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36-000 36ヤマトヒメカミシツムアヤ
ヤマト姫、神鎮める綾
36-001 タマキミヤ コホナヅキソム
タマキ宮の九年九月十六日、
36-002 キサキユメ ヤマトオオクニ
后がヤマトオオクニタマ神から
36-003 カミノシデ タマエバハラミ
幣をもらった夢を見て、身籠った。
36-004 ツキミチテ ウマズニヤメテ
月満ちたが、なかなか生まれず病の床に伏した。
ミトセノチ ナツキソムカニ
三年後の九月十六日に
【ミトセノチ】 これまでにも、アマテルカミやアマノコヤネ、タヂカラヲのように、重要な役割を持った人物は特別に長くかかって生まれてくるように書かれている。ヤマト姫は後にアマテルカミの御杖代(斎宮)となる。
36-006 ウムミコノ ナハヤマトビメ
生まれ、名をヤマト姫とした。
36-007 アトヤミテ カナツキフカニ
産後の肥立ちが悪く、十月二日に
ハハマカル ツヅキカバヰノ
后は亡くなった。ツヅキカバヰノ
【ツヅキカバヰノ ツキノカミ】 35綾本文120に「ツヅキ タルネガカバヰ ツキヒメ」(ツヅキタルネの娘のカバヰツキ姫)とあり、ここで「カバヰ」と「ツキ」の間に「ノ」があるのは「ツキ」を、后を表す語として表現したのであろう。
36-009 ツキノカミ ナゲキマツリテ
ツキの神として、君は悲しみにくれながら喪祭りを行った。
36-010 ソヰトシノ キサラキモチニ
十五年二月望の日に
メスタニハ ミチノウシノメ
タニハミチノウシの娘の
【タニハ ミチノウシ】 35綾本文112の、サホ姫が亡くなる時の言葉の「タニハチウシノ メオモガナ」の「タニハチウシ」と同じ。ここでその願いをかなえたことになる。
36-012 ヒハスヒメ ヌハタニイリメ
ヒハス姫と、ヌハタニイリ姫、
36-013 マトノヒメ アサミニイリメ
マトノ姫、アサミニイリ姫、
36-014 タケノヒメ ハツキハツヒニ
タケノ姫を宮に召した。八月一日に
36-015 ヒハスヒメ キサキニタテテ
ヒハス姫を后にして
36-016 イトミタリ スケトウチメニ
三人の妹をスケ妃とウチ妃にした。
36-017 タケノヒメ ヒトリカエセバ
タケノ姫だけ一人帰したので
36-018 ハヅカシク コシヨリマカル
タケノ姫は恥ずかしくて、輿から身を投げて死んだ。
オチクニゾ ソヤトシサツキ
そこはオチクニと言われるようになった。十八年五月
【オチクニゾ】 タケノ姫が落ちた所だから「オチクニ」と言われるようになったというような記述はこの他にもいくつかあるが、後の創作とも考えられる。
ソカキサキ ウムミコニシキ
十日に后が産んだ皇子ニシキ
【ニシキ イリヒコノ イムナヰソキネ】 「ヰソキネ(ヰソギネ)」は二人いる。ミマキイリヒコの皇子に、ヤマトヒコヰソギネ、イクメイリヒコの皇子にニシキイリヒコヰソギネとがいる。37綾本文008で亡くなったのはヤマトヒコヰソギネ。そのあとに出てくるヰソキネはニシキイリヒコヰソキネ。
36-021 イリヒコノ イムナヰソキネ
イリヒコの諱はヰソキネ、
36-022 フソマフユ ウムミコヤマト
二十年の真冬に生まれた皇子はヤマト
36-023 ヲシロワケ イムナタリヒコ
ヲシロワケ、諱タリヒコ、
36-024 ツギニウム オオナカヒメト
次に生れたのがオオナカ姫と
36-025 ワカキニノ イムナハルヒコ
皇子のワカキニ、諱ハルヒコである。
36-026 スケヌハダ ウムヌデシワケ
スケ妃のヌハタニイリ姫が産んだ皇子はヌデシワケ、
36-027 ツギニウム イカタラシヒメ
次に生まれたのはイカタラシ姫である。
36-028 アサミウム イケハヤワケト
アサミニイリ姫が産んだのは、皇子のイケハヤワケと
36-029 アサヅヒメ フソミホナツキ
アサヅ姫である。二十三年九月
36-030 ツミエハノ フカミコトノリ
ツミエ朔の次の日の二日に君が話された。
36-031 ホンツワケ ヒゲオヒイザチ
「ホンツワケは髭が生える齢になっても、泣きわめくばかりで
36-032 モノイワス コレナニユエゾ
話をしない。これは一体どういう訳なのだろう」
36-033 モロハカリ ヤマトヒメシテ
臣達は相談して、ヤマト姫に
36-034 イノラシム カンナヤカキミ
祈らせた。十月八日、君が
36-035 トノニタツ トキホンツワケ
高殿に立たれた時、ホンツワケが、
トブククヒ ミテイワクコレ
飛んでいる白鳥を見て聞いた。「あれは
【ククヒ】 白鳥の古名。
36-037 ナニモノヤ キミヨロコビテ
何という鳥だろう」それを聞いた君は喜んで
36-038 タレカコノ トリトリヱンヤ
「誰かあの鳥を捕まえられないか」と言われた。
36-039 ユカワタナ トミコレトラン
ユカワタナが「我が捕まえましょう」と言うと
36-040 キミイワク トリヱバホメン
君は「鳥を捕まえることができたら褒美を取らそう」と言われた。
36-041 ユカワタナ クグヒトブカタ
ユカワタナは白鳥が飛んで行った方へ
36-042 オヒタツネ タシマヂイヅモ
追いかけ探し回って但馬路を行き、出雲の
36-043 ウヤヱニテ ツイニトリヱテ
ウヤヱでついに捕まえることができ、
36-044 ネツキフカ ホンヅノミコニ
十一月二日にホンツワケ皇子に
36-045 タテマツル ミコモテアソビ
白鳥を差し上げた。皇子は白鳥を可愛がるうちに
モノイエバ ユカワオホメテ
話をするようになったので、ユカワタナを誉めて
【モノイエバ】 35綾本文106にあるように、ホンツワケは燃え盛る稲城の中からサホ姫に抱かれて出てきた。そのショックで言葉が出なくなったのが、白鳥に癒されて出るようになったのではないか。一種のアニマルセラピーだったのかも知れない
36-047 トリトリヘ カバネタマワル
鳥取部という姓を授けた。
36-048 フソヰホノ キサラギヤカニ
二十五年の二月八日に
36-049 ミコトノリ タケヌガワケト
君が詔をタケヌガワケと
36-050 クニフクト ミカサカシマト
クニフク、ミカサカシマ、
36-051 トイチネト タケヒラモロニ
トイチネ、タケヒの五人に下された。
36-052 ワガミヲヤ ミマキハサトク
「吾の御親のミマキイリヒコ君は聡明で