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ミケヒエテ ツクシニヤレバ
食べるに困らないようにするので、筑紫に行って
【ミケヒ】 「ミケ」は食事。「ヒ」はイヒで飯。「ミケヒ」で「食糧」と解釈した。
ツグミオレ タナキネハトル
蟄居していなさい。タナキネはここに残します。
【タナキネ】 モチコの子ホヒ。6綾ではタナヒトとなっている。オシホミミが継ぎ子として生まれ、諱をオシヒトと付けたので、タナヒトはタナキネとなったのではないか。
07-098 ヲハチチニ メハハハニツク
男の子は父に付いて、女の子は母に付くものですから、
07-099 ミヒメコモ トモニクダリテ
三人の姫も汝らと一緒に筑紫に連れて行って
07-100 ヒタシマセ カナラズマテヨ
養育しなさい。そして必ず待っていなさい。
07-101 トキアリト ムベネンゴロニ
こちらに戻れる時があるから」と、とても優しく
07-102 サトサレテ ツクシアカツチ
諭された。筑紫のアカツチが
07-103 コレオウケ ウサノミヤヰオ
ヒニムカツ姫の依頼を受けて、宇佐の宮を
07-104 アラタメテ モチコハヤコハ
新しく造り、モチコ姫とハヤコ姫を
07-105 アラツボネ オケバイカリテ
新たに局として迎えた。そこに住まわせたけれど姉妹は怒って
07-106 ヒタシセズ ウチニツグレバ
娘たちを育てなかった。そのことをヒニムカツ姫に知らせたところ、
07-107 トヨヒメニ ヒタシマツラシ
三人の娘をトヨ姫に養育させ、
07-108 サスラナス フタサスラヒメ
二人を宮から出ていかせた。二人の流離姫は、
07-109 イキドホリ ヒカワニイカリ
大変に怒り、ヒカワに行っても怒りが収まらず、
07-110 ナルオロチ ヨニワダカマリ
大蛇のように執念深く世の中に対して不満を持ち続けた。
コクミラモ ツカエテシムオ
コクミ達も姉妹に仕えて、一味は人々の心を
【シムオ ウバイハム】 表面的な訳をすれば「人を奪って食い殺した」となるだろうが、悪者であっても人を食い殺すことはしないと思う。ここでは「シム」を「心」とし、「ウバイハム」を「奪って食う」ことから「蝕む」と意訳した。人々を一味の仲間に引きずり込んでいったのである。
07-112 ウバヒハム ソサノヲシワザ
蝕んでいった。一方、ソサノヲの仕業は
07-113 アヂキナク ノシロシキマキ
乱暴極まりなく、苗代に二度播きをしたり、
アオハナチ ミノラズミゾノ
田の畦を切ったりして、稲が実らなくした。
【アオハナチ】 馬を放ったとの訳もあるが、続いて「ミノラズ」とあるので、馬を放って稲が実らないほどになるだろうか。「ア」を畦と解釈すると、稲が実らないほどの被害が出ることもあると思われるので、「田の畦を切って」とした。
07-115 ニイナメノ カンミハオレバ
新嘗祭にヲヲンカミが召される衣装を織っていると、
07-116 トオケガス コレタダサレテ
その織り殿を汚した。これを叱責され、
07-117 ソサノヲガ ヒトリカフムル
ソサノヲは一身に非難を受けた。
07-118 ヰンハトノ トヅレバイカル
織り殿を閉じると、ソサノヲはなお怒り、
ブチコマオ ヰラカウガチテ
斑の馬を、屋根に穴をあけて
【ヰラカウガチテ】 屋根と訳したが、普通の家屋のような屋根に馬を飛び込ませるのは無理だと思う。竪穴式のような形の家の屋根の側面から馬を飛び込ませたのではないかと考える。
07-120 ナゲヰルル ハナゴオドロキ
投げ込んだ。ハナゴ姫が驚き
07-121 ヒニヤブレ カミサリマスト
杼で怪我をして死んでしまったと
07-122 ナクコエニ キミイカリマシ
周りの者の泣く声に、キミは大変怒られ
07-123 ソサノヲニ ナンヂキタナク
ソサノヲに言われた。「汝は心が汚く
07-124 クニノゾム ミチナスウタニ
国を我が物にしようとしている。人を導く者の心得の歌に
07-125 アメガシタ ヤワシテメグル
『世の人々の心を和らげて巡る
07-126 ヒツキコソ ハレテアカルキ
日や月のように振舞ってこそ、晴れて立派な
07-127 タミノタラナリ      
民の親となれるのだ』とあるではないか」。
07-128 ソサノヲハ イワオケチラシ
ソサノヲは岩を蹴散らして
ナオイカル キミオソレマシ
なお激怒した。キミは世に害が広がることを憂慮され
【キミオソレマシ】 「アマテルカミがソサノヲの乱暴を恐れて隠れた」と訳すこともできるが、これだけの人物が弟の乱暴に恐れをなして逃げ隠れるとは考えられない。諭す言葉にも荒れるソサノヲは、このままではなおも世に害を広めると憂慮し、自分が身を隠すことによって「アメガシタ…」の歌の心、すなわち正しい政をしないと人々が困ることを身をもって示そうとしたのではないか。
イワムロニ イリテトザサバ
イワ室に入って戸を閉めてしまったので、
【イワムロ】 天の岩戸でよく知られた場面で、記紀では岩室、巌室となっているが、ホツマツタヱに描かれた生活の様子から、山の斜面に穴をあけて作った住居または洞穴とは考えられない。「イワ」は古代東国方言で「家」、「ムロ」は古代、家の奥に設けられた土を塗り籠めて寝室などとした所(広辞苑)とあるので、宮の中のアマテルカミが籠ることのできるような建屋か部屋と解釈する。イワに当てられる適当な漢字がないので「イワ室」とした。
07-131 アメガシタ カガモアヤナシ
世の中は善悪の判断をしてくれる人がいなくなってしまった。
ヤスガハノ ヤミニオドロク
ヤスガワでもキミの政が届かなくなり、驚いた
【ヤミニオドロク】 「天照大御神の岩戸隠れ」の一連の出来事を、神話としてではない読み取り方を試みている。
07-133 オモイカネ タビマツニハセ
オモイカネは松明を持って馳せ参じ、
07-134 コニトヒテ タカマニハカリ
我が子タヂカラヲに、様子を聞いた。宮中では臣たちが話し合い、
07-135 ヰノランヤ ツハモノヌシガ
「出ていただくように祈りましょう」というとことになった。ツワモノヌシが、
07-136 マサカキノ カンヱハニタマ
「真榊の上の枝には丹玉、
ナカツヱニ マフツノカガミ
中の枝にはマフツの鏡
【マフツノカガミ】 真実をすべて映し出す鏡
07-138 シモニギテ カケヰノラント
下の枝には幣をかけて祈りましょう」と言った。
07-139 ウスメラニ ヒカゲオタスキ
アメノウズメ達にヒカゲノカズラを襷にして
07-140 チマキホコ オケラオニワビ
茅を巻いた矛を持たせた。オケラ草をイワ室の前の庭で焚いて
ササユハナ カンクラノトノ
湯立てをし、神座の殿を設け
【ササユハナ】 「ササユ」は大辞林に「巫女が口寄せをする際、熱湯に笹の葉を浸して自分の身にふりかけ祈祷すること」、「ユハナ(湯花)」は湯玉ともいい、「珠となって飛び散る熱湯」とある。このことから「湯立て」とした。
【カンクラノトノ】 「カンクラ」(神座)は神の降りてくる依代。「トノ」(殿)は神座をしつらえた場所。ここではアマテルカミが岩室から出てきたときに迎える場所。「カンクラ」について、わたしが知る限りでは、吾郷清彦氏の「神座」以外は和仁估を初め、みな「神楽」となっている。ここで踊っているのは「ナガサキ」、本文174では「ミチスケの歌」で、これを神楽というのだろうか。13綾本文161にも「カンクラオ モウセハヲトケ ヒトナルゾ」と出てくるが、「神楽」とするのはいささか唐突な感じがする。40綾本文360に「カシマカグラ」について、昔サルタヒコがキミに見せたものが「カグラシシ」として伝わったと書かれ、「神楽」は「カグラ」と書かれている。書かれた時代が違うので断定はできないが、これらを考慮すれば「カンクラ」を「神楽」とすることは疑問に思う。
07-142 カンカガリ フカクハカリテ
篝火を焚いた。一計を案じて
07-143 オモイカネ トコヨノオドリ
オモイカネは常世の踊りである
ナガサキヤ ワザオキウタフ
「ナガサキ(永幸)」という踊りをワザオギに歌い踊らせた。
【ワザオキ】 歌ったり踊ったりする人。歌の内容の、「ワガツマアワ」は、自分の妻は、天地と同じほどの存在だ、「シホレテモヨヤ」は、年とってもいい女だ、というような滑稽な歌だったのではないか。