【アコケ】
フトマニの9番目に「アコケ」の項があり、「アノコケハ ヨコヤシルヤモ ハサラナセ アコケクルマノ メグリアラネハ」と書かれている。吾郷清彦氏は著書「全訳ホツマツタエ」の中の「対訳・神璽基兆太占伝(カンオシデモトウラツタエ)」で、吉備大臣真備が「詠太占和歌」として四行漢詩の形の訳註を付けたものを次のように読み下している。「天変は智あると雖も、功ならず。霹靂(ハタタガミ)新宅を挫く、当に転ずべし。病難は方遠を以って、之を転ずること、若(マサ)に天車転行して、祥(サイワイ)在るが如し。」その注釈に「霹靂新宅を挫く。これはニニギネノ尊が新治宮を造営されて、遷御の折霹靂神が垣を破った故事を指す。」「ヨコヤは世嗣御子の社殿の意、シルヤは政を治め知る庁舎の義。」などとある。ここで注目すべきは、霹靂(ヘキレキ・雷、ウツヲガミ)がニニキネの宮の垣を破ったという故事を指すということ。この出来事があったときフトマニで占ったら「アコケ」と出たのに、この出来事を元にした解釈とはどういうことだ? そこで訳者は次のように解釈してみた。「ヨコヤ」は漢字で表せば「横屋」とでもなろうか、主たる建物のそばにある建物と解釈した。「シルヤ」は「領る屋」と読み、領らす建物、すなわちヨコヤの主が守っている建物、すなわち「社」と解釈した。「ハサラ」は「地更」と読み、その場所を改めることとしてみた。そうすると、宮の脇に住み、社を守っている「ウツヲ」や社をその場所から撤退させるという解釈が浮かんでくるように思う。