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23-146 ソノユエハ ユフヌノキヌオ
その訳は、木綿や絹を
23-147 ソメカサル コレナスヒトハ
染めて着飾るようなことをする者は
タカヤサデ ヒマカクユエニ
田も耕さないで、働く時間も足りなく
【ヒマカクユエニ】 通常、暇は空いた時間とか休みを意味するが、何かをするのに必要な時間のこともいう。
23-149 タモアレテ タトイミノレト
田も荒れてしまう。例え稲が実ったとしても
23-150 トホシクテ ヤヤヒトカズノ
少ししか収穫できず、やっと家族の
23-151 カテアレド モトチカラヱヌ
食糧にできても、元々生育不足の
23-152 イネノミハ ハミテモコエズ
米は、食べても丈夫になれず、
23-153 ヤウヤクニ カテタラザルゾ
次第に食糧が足りなくなってしまうのだ。
23-154 ホコルヨハ アメノニクミニ
贅沢をする世の中は、天が善しとせず、
23-155 アメカゼノ トキモタガエバ
天候が季節に合わなくなり
23-156 イネヤセテ タミノチカラモ
稲が痩せて民が納める作物も
23-157 ヤヤツキテ ヨニクルシムゾ
殆どなくなって、みなが苦しむことになる。
23-158 カサリヨリ オゴリニナリテ
また、身を飾ることによって、人は奢るようになり
23-159 トキハカル ハテハハタレノ
小賢しいことを企て、しまいにはハタレになって
23-160 クニミタレ タミヤスカラス
国が乱れ、民は安心して暮らすことができなくなってしまう。
23-161 カレツネニ タミノヰヤスキ
だから吾は常に、民の着る働きやすい
23-162 ユフオキル アサコトスガノ
木綿を着ているのである。吾が毎朝着る浄い
23-163 ハブタエハ タミノヰヤスク
羽二重は、民が暮らしやすく
23-164 ナガラヱト ヒニイノルハゾ
長生きするようにと、日の輪に祈るための衣なのである。
23-165 ニシコリハ ユキスキミヤノ
錦織はユキ・スキの神を祭る
23-166 オオナメノ ヱノトキノハゾ
大嘗祭を行う時に着る衣である。
アヤオリハ ハニノヤシロノ
綾織りは地の神の社での
【ハニノヤシロ】 現代でも大嘗祭で悠紀殿と主基殿が建てられる。それは天皇即位の儀式のためのもの。「ハニノヤシロ」は、主基殿と同じスキの神を祭るが、豊作を祈ったり収穫を感謝したりする社。これは日常的に祭られていたのであろう。
23-168 サナメヱニ スキイノルハゾ
新嘗祭でスキの神に収穫を感謝して祈る時に着る衣なのである。
23-169 コノユエハ アヤニシコリハ
錦織りや綾織を着る訳は、綾織りと錦織は
23-170 オサバヤモ ヒトハニヨタリ
筬の羽が八百で、一つの羽に四本の糸を通すので
23-171 ミチフヲリ コレアシハラノ
全部で糸は三千二百本となり、これは葦原の
23-172 トヨノカズ タナバタカミト
豊かな村の数だからである。棚機神と
23-173 タハタカミ オナジマツリノ
田畑神を一緒に祭る時に着るのが
23-174 アヤニシキ ミチリノタテニ
綾錦織りの衣である。三千本の経糸を
23-175 ヘカザリオ カケテヨツムツ
『ヘ』と『カザリ』にそれぞれ掛けて踏木を四本、六本と
23-176 フミワクル ヤナギアヤナル
踏み分ける。柳綾という
ハナカタハ ヱカキマノリニ
模様は、下絵を描いて型紙に
【エカキマノリニ アテウツシ】 「エカキ」は図案を描くこと。「マノリ」は方眼紙のように経糸と緯糸の線が書かれたもの。描いた図案をこの「マノリ」に書き写し、それを機織りの設計図とした。
アテウツシ ツウヂヨコベニ
当てて写す。縦糸を、緯糸が通るように
【ツウジヨコベニ ツリワケテ】 ツウジは経糸、ヨコベは緯糸。踏木を踏み、綜絖を上下に動かして、杼が通るように経糸を上下に分ける。 
23-179 ツリワケテ ヲリヒメカザリ
綜絖で引いて分ける。織り姫が「カザリ」の踏木を
23-180 フムトキニ ヨコヘニワケテ
踏んで、模様の横糸が通るように
23-181 ツウヂヒク カヒヌキナゲテ
縦糸を上下に分ける。素早く杼を糸の間を縫うように投げて
23-182 ヲサメクル アヤニシコリモ
筬を引く。綾織りも錦織りも
23-183 コレナルゾ タカハタノリノ
このようにするのである。高機法の
23-184 アラマシゾコレ      
あらましはこの通りである。
23-185 マツリコト タミノイモセハ
政は次のとおりである。民の夫婦は
23-186 ヲサヒトハ ヰヤクムヲサハ
筬の一つの羽と同じある。五軒一組の長は
23-187 ヒトテユビ ヤソテヘヒトリ
『一手指』と呼ぶ。八十の『一手指』に一人の
アレヲサト ナルオオドラガ
村長となる長老が
【オオドラ】 漢字を当てると「大人等」か。
チキリマク ヤソアレヘオク
その村をまとめる。八十村の村長の上に
【チキリマク】 経糸の基の方を巻く棒(千切棒)に糸を巻くように、大勢の人々が秩序を持って暮らせるようにするということ。
23-190 アガタヌシ コレヒトヨミノ
県主を置く。これは一ヨミ(八十村)をまとめる
モノノベゾ ヤソベノクニニ
物部である。八十村をまとめたクニに
【クニ】 古代、県も国も同じように使われていたようである。
ツウヂオキ モノノヘタテオ
ツウヂを置いて、物部は決まりを
【モノノヘタテオ ヲシヱシム】 「タテ」は経糸の「タテ」で、社会の仕組みの基本となる諸々の決まり。宮から派遣されたツウジは、決まりや諸々の情報を民に伝える役も持っていたのであろう。
23-193 ヲシヱシム コノクニツコニ
民に教えさせる。この国造(ツウヂ)に
23-194 ヨコベソリ ソエテアマネク
ヨコベを十人付けて、国の隅々まで
ミチワキテ サガオミアタヒ
歩いて調べて回り、人々のしたことの罪の程度を
【ミチワキテ】 「ミチ」は「道」と「道理」。「ワキテ」は「障害などを押し開いて進む」と「理非を区別する」の二つの意味を重ねている。
23-196 ツウヂヘテ タタチニツゲル
ツウジを通して直ちに宮の目付に告げるのである。