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21-000 21ニハリミヤノリサタムアヤ
新冶の宮造営の則を定める綾
21-001 フソムスス ソナヱフソミホ
二十六スズ、十七枝、二十三穂
21-002 ヤヨハツヒ キヨヒトミコノ
三月一日、キヨヒト皇子(ニニキネ)が
ミコトノリ オオモノヌシガ
詔を下した。「汝大物主の
【オオモノヌシガ ヲヤノクニ】 「オオモノヌシ」は2代目大物主クシヒコ。「ヲヤ」は初代大物主オホナムチ。オホナムチは出雲で奢った政を行ったため津軽に左遷された。
21-004 ヲヤノクニ イツモヤエガキ
親の国の「出雲八重垣」は、
ノリヲサム ソノモトノリハ
オホナムチが則を作り、国中を巡って治めた。その則を作ったのは
【ノリヲサム】 「則を定めて治めた」ということだが、これにはもう少し深い意味合いが込められている。9綾本文151に「クシキネアツク メグムノチ トモニツトメテ ウツシクニ ヤメルオイヤシ トリケモノ ホヲムシハラヒ フユオナス」とあるように、オホナムチは国造りのために国中を巡っている。34綾解釈ノート094「ハツクニシラス ミマキノヨ」に詳しく書いたように、アメミヲヤ、クニトコタチ、フタカミが馬に乗り国を巡って国造りをしており、「ノリヲサム」はそれに匹敵するという、最高の誉め言葉の意味も持つと解釈した。大物主はこの言葉を励みに宮つくりに臨んだのだろう。
21-006 サキカミノ イサオシナレハ
オホナムチの功績である。
21-007 ワレモコト タテントヨモオ
我もそのようにしたいと、四方を
21-008 メグルウチ ヨキノオヱタリ
巡るうちに、良い場所を見つけた。
21-009 ココニヰテ タオヒラカント
この地に住み、田を拓くために
21-010 マヅタツル ナモニハリミヤ
まず宮を建てようと思う。宮の名は新治の宮とする。
21-011 フトマニニ ミヤツクリノリ
フトマニで占って、宮造りの計画を
21-012 サタメヨト オオモノヌシニ
立てるように」と大物主に
21-013 ミコトノリ モノヌシウケテ
命じた。大物主は詔を受けて
21-014 ノリサダム マヅソマオシテ
計画を立てた。「はじめにきこりに
21-015 キオキルハ キヤヱノヒヨシ
木を切らせる日は、キヤヱの日がよい。
21-016 テオノソメ ネシヱヰシズヱ
手斧で木を削り始める日はネシヱの日がよい。次に、礎を据え、
ハシラタテ ナカスミハシラ
柱を立てる。中墨柱を
【ナカスミハシラ】 神代巻秀真政伝、九門図に、丸の中に縦に黒い線が入っているものがある。これを「ナカスミハシラ」といったのか。この後にも、現代の感覚で訳すことが難しい語句が多数出てくる。
21-018 ミナミムキ キタヒガシニシ
南面に立て、次に北、東、西の
メクリタツ シマカラフカト
順に立てる。正門はカラフカドとし、
【シマカラフカト】 「シマ」は宮殿の出入り口または玄関ともなる門。「カラフカト」は本文118以降に詳しく書かれている。
21-020 ナカスミニ ヨリテサタムル
中墨柱を基準にして決める。
21-021 ムネアゲハ ツアヱニイハヒ
棟上げはツアエの日に祝う。
アカコワヰ ソミカシハアメ
赤飯は十三膳をアメミヲヤの目である
【ソミカシハアメ ヒトツキト】 「アメ」に供える13膳のうち、12膳は「ツキ」(12か月)に、1膳を「ヒ」(日)に供えたと考える。
ヒトツキト ヤカシハアモト
日と月に、八膳をアモト神に用意し
【アモト】 トホカミヱヒタメの8神。
ムネニスヱ モチミモムソム
棟に据えて供える。餅を三百六十六個、
【モチミモムソム】 なぜ366個なのか。この頃は月の満ち欠けによる暦で、1年イコール365日と四分の一日という認識ではなかったが、太陽が同じ位置に南中する、または日の出日の入りの位置が元に戻るのが365日と少し(4分の1日)ということは分かっていたように思われる。この366という数は「少し」も加えた太陽の巡りの日数ではないか。日の神が1巡りの間守ってくれるようにということだろうか。
21-025 ユミヤソエ ハシラニマツル
弓矢を添えて柱に供えて祭る。
ヰクラノヰ トシノリタマメ
五クラに五杯、トシノリタマメと
【トシノリタマメ】 トシノリ神ともいう。キツヲサネとアミヤシナウ。トシノリ神とヱト神とで1年を構成するヱト守神となる。
21-027 ムワタノナ ミナヒトヨミキ
六ワタに七杯、それぞれに一夜酒を供える。
21-028 ザイオフル ムネトハシラネ
棟梁が采配を揮って、棟を柱に打ち込む
21-029 ツチオウツ トキニタクミハ
槌を打つ。その時、棟梁は
ムノタミメ ソノノトコトハ
棟上げの祝詞をあげる。その祝詞の言葉は
【ムノタミメ】 17綾解釈ノート028で「ムノタミメ」について書いたが、「書き物」、「手引き図」の一部として棟上げの儀式のマニュアルも書かれていたのではないか。
アメツチノ ヒラクムロヤノ
『あめつちの ひらくむろやの
【アメツチノヒラクムロヤ…】 同じ言葉を2度繰り返しているので、2回目は訳の言葉にした。
21-032 カミアレバ ヱヤハヨワカレ
かみあれば えやはよわかれ
21-033 ヌシハナガカレ      
ぬしはながかれ』
21-034 アメツチノ ヒラクムロヤノ
『天地が開かれた時から、室屋の
21-035 カミアレバ ヱヤハヨワカレ
神が守っている。病魔は弱くなれ、
21-036 ヌシハナガカレ      
主は永く栄えよ』
21-037 カクミタビ ノトシテモチオ
このように三度祝詞をあげて、餅を
21-038 ナゲチラス サキニミヤバニ
投げ散らす」。元々、宮を建てるところに
オコロアリ モチウゴニニテ
オコロがいた。それはモグラのような者たちで
【オコロ】 君に従っていない、もともとこの地にいた者のあだ名。穴倉住まいをしていたのだろうか。モグラの異称の「ウゴロモチ」(和妙類聚)の略称か。
【モチウゴ】 オコロと同じく「ウゴロモチ」のこと。モグラ。
ホノホハク タミラオソレテ
猛烈な勢いで抗議した。民たちは恐れて
【ホノホハク】 「ホノホ」は烈火のごとく怒るとか、怒りの炎とかいうようなことの意味か。オコロは自分たちのいた土地に「よそ者」が来て居つこうとしたのを嫌ったのであろう。
【タミラ】 ニニキネについてきて働いている民たち。
21-041 コレツゲル モノヌシトエハ
このことを大物主に告げた。大物主がオコロに訳を聞くと
コタエイフ カグツチタツオ
オコロは答えて言った。「昔、カグツチが竜を
【カグツチタツオ…】 カグツチとハニヤスは、イサナギが火に焼かれて亡くなるときに産んだとされる造化神。ホツマツタヱには、その子孫が竜になるという話は出てこない。オコロの人たちに伝わる伝説か。
21-043 ハニヤスニ ヨロコウマセド
ハニヤスにたくさん産ませましたが
21-044 タツナラズ アナニウレフル
竜になれなかった我らは、今でも穴に住まって憂いています。
21-045 ネガワクハ ヒトナシタマエ
お願いです、自分たちを民として認めてください」。
21-046 モノヌシガ モフセバミマコ
大物主がその旨を伝えると、ニニキネは