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フナタマカ フネハイニシエ
船魂神である。船は昔
【フナタマカ】 「フナタマ」は「船を守る霊」すなわち船の神であろう。「カ」は疑問の終助詞の「か」が思い当たるが、この文脈で疑問詞も不自然なので、詠嘆の終助詞と考え、「である」と訳した。
シマツヒコ クチキニノレル
シマツヒコが朽ち木に乗っている
【シマツヒコ クチキニノレル…】 鵜を見たり鴨を見たりして船や櫂を作ったというのは、単なる言い伝えで事実とは考えられない。
27-102 ウノトリノ アヅミカワユク
鵜の鳥が安曇の川を流れて行くのを見て、
27-103 イカダノリ サオサシオボエ
筏に乗り竿で操ることを考えて
27-104 フネトナス コノオキツヒコ
舟にしたことが始まりである。その子のオキツヒコは
27-105 カモオミテ カイオツクレバ
鴨を見て櫂を作った。
27-106 マゴノシガ ホワニナスナヨ
孫のシガは帆を張った鰐船を造り、七代
27-107 カナサキハ オカメオツクル
カナサキは大亀船を造った。
27-108 ソノマゴノ ハデカミノコノ
その孫のハデスミの子の
27-109 トヨタマト ミツハメトフネ
トヨタマ姫とミツハメの神を、船を
27-110 ツクルカミ ムツフナタマゾ
造ったこの四柱の神と合わせて六船魂とした。
27-111 ミコトノリ タガハフタカミ
ウガヤフキアワセズが詔を下した。「多賀の宮は二尊が
27-112 ハツノミヤ イマヤブルレハ
初めて開かれた宮で、今では傷んでしまっているので
27-113 ツクリカエ ミツホノミヤオ
造り替える。そして吾は瑞穂の宮から
27-114 ウツシイテ ツネオガマント
遷って行き、常に二尊を祭ることにした」。
27-115 イシベシテ ヒカセオオヤニ
石部に石を運ばせ、オオヤに
27-116 ツクラセテ イトナミナリテ
宮を造らせた。宮の造営がすべて終わったので
27-117 ミヤウツシ ミクライニツク
遷宮した。即位式の
27-118 ソノヨソイ アヤニシキキテ
衣裳は綾錦を着て
タマカサリ カムリハビクツ
玉飾り、冠、おびだま、沓で正装し、
【カムリハビクツ】 「ハビ」の語義がよく分からない。他の写本では「ハヒ」ともなっており、「ハイ」と読むと、古代の装身具で、広辞苑によると「おびだま。玉佩(ギョクハイ)のこと。帯や胸につける飾りの玉。また、身に着けるアクセサリー」とあるので、ここでは「おびだま」とする。
27-120 ハラノノリ ハナオツクシテ
ハラ朝間宮のしきたりで、華やかに式を行った。
27-121 ソノアスハ オオンタカラニ
その次の日は民にも
27-122 オカマシムカナ      
その姿を拝謁させた。
27-123 キアトナツ ミクライナリテ
キアトの年の夏に、即位したことを
27-124 イセニツグ アマテルカミノ
伊勢のアマテルカミに報告した。アマテルカミが
27-125 ミコトノリ トガクシオシテ
詔を戸隠に託した。
ワガミマゴ タガノフルミヤ
「吾が御孫よ、汝は多賀の古くなった宮を
【ミマゴ】 訳の上では「御孫」となるが、ウガヤフキアワセズは玄孫(ヤシャゴ)
27-127 ツクリカエ ミヤコウツセバ
造り替えて、都を遷したので
アニツギテ ワノフタカミゾ
天の二神を継ぐ地の二神である。
【アニツギテ ワノフタカミゾ】 イサナギ、イサナミはすでに崩御しているので「二神」。ウガヤフキアワセズはまだ后が決まっていないが、いずれ后が決まり、「二神」となるという前提でのアマテルカミの言葉として「二神」と表記する。
27-129 ワレムカシ アメノミチウル
吾は昔、天下を治める道理を
27-130 カグノフミ ミヲヤモアミオ
香久の文で学んだ。そのミヲヤ(トヨケ)の編んだ百編の文を
27-131 サヅクナモ ミヲヤアマキミ
授け、汝の名をミヲヤアマキミとする。
27-132 コノココロ ヨロノマツリオ
この名を授けた意味は、全ての政を
27-133 キクトキハ カミモクタリテ
行う時、神も降って
27-134 ウヤマエバ カミノミヲヤゾ
汝を敬うので、神の御親となるからである。
27-135 コノミチニ クニヲサムレバ
香久の文の道に従って国を治めれば
27-136 モモツカサ ソノミチシトフ
多くの司(役人)が香久の文の教えを慕って
コノコトク コレモミヲヤゾ
子のようについてくるので、このことからも御親というのである。
【コレモミヲヤゾ】 子のようについてくる者に対しての御親。ミヲヤアマキミと掛けてある。
27-138 コノコズエ タミオメクミテ
司がその子である民を大事にして
27-139 ワガコゾト ナヅレハカエル
我が子のように慈しめば
27-140 ヒトクサノ ミヲヤノココロ
民からも司を御親と慕う心が返ってくる。
27-141 スヘイレテ モモノヲシテノ
これらの事は全て百編の香久の文
27-142 ナカニアリ アヤシゲケレバ
の中に書いてある。文が多いので
27-143 アヂミエズ ニシキノアヤオ
深奥が解らないことがあるだろうが、錦の綾を
27-144 ヲルコトク ヨコベツウヂニ
織る如く、横糸と縦糸を
27-145 タテオワケ ヤミヂノトコハ
分けるように筋道を立てて読めば、分からないことも
27-146 アカリナス カスガコモリト
分かるようになる。カスガとコモリと共に
27-147 アヂシラハ アマツヒツギノ
深奥をしっかりとつかめば、君の代々が
27-148 サカヱンハ アメツチクレト
栄えることは、例え天地が暗くなっても
27-149 キワメナキカナ      
絶えることがないだろう」
27-150 キミウケテ シカサルトキニ
君ウガヤフキアワセズはこの言葉を受けて、勅使が帰ると、
27-151 ミコトノリ フユイタルヒニ
詔を下した。「冬至の日に
27-152 ヲヲマツリ アマカミトヨヨ
大嘗祭を行い、天神と代々の
27-153 スヘラカミ ユキスキノミヤ
スヘラ神をユキ・スキの宮に祭る。