天を創ろうと」とした。
【ウヰトウヌ】 抽象的な概念で、言葉として表すことが難しい。ここで使われているホツマ文字「」は始原神であるアウワの神を表す時に使われる字で、ここでの「ウヰ」や「ウヌ」は天の力を意味するものとして考えてみた。その観点で訳を探っているうちに、「清くて軽いもの」に働きかけるエネルギーまたは力のようなものと思えてきた。「ウヰ」はその対となる「濁って重いもの」に働きかけるエネルギーまたは力のようなものと考えてみた。
【ウハムスビ ウビオクニタマ】 「ウハ」のホツマ文字「」は本文020の「」との違いはあるが「ウヰ」の略とした。「アホ」が「ウヌ」と働きあって天となり、「ウビ」が残る。残った「ウビ」が「クニタマ」となるには「ウヰ」の働きが必要と解釈した。 【クニタマ】 「地球」を表す言葉のように読み取れるが、この時代の人がすでに、自分が立っている大地が「地球」という球体であるという概念を持っていたのだろうか。しかし、記紀の記述からも球体を意識していたとは読み取れない。ヨーロッパでは紀元前6世紀ごろから「地球球体説」が始まったそうだが、中国では17世紀に入るまで「地球平面説」だったということである。ここでは、どちらと断定することは難しいが、「クニ」は大地を意味する使い方もあり、「タマ」は魂や霊も意味するので、火山が噴火し、やがて固まったり、泥土の土地が乾いて固まったりすることを経験として知り、そのような泥土状の大地がやがて人々の生を育む大地となることを畏敬の念をもって表した言葉のように思われる。
【カノミタマ コワニヨロコビ】 「カノミタマ」は「シノタマ」の対としての「日輪」とも読めるが、4綾本文045に「アメノミヲヤノ マナコヨリ モルルヒツキト アモトカミ」とあるので、アメミヲヤから降りる「日の霊力」と考えられる。また、これに続く文脈からも、「カ」は「明るい・光」、「ミタマ」は「御霊」と読み、アメミヲヤと解釈できる。この後、アメミヲヤは大地の上に人間の世界を作り出すのである。
【ウハノテオ】 ここから先は突然「アイウエオ」などと出てきてビックリするが、次のように考えて訳を試みた。「ウハ」は本文022の「ウハムスビ」の「ウハ」と同じように、地上に働きかける力と解釈した。ホツマ文字の「ウ」に違いがあるので、別の解釈もあるかもしれない。「テ」は方法、手段。 【ワトアニワケテ アイウエオ】 「ア」はウツホ、「イ」はカゼ、「ウ」はホ、(この三つは「ア(天)」に属するもの)、「エ」はミヅ、「オ」はハニ(この二つは「ワ(地)」に属するもの)という、全ての元となる「元素」の概念。(元素というと、化学の「元素」と紛らわしいが、私の訳ではこのような限定的な概念で使っている) ホツマ文字の「ア、イ、ウ、エ、オ」という形は、文字が作られたときにこの概念にあわせて考案されたものであろう。