先頭の番号が青い行は、クリックすると解釈ノートが見られます。
対訳ページの使い方の詳細はこちらのページをご覧ください。
ソデヒカエ マチヂトイエハ
スセリの袖を掴んで引き止め「マチチ」と言った。
【マチチ】 「お待ちなさい」と言ったのだが、「マチチ」は「貧鉤(マヂチ・持つ人が貧しくなるようにと呪いのこめられた釣り針」(広辞苑)という意味がある。
25-159 ミヤイカリ ミチナクワレオ
スセリが怒って言った「訳もなく我を
25-160 ナゼノロフ ヱニハオトカラ
なぜ呪うのか。兄の我の所へは弟自ら
25-161 ノホルハズ コタエテイナヤ
来るのが道理ではないか」ヤマクイが答えた。「そうではありません。
25-162 クチイトオ カエテカスハズ
古くなった釣り糸は新しい糸に替えて貸すのが当然です。
シレハサチ シラネハオトエ
そうされたのならよいのですが、それが分からなかったのなら弟君に
【シレバサチ シラネバ】 「シレバ」は新しい糸に代えて貸すことを知っていて、そのようにしたなら兄には過失がないということ。「シラネバ」はその道理を知らなかったという過失か故意の悪意があるということ。
コマバイニ ワビコトアレト
手をついてお詫びを申し上げるべきです」と
【コマバイ】 漢字で「駒這い」と書くような意味で訳した。本文173の「オトノコマシテ」の「コマ(駒)」は「自由に使うことのできる人や物」の意。
25-165 イエハナオ イカリテフネオ
言うと、スセリはなお怒って、舟に乗って
コギイダス タマオナグレハ
漕ぎだした。シガがスセリを強く叱責すると
【タマオナクレハ】 神話でいう「満ち干の玉を投げた」を「叱責する言葉を発した」こととし、「海が乾く」は「浅瀬に乗り上げる」とするなど、解釈ノート085や125に書いたように、現実にあり得ることに置き換えて「大意訳」をしてある。
25-167 ウミカワク シガオヒユキテ
スセリは船を浅瀬に乗り上げさせた。シガが追っていき
25-168 フネニノル ミヤトビニグル
船に乗り込んだ。スセリは飛び出して逃げた。
25-169 ヤマクイモ ハセユキミヤノ
ヤマクイも急いで行き、スセリの
25-170 テオヒケバ シガマタナグル
手を捕まえると、シガはなおスセリを責めた。
タマノミヅ アフレテスデニ
スセリは動揺して深みにはまりもう少しで
【タマノミヅ アフレテ】 シガの言葉に一層動揺して溺れそうになったと、これも大意訳。
25-172 シツムトキ ナンチタスケヨ
溺れそうになった。「助けてくれ、
25-173 ワレナガク オトノコマシテ
我はこれからずっと弟の下働きをして
カテウケン ココニユルシテ
暮らしていこう」とスセリが言ったので許して
【ココニユルシテ】 家臣が皇子を許すということは、通常ありえない。事前にニニキネの許しを得ていたのだろう。スセリの行状は皇子として許しがたいものだったことがうかがえる。このことからも、家臣が投げた「タマ」はニニキネが委ねたスセリへの叱責や導きと考えられる。
25-175 ムカヒフネ ミヤニカエリテ
迎えの舟で宮に連れて帰った。
ムツミテゾサル      
宮で和解し、家臣の二人は帰って行った。
【ムツミテゾサル】 この場面にいるのはスセリと臣のシガとヤマクイの三人。この三人が和やかな状態に戻り、臣が帰って行った
25-177 ハデズミハ キミニモフサク
ハデスミがウツキネに
25-178 ワガコトテ トヨツミヒコト
「我子です」と言って、トヨツミヒコ、
25-179 トヨタマメ タケズミヒコト
トヨタマ姫、タケズミヒコ、
25-180 オトタマメ ツレイテキミオ
オトタマ姫を連れてきて、ウツキネに
25-181 オカマシム キミハツクシノ
挨拶をさせた。ウツキネは筑紫の
25-182 カミアツメ ワレツマイレン
守を集めて「吾は妻を娶ろうと思う。
25-183 モロイカン トキニホタカミ
皆はどう思うか」と言った。するとホタカミが
25-184 モフサクハ サキニコフトキ
申し上げた。「先にお出でを願った時、
25-185 キミノナモ ツクシノヲキミ
君は名を筑紫御君と名乗られました。
25-186 コレココノ アマツカミナリ
ですから君はこの国の天君ですので
25-187 オマカセニ ムカシハハキミ
御意の通りになさってください。昔、君の母君は
25-188 アマキミニ ヒトヨチキリテ
ニニキネ尊と一夜の契りを結ばれ
25-189 ノチニメス キミマヅハカル
その後でお妃となられました。君は予め我等にご相談くださいました。
25-190 ナオヨシト カコシマミヤニ
とても嬉しいことです」。そこでウツキネは鹿児島の宮に
25-191 ウツリマス トヨタマヒメオ
遷った。そしてトヨタマ姫を
25-192 ミキサキニ スケウチシモメ
后に決め、スケ妃とウチ妃とシモメを
25-193 フタリヅツ ムツボネモナリ
二人ずつ、六人の局も決まった。
25-194 トトノエハ ソノアスミカニ
婚礼が無事行われて、その三日後に
トヨスミガ タマカサソロエ
トヨスミが玉笠を揃えて
【タマカサ】 「タママリ」と同じ美称の「タマ」。
25-196 タママリモ ムタリニモタセ
玉椀も六人の局に持たせ
25-197 ミツササグ コエオソロエテ
水を振りかけた。声を揃えて
25-198 モモヒナギ マクバイノチノ
「モモヒナギは契りを結ばれた
25-199 ミカノヒノ カワミツアビテ
三日後、川水を浴びた。
25-200 ウビチニノ カミカラシモヱ
ウビチニの代からずっと今まで
25-201 ハナムコニミツ      
花婿に水を
25-202 マイラセフ マイラセフ  
かけましょう、かけましょう」と歌った。
25-203 コノトキニ ミソフアカタノ
そのとき、筑紫三十二県の
25-204 カミウタイ ヨロトタノシム
県主達も一緒に歌い、皆で喜びあった。
25-205 シカルノチ サキノミユキノ
その後、先にニニキネが行幸して造った
25-206 イセキミナ ミココロソエテ
どの井堰にも、ウツキネは心をこめて
25-207 ニイタナス ツクシミソフノ
新田を拓いた。筑紫の三十二県を
25-208 ミメクリテ カゴシマニマス
見て回り、鹿児島に帰られた。
25-209 トシトシニ ミノリモフエテ
年々収穫も増えて