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29-159 ヨケトフス カレニカクヤマ
道をよけて通した。そこで、香久山の
29-160 ハニトリテ カエレバキミモ
土を取って帰ったので、君も
ヨロコビテ イヅベオツクリ
喜びイヅベを作らせた。
【イヅベ】 神聖な土器。主として神酒を盛り、祭祀に用いる(広辞苑)
ニブカワノ ウタニウツセル
ニブ川のウダに遷した
【ニブカワノ ウタニウツセル アサヒハラ アマテルトヨケ】 「ニブカワ」は、丹生川上神社がある吉野川の上流高見川。解釈ノート120の「ウダ」とはかなり離れているが、かつては「ウダ」の一部であったのだろう。そこに祭祀用にアマテルカミとトヨケを一時的に祭った。
29-163 アサヒハラ アマテルトヨケ
朝日原のアマテルカミとトヨケカミの
29-164 フマツリハ ミチオミゾマタ
二神はミチオミに祭らせた。また
29-165 カンミマコ アメマヒガヒコ
カンミムスビの孫のアメマヒトツの曾孫の
29-166 アタネシテ ワケツチヤマノ
アタネに別雷山の
29-167 ミヲヤカミ ミカマツラセテ
ミヲヤ神(ニニキネの御魂)を三日間祭らせた後
29-168 アタオウツ クニミカオカニ
敵を討つことにした。クニミガ丘に
29-169 イクサタテ ツクルミウタニ
兵を結集した時、皇が歌を詠まれた。
29-170 カンカセノ イセノウミナル
「神風の吹く伊勢の海に(アマテルカミの居られた伊勢に)
29-171 イニシエノ ヤエハイモトム
昔、這いずる定めを選んだ(その昔サスラになった)
29-172 シタダミノ アコヨヨアコヨ
シタダミがいた。(ソサノオがいた)我が兵士たちよ
29-173 シタダミノ イハヒモトメリ
シタダミは、這うことを望んでいる。(ニギハヤヒもサスラになりたがっている)
29-174 ウチテシヤマン      
勝つまでは戦いはやめない」
29-175 コノウタオ モロガウタエバ
この歌を兵達が歌うと、
29-176 アダガツグ シバシカンガフ
敵の者がニギハヤヒに伝えた。しばしの間考えて
29-177 ニギハヤヒ サスラヲヨスト
ニギハヤヒは「サスラになる道を選ぶべきではない」と
オタケビテ マタヒコトガモ
きっぱりと言った。そして一言「過てば罰は
【ガモ アメカラト】 「ガ」は罰。「アメ」は、タケヒトの軍に歌われたアマテルカミ。
29-179 アメカラト イクサオヒケバ
天からも降るのだ」と言って軍を引いたので
ミカタヱム ネツキユミハリ
味方は喜んだ。十一月弓張りの日
【ユミハリ】 弓張り月の日は、陰暦7日ごろ。
29-181 シギヒコオ キギスニメセド
急使者を遣わしてシギヒコを召したが
29-182 アニハコズ マタヤルヤタノ
兄シギは来なかった。また遣いに出した
29-183 カラスナキ アマカミノミコ
八咫の烏が言った。「アマカミの皇子が
29-184 ナンチメス イサワイサワゾ
汝をお呼びだ。さあさあ」。
ヱシギキキ イトウナスカミ
兄シギが聞き「今はいやな君とは
【イトウナスカミ ヲヱヌトキ】 この場合の「イトウ」は厭う。「カミ」は皇のタケヒト。「ヲ」は「緒」を表す文字。「ヲエヌ」は「ヲ」を得ない、すなわち関わり、つながりを持たない。
ヲヱヌトキ アタガラストテ
関わりを持ちたくないのだ。敵の烏め」と言って
【アタガラス】 「アタ」は「仇」と読み「敵」とした。「カラス」は用件を伝えに来た相手側の役人だが、ののしる言葉として「烏」とした。この時代は、使者を「キギス」と呼んだり、また身上がはっきりしない者を「キツネ」「サル」など、動物の名前で区別したりしていたのではないか。
29-187 ユミヒケバ オトガヤニユキ
弓を射ようとしたので、弟シギの館に行き
29-188 キミメスゾ イサワイサワト
「君がお呼びです。急いで、急いで」と
29-189 カラスナク オトシギオヂテ
八咫の烏が言った。弟シギが怯え
29-190 カタチカエ カミノイトウニ
顔色を変えて、「タケヒト君に嫌われるのを
29-191 ワレオソル ヱヱナンチトテ
我は恐れています。汝の言うとおりにします」と
ハモリアエ ママニイタリテ
羽盛饗のシギのようになされるままに君の所に行った。
【ハモリアヱ】 「ハモリ」は広辞苑に「ウズラ、シギなどの焼き物で、翼・頭・両足を飛ぶ時のさまにして盛った料理」とある。「アヱ」は「饗」で羽盛の馳走。弟シギは羽盛のシギのような心境だったのだろう。
29-193 ワガアニハ アタストモフス
「我が兄は刃向かうと申しています」と弟シギが言った。
29-194 トキニキミ トエバミナイフ
そこで君が臣に意見を聞くと、臣達は
29-195 トニサトシ ヲシエテモコヌ
「説いて諭して教えても来ないようなら
29-196 ノチウツモ ヨシトタカクラ
その後で討つのもよいでしょう」と言った。タカクラシタと
29-197 オトシギト ヤリテシメセド
弟シギを兄シギの所に行かせて説いて諭して教えても
29-198 ウケカハズ ミチオミガウツ
返事は変わらなかった。ミチオミが討つために
29-199 オシサカト ウツヒコガウツ
忍坂へ行き、ウツヒコが
29-200 オンナザカ ヱシキノニケル
女坂に行った。兄シギが逃げる
29-201 クロサカニ ハサミテウテバ
黒坂で挟み打ちをし、
29-202 タケルトモ フツクキレトモ
兄シギの兵達をことごとく斬ったが
29-203 ナガスネガ タタカイツヨク
ナガスネの軍が強くて
アタラレス トキニタチマチ
手が出なかった。すると突然
【トキニタチマチ ヒサメフル】 この後の場面が「氷雨降る」中で繰り広げられたとは思えない。かなりの意訳になるが、急に厳粛な引き締まった場面に転換したことを表わす表現とした。
ヒサメフル コカネウノトリ
空気が張りつくような雰囲気が漂い、堂々たる態度の人物が
【コカネウノトリ】 神話の絵で知られる「弓に金色の鷹が止まって輝いている図」が頭に浮かぶが、前後の話のリアルさからすると前項と同様比喩表現と考える。この後に皇孫の証拠の羽々矢を見せ合う場面があり、ニギハヤヒがその場にいないのは不自然。すると、ニギハヤヒがいつともなく居ることになるが、「金色の大きな鳥」として現れたのはニギハヤヒだったと考えれば不自然ではなくなる。そこで「コカネウノトリ」は「堂々たる態度の人物」の比喩とした。
トビキタリ ユハズニトマル
現れ、弓筈を握り立ち止まった。
【ユハズニトマル】 「ユハズ」(弓筈)は弓の両端の弓弦をかけるところ。この場合は上端。弓の上端を持って戦う意思のないことを示しながら堂々と現れたのだと解釈した。
29-207 ソノヒカリ テリカカヤケバ
その態度は威厳に満ちていた。
29-208 ナガスネガ タタカヒヤメテ
ナガスネヒコは戦いをやめ