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ヒモクレテ ハヱバユヅリハ
日が暮れて、シダやユズリ葉の上に
【ハヱバユズリハ】 「ハヱバ」は本文213の「モチニハヱシキ」、218の「カトマツハエバ ユツリハモ」から、「ハヱバ」はシダと解釈した。現代でも正月の飾りなどにユズリ葉やシダ(ウラジロ)は使われている。
25-109 シキモシテ イネモセデマツ
裳を敷いて、寝ずに夜が明けるのを待った。
25-110 アマノトモ アケテムレデル
夜が明けて、宮の戸を開け大勢人が出てきた。
25-111 ワカヒメガ マリニワカミツ
若姫が椀に若水を
25-112 クマントス ツルヘハヌレハ
汲もうとした。釣瓶で水を汲み上げる時
25-113 カケウツル オトロキイリテ
人影が見え、姫は驚いて宮に入り
タラニツグ ソラツカミカハ
父親に告げた。「尊い御方でしょうか、
【ソラツカミ】 天のカミ、すなわち高貴な人のこと。
25-115 マレヒトト チチハミハモオ
訪ねてきた方がおられます」。すると父はウツキネの着ている衣裳を
25-116 ノソミミテ ヤヱノタタミオ
窺い、八重の畳を
25-117 シキモウケ ヒキイレマシテ
敷き、ウツキネを宮の中に招き入れた。
25-118 ユエオトフ キミアルカタチ
ここに来た分けを聞くと、ウツキネは事情を
25-119 ノタマエハ ハデカミシバシ
話された。ハデスミはしばし
25-120 オモフトキ ウドモリキタリ
どうしたものかと考えた。その時、鵜戸守が来て言った。
25-121 カタアミノ タガカモカアル
「堅網が積んであるどなたかの鴨船がありました。
25-122 トシノアサ ウタエソムルオ
ちょうど元旦で、歌が書いてあったので
25-123 トリミレハ ワカノウタアリ
取って見ると、ワカ歌が書いてありました」。
シホヅツガ メナシカタアミ
《シホツツが申し上げます。目無し堅網を
【メナシカタアミ】 「メナシ」を「目無し」と読む「目が詰んでいる固く編んだ網」の意と、「妻為し」と読む「ハデの娘と結婚させてください」とを掛けている。「カタアミ」は13綾本文012~021に、オシホミミが形ばかりの水浴びをしたことが書かれていて、それ以降、結婚した後の水浴びは形式化し「形浴み」となったのではないか。
ハルベラヤ ミチヒノタマハ
張るとよいでしょう。どうかお導きください。
【ハルベラヤ】 表面的には「目無しの堅い網を張る」という釣り針を探す手立てを言っているが、裏で「ハル」に「墾る(開墾する)」の意を持たせ、「(結婚させて)新しい土地を拓かせるのがよいでしょう」というメッセージを伝えていると解釈した。
【ミチヒノタマハ】  記紀には「しおみちのたま(記)しおみつたま(紀)、しおひのたま」とあり、山幸彦が投げた玉の霊力で潮が満ちたり引いたりするように書かれている。本稿は歴史という視点でホツマツタヱを訳しているので、このような「超常現象」としての訳は避けたいところだが、本文166から172の文は現実にあり得ることへの意訳も難しいほどはっきりと書かれているので、ここは私の創作に等しい訳になってしまった。解釈ノート085に書いたようにスセリとウツキネの皇子同士の争いをストレートにも書けず、また、記紀と違って「ミチヒノタマ」を投げたのは家臣で、皇子が家臣に取り押さえられたとも書けずに「人類の記憶」の中の「神話」に置き換えたのではないかと考えた。シホツツノヲヂの歌の「ミチヒノタマ」は、「導きの許しを賜う」と解釈して、家臣が皇子を導くことの許しを得る」というように考えた。また、歌の表向きの意味は「ミチビキノタマワバ」の短縮として「導き宣わば」すなわち「どうかお導きください」と訳した。これには二つの意味があり、表面的には「釣り針が見つかるようにどうかご指導ください」となり、もう少し深読みすると「メナシカタアミハルベラヤ」に続く言葉で「その上、ニニキネ君の跡を継いで新田を開拓できるように導いてほしい」という意味が込められているのではないかとも考えられる。実際、後にウツキネは筑紫でニニキネの跡を継いで新田を開拓している。
25-126 ハデノカンカゼ      
ソオのハデスミのお力で》
25-127 トキニハデ モロアマメシテ
そこで、ハデスミは全ての海女を呼んで
コレオトフ ヒキメハヒカン
釣り針を探す方法を尋ねた。ヒキメは
【ヒキメ】 「ヒキメ」「クチメ」「アカメ」は海女の名。
25-129 アラコアミ クチメガツリモ
「アラコ網を引きましょう」と言い、クチメは「釣りは
25-130 ヨシナシヤ アカメヒトリハ
役に立たないでしょうか」と言った。アカメ一人が
メナシアミ ココニハデカミ
「目無し網が良いのではないでしょうか」と言った。そこでハデスミは
【メナシアミ】 シホツツの和歌に「メナシカタアミ ハルベラヤ」とあり、ハデスミの判断の材料になったのだろう。
25-132 モロアマオ アカメニソエテ
海女たちを集めて、アカメに付けて
メナシアミ ヨモヒレトレバ
目無し網で一帯を一網打尽にすると
【ヒレトレバ】 「ヒレ」の語義不明。文脈より「一網打尽」とした。
25-134 オオタイガ クチオカミサキ
大きな鯛がグチに噛みついたまま
25-135 マエニヨル アカメハクチニ
アカメの前に引き寄せられた。アカメはグチから
25-136 モトチヱテ タイオイケスニ
元の釣り針を見つけた。鯛を生け簀に入れて
マツベシト ツグレバハデハ
生かしておいて、ハデスミに伝えると
【マツベシト】 鯛に「待つべし」と言わないこともないが、ここでは「生かしておいた」というように理解したい。
25-138 サキニシル ユメニタイキテ
ハデスミは既に知っていて、「夢の中で、鯛が来て
25-139 ワレウオノ ヨシナキタメニ
『私は魚で何の役にも立たないので、
25-140 クチササク ワレハミケニト
グチを差し上げます。私を尊の御膳に差し上げてください』と言った。
25-141 ミコトノリ タイハウオキミ
我は、『鯛は最も尊い魚である。
25-142 ミケノモノ シルシハウロコ
天君の御膳にのせるものだ』と、尊い魚の印として鱗
25-143 ミツニヤマ ウツシテカエス
三枚に山の形を印して海に戻した」と言った。
ミツヤマノ タイハコレナリ
これにより鯛の鱗は三つの山の印となり、
【ミツヤマノ タイハコレナリ】 ホツマツタヱには度々「はじめはじめ物語」が出てくるが、私はそれを史実とは考えていない。
25-145 クチハイム アカメオホメテ
グチは天君の食事には出さないこととなった。アカメを褒めて
25-146 ヨドヒメト キミハチオヱテ
ヨド姫と名前を授けた。ウツキネは釣り針が戻ったので
25-147 ヨロコビニ シガノカミシテ
喜び、シガに
25-148 カエサシム ワニニノリユキ
返させた。シガは鰐船に乗って
25-149 シノミヤデ ヤマクイマネキ
シノ宮へ行き、ヤマクイを誘って
25-150 モロトモニ ウカワニユケハ
共に鵜川に行った。
25-151 ミヤアイテ トエバヤマクイ
スセリが二人に会い、どうしたのかと聞くと
25-152 コレムカシ キミガチオカリ
「実はかつて君(スセリ)の釣り針を借りて
25-153 トラレシオ イマトリカエシ
魚に取られてしまったのを、この度取り返して
25-154 トミヤカラ シガノカミシテ
弟宮(ウツキネ)がシガに
25-155 カエサシム シガハチオモチ
返させたのです」とヤマクイが言い、シガは釣り針を持って
25-156 タテマツル ミヤウカガヒテ
スセリに差し出した。スセリがよく見て
25-157 ワガチゾト イイツツタツオ
「我の釣り針に間違いない」と言って去ろうとしたとき、ヤマクイが