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カゾイロノ ヨザシノクニオ
父母がお任せになられた国を
【カゾイロ】 父母。古くはカゾイロハ。イロハは母のこと。
【ヨザシノクニ】 「ヨザシ」は「寄す」の未然形「寄さ」に尊敬の助動詞の「す」の付いたもの。ここでは「任せられた」と訳した。「ヨザシノクニ」はかつてイサナギがソサノヲに「ハナキネハ ネノクニサホコ シラスベシ」と治めるように言った「ネノクニ」と「サホコ」。
07-193 ステオレバ アヱウカガフト
放っておいて、敢えてこの国を奪おうとするのか」と、
07-194 アゲマキシ モスソオツカネ
髪を総角に結い、裳裾を縛って
07-195 ハカマトシ ヰモニミスマル
袴とし、たくさんの珠の首飾りを
07-196 カラマキテ チノリヰモノリ
首に掛け、千本入り、五百本入りの靫(ユキ)を
ヒジニツケ ユハズオフリテ
ひじに掛けて、弓を揺り動かし
【ユハズオフリテ】 弓を持った手を大きく動かして怒りを表していたのか。
07-198 ツルギモチ カタニワフンテ
剣を持って、地面を踏みしめ
07-199 ケチラシテ イツノオタケニ
蹴散らして、激しく叫んで
07-200 ナジリトフ ソサノヲイワク
詰問した。ソサノヲは言った。
07-201 ナオソレソ ムカシネノクニ
「どうか恐れないでください。以前、父キミにネの国に
07-202 ユケトアリ アネトマミヱテ
行くようにと言われていたので、姉上にお会いして、
07-203 ノチユカン ハルカニクレバ
それから行こうと思い、遠くから来たのです。
07-204 ウタガワデ イツカヱシマセ
疑わないで、怒りを鎮めてください」。
07-205 アネトワク サココロハナニ
姉のワカ姫が「汝が清い心になったという証はあるのか」と尋ねると、
07-206 ソノコタエ ネニイタルノチ
ソサノヲは「その答えとして、ネの国に行ってから妻をめとり
コオウマン メナラハケガレ
子をもうけようと思います。もし、女が生まれたら我の心が穢れており、
【メナラハケガレ ヲハキヨク】 女が生まれたら穢れで、男なら清いというのは、この時代、「ヲ」は陽、正、清、男等の意味を持ち、「メ」は陰、邪、濁、女等の意味を持つという概念があったためでもあるが、本文221にあるように、「カゲノミヤビ」によって生まれた子が女だったということもあるのではないか。
07-208 ヲハキヨク コレチカイナリ
男が生まれたら我の心は清いことになります。これを誓います。
07-209 ムカシキミ マナヰニアリテ
かつて、アマテルカミがマナイにおられた時、
07-210 ミスマルノ タマオソソギテ
ミスマルの珠を水で清めて
07-211 タナキネオ モチニウマサテ
タナキネ尊をモチコ姫に生ませました。
トコミキニ ハヤコオメセバ
われがハヤコ姫とトコ御酒を飲んで寝たら、
【トコミキニ ハヤコオメセバ】 一読するとアマテルカミがハヤコを召したように読めるが、ソサノヲは自分の行為を承知して話しているのだから、ハヤコを召したのはソサノヲであると考える。
07-213 ソノユメニ トツカノツルギ
その時の夢に、十握の剣が
07-214 オレミキダ サカミニカンデ
折れて三つになり、噛みに噛むと
07-215 ミタトナル ミタリヒメウム
三つの玉になりました。それで三人の姫が生まれました。
タノイミナ ワレケガレナバ
『タ』の付く諱の三姫です。私の心が穢れていれば、
【タノイミナ】 タケコ姫、タキコ姫、タナゴ姫。
ヒメオヱテ トモハヂミント
この姫達を引き取り、恥を分かち合おうと思います」と
【トモハヂミント】 恥を分かち合うとするのは、これから生まれてくる子ではなく、ソサノヲの「カゲノミヤビ」で産まれた三姫。
07-218 チカイサル ヒメヒトナリテ
誓って去って行った。三人の姫たちは大人になって
オキツシマ サカムエノシマ
それぞれ沖つ島、相模江の島、
【オキツシマ サガムエノシマ イツクシマ】 後に神となって、オキツシマ姫タケコ、エツノシマ姫タキコ、イツクシマ姫タナゴとなり、今日それぞれの神社に祭られている。
07-220 イツクシマ ミカラサスラフ
厳島へ自ら流離の旅に出て、
サスラヲノ カゲノミヤビノ
ソサノヲと母ハヤコ姫の不義の
【カゲノミヤビ】 「ミヤビ」の逆のこと。宮人としてあるまじき行い。不義。ここでは密通。
07-222 アヤマチオ ハラシテノチニ
過ちの禊ぎをした後に
07-223 カエリマス ムカシフタカミ
宮に帰ってきた。昔、二尊が書かれた
ノコシフミ アメノメグリノ
遺し文。「天を巡る日の輪も蝕みの時は
【アメノメグリノ ムシバミオ】 不吉なものとして考えられていた日食と、穢れと考えられていた女性の生理とを重ねて表現している。「ムシバミ」は6行後の「ツキシホ」、4綾本文069の「ツキノヲエ」と同じく女性の生理を表していると考えられるので、4綾の訳「月の障り」をあてる。
ムシバミオ ミルマサカニノ
中が穢れて見えるように、月々巡ってくる月の障りの時は、体が
【ミルマサカニノ ナカコリテ】 「マサカニ」は「真・盛・瓊」のように読み、文脈から「日の輪」と解釈した。「アメノメグリノ・・・ナカコリテ」は日食のことだけを言っているが、前後の関係からすると、イサナミの生理を暗示していると考える。
07-226 ナカコリテ ウムソサノヲハ
穢れている。その時孕んで生れたソサノヲは、
07-227 タマミダレ クニノクマナス
心が荒れて、国に害を与えた。
アヤマチゾ ヲハチチニヱテ
それは吾等の過ちであった。夫は父になるという自覚を持って
【ヲハチチニヱテ】 「ヲ」と「メ」、「ハ」と「ア」が対語だが、「ヲ」と「ハ」、「メ」と「ア」の組み合わせになっている。それぞれの語の意味合いによるのだろうが、訳は夫と妻とした。「ヱテ」はよくわからないが、「得て」と読み、「身につける、精通する、悟る、理解する」という意味と考え、訳は「自覚する」とした。
07-229 ハオイダケ メハハハニヱテ
妻を抱き、妻は母になるという自覚を持って
アトヰネヨ ウキハシオヱテ
夫と寝よ。仲人に夫婦の作法を学んでから
【ウキハシオエテ】 かつては仲人から夫婦の作法を学んだ。
07-231 トツグベシ メハツキシホノ
契るのがよい。妻は月の障りが
07-232 ノチミカニ キヨクアサヒオ
終わって三日後に身を清めて朝日を
07-233 オガミウケ ヨキコウムナリ
拝むと、良い子が生まれる。
07-234 アヤマリテ ケガルルトキニ
間違えて、身が穢れているうちに
07-235 ハラムコハ カナラズアルル
孕む子は必ず荒々しくなる。
07-236 マエウシロ ミダレテナガル
先にはヒヨルコ、後にソサノヲと、流産と荒れた子を生んでしまった
ワガハチオ ノチノオキテノ
吾等の恥は、後の世の人々の心構えになる
【ノチノオキテノ ウラカタゾ】 占形は亀占などに表れた形。「吾等の恥」を恥として見るだけでなく、これを占で現れた望ましくない形として「後の人々の心構え」と読み取って欲しいという二尊の願い。
07-238 ウラカタゾ カナラズコレオ
占形である。必ずやこれを