| 25-158 |
|
スセリの袖を掴んで引き止め「マチチ」と言った。
先頭の番号が青い行は、クリックすると解釈ノートが見られます。
対訳ページの使い方の詳細はこちらのページをご覧ください。
対訳ページの使い方の詳細はこちらのページをご覧ください。
【マチチ】
「お待ちなさい」と言ったのだが、「マチチ」は「貧鉤(マヂチ・持つ人が貧しくなるようにと呪いのこめられた釣り針」(広辞苑)という意味がある。
| 25-159 |
|
スセリが怒って言った「訳もなく我を
| 25-160 |
|
なぜ呪うのか。兄の我の所へは弟自ら
| 25-161 |
|
来るのが道理ではないか」ヤマクイが答えた。「そうではありません。
| 25-162 |
|
古くなった釣り糸は新しい糸に替えて貸すのが当然です。
| 25-163 |
|
そうされたのならよいのですが、それが分からなかったのなら弟君に
【シレバサチ シラネバ】
「シレバ」は新しい糸に代えて貸すことを知っていて、そのようにしたなら兄には過失がないということ。「シラネバ」はその道理を知らなかったという過失か故意の悪意があるということ。
| 25-164 |
|
手をついてお詫びを申し上げるべきです」と
【コマバイ】
漢字で「駒這い」と書くような意味で訳した。本文173の「オトノコマシテ」の「コマ(駒)」は「自由に使うことのできる人や物」の意。
| 25-165 |
|
言うと、スセリはなお怒って、舟に乗って
| 25-166 |
|
漕ぎだした。シガがスセリを強く叱責すると
【タマオナクレハ】
神話でいう「満ち干の玉を投げた」を「叱責する言葉を発した」こととし、「海が乾く」は「浅瀬に乗り上げる」とするなど、解釈ノート085や125に書いたように、現実にあり得ることに置き換えて「大意訳」をしてある。
| 25-167 |
|
スセリは船を浅瀬に乗り上げさせた。シガが追っていき
| 25-168 |
|
船に乗り込んだ。スセリは飛び出して逃げた。
| 25-169 |
|
ヤマクイも急いで行き、スセリの
| 25-170 |
|
手を捕まえると、シガはなおスセリを責めた。
| 25-171 |
|
スセリは動揺して深みにはまりもう少しで
【タマノミヅ アフレテ】
シガの言葉に一層動揺して溺れそうになったと、これも大意訳。
| 25-172 |
|
溺れそうになった。「助けてくれ、
| 25-173 |
|
我はこれからずっと弟の下働きをして
| 25-174 |
|
暮らしていこう」とスセリが言ったので許して
【ココニユルシテ】
家臣が皇子を許すということは、通常ありえない。事前にニニキネの許しを得ていたのだろう。スセリの行状は皇子として許しがたいものだったことがうかがえる。このことからも、家臣が投げた「タマ」はニニキネが委ねたスセリへの叱責や導きと考えられる。
| 25-175 |
|
迎えの舟で宮に連れて帰った。
| 25-176 |
|
宮で和解し、家臣の二人は帰って行った。
【ムツミテゾサル】
この場面にいるのはスセリと臣のシガとヤマクイの三人。この三人が和やかな状態に戻り、臣が帰って行った
| 25-177 |
|
ハデスミがウツキネに
| 25-178 |
|
「我子です」と言って、トヨツミヒコ、
| 25-179 |
|
トヨタマ姫、タケズミヒコ、
| 25-180 |
|
オトタマ姫を連れてきて、ウツキネに
| 25-181 |
|
挨拶をさせた。ウツキネは筑紫の
| 25-182 |
|
守を集めて「吾は妻を娶ろうと思う。
| 25-183 |
|
皆はどう思うか」と言った。するとホタカミが
| 25-184 |
|
申し上げた。「先にお出でを願った時、
| 25-185 |
|
君は名を筑紫御君と名乗られました。
| 25-186 |
|
ですから君はこの国の天君ですので
| 25-187 |
|
御意の通りになさってください。昔、君の母君は
| 25-188 |
|
ニニキネ尊と一夜の契りを結ばれ
| 25-189 |
|
その後でお妃となられました。君は予め我等にご相談くださいました。
| 25-190 |
|
とても嬉しいことです」。そこでウツキネは鹿児島の宮に
| 25-191 |
|
遷った。そしてトヨタマ姫を
| 25-192 |
|
后に決め、スケ妃とウチ妃とシモメを
| 25-193 |
|
二人ずつ、六人の局も決まった。
| 25-194 |
|
婚礼が無事行われて、その三日後に
| 25-195 |
|
トヨスミが玉笠を揃えて
【タマカサ】
「タママリ」と同じ美称の「タマ」。
| 25-196 |
|
玉椀も六人の局に持たせ
| 25-197 |
|
水を振りかけた。声を揃えて
| 25-198 |
|
「モモヒナギは契りを結ばれた
| 25-199 |
|
三日後、川水を浴びた。
| 25-200 |
|
ウビチニの代からずっと今まで
| 25-201 |
|
花婿に水を
| 25-202 |
|
かけましょう、かけましょう」と歌った。
| 25-203 |
|
そのとき、筑紫三十二県の
| 25-204 |
|
県主達も一緒に歌い、皆で喜びあった。
| 25-205 |
|
その後、先にニニキネが行幸して造った
| 25-206 |
|
どの井堰にも、ウツキネは心をこめて
| 25-207 |
|
新田を拓いた。筑紫の三十二県を
| 25-208 |
|
見て回り、鹿児島に帰られた。
| 25-209 |
|
年々収穫も増えて